竹中半兵衛死し、秀吉兄弟の陰謀は深まるー「信長協奏曲」15−17

現代から戦国時代へとタイムスリップしてきた高校生・サブローはなんと、あの「織田信長」とそっくり。病弱のため戦国時代を生き抜くことが難しいと自覚している「本当の信長」と入れ替わった現代高校生が天下統一へ向かっていく姿を描いたのが本シリーズ『石井あゆみ「信長協奏曲」(ゲッサンコミックス)』の第15巻から第17巻まで。

前巻までで武田信玄。上杉謙信といった強敵がいなくなり、天下統一に向けて「毛利」との決戦に主力を置き始めた信長軍の姿が描かれます。ただ、今回戦う「毛利」は、策謀家の大集団のようなところで、羽柴秀吉・秀長兄弟や将軍・義昭も巻き込みながら情報戦の様相を呈してくるのが、このタームです。

構成と注目ポイント

第15巻 竹中半兵衛の死の真相は?

第15巻の構成は

第81話 密会
第82話 密談Ⅰ
第83話 密談Ⅱ
第84話 何処へ
第85話 同志
第86話 完成

となっていて、冒頭ではサブロー信長の秘密を知る、光秀信長、竹中半兵衛、おゆきの三人が密かに集まり、羽柴秀吉・秀長兄弟への疑惑を話し合うところから始まります。

三人とも、この兄弟の出身が「忍び」で、しかも織田家に対して「謀反」の気持ちのあることを感づいているようです。ここでひとまず、三人に共闘体制が組まれることとなります。

一方、秀吉のほうは、兄以上に謀略の段取りをしてくる秀長によって、毛利の外交担当・安国寺恵瓊と密談することとなります。もちろん安国寺恵瓊の目的は、将軍・義昭から寝返りをそそのかす密書が秀吉に届いていることを糸口に、彼を将軍方・毛利方へ寝返らせることなのですが、ここは秀吉も「馬鹿」ではなく、ここで裏切ることが時期尚早であることに気づいています。

と、恵瓊との会談は物別れに終わります。

そして、ここで秀吉と恵瓊との密談が行われたことをつきとめた竹中半兵衛が動きます。この情報をサブロー信長や明智信長のもとへ知らせるため、馬を走らせるのですが、残念ながら、持病の結核が悪化して馬でいくことは断念。船でいくことに切り替えるのですが、それに気づいた秀長が追ってきて・・・という展開です。
残念ながら、半兵衛はここで命を落としてしまうこととなります。

もっとも、秀吉と秀長とが握りつぶしたと思っていた「密書」は、実は偶然会った「とき丸によって「おゆき」のもとへ届けられることととなります。

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第16巻 秀吉は、サブロー信長の一言に戦々恐々

第16巻の構成は

第87話 てっぺん
第88話 疑惑
第89話 秀吉
第90話 宿命
第91話 桶と黒豆
第92話 あつい

となっていて、

竹中半兵衛の密書を「とき丸」」から受け取った「おゆき」は秀吉と安国寺恵瓊との密談の情報を「明智信長」に知らせ、彼を経由して、密談の話と半兵衛の殺害疑惑がサブロー信長にもたらせます。

秀吉は、サブロー信長に呼び出されるのですが、持ち前の「口のうまさ」で切り抜けます。ちょろいもんだ、と安心しているところを

というサブロー信長の一言で、恐怖のどん底に落とし込まれてしまいますね。サブロー信長にしてみれば、歴史の授業の復習をしているようなつもりの一言なのですが、秀吉のように腹中に「陰謀」を抱えていると、自分で穴に入り込んでしまうようです。

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第17巻 石川五右衛門、サブロー信長を襲う

第17巻の構成は

第93話 おじ上
第94話 昔の殿
第95話 あの・・!?
第96話 不愉快な男
第97話 色々ありました
第98話 梅
第99話 同類・・・!?

となっていて

冒頭のところで、帰蝶が、サブロー信長と明智光秀の顔が瓜二つである上に、二人が入れ替わっていることに気づいたり、

「おゆき」にサブロー信長が別の時代から来たものであることなどが知られていきます。

だんだんと「本能寺の変」に向けてのお膳立てが整えられていくようですね。

物語本編のほうは、「おゆき」と「堀久太郎」だけを連れて、秀吉の姫路城におしのびでやってきたサブロー信長なのですが、そこの露天風呂で、後の大盗賊「石川五右衛門」に襲われます。

彼は将軍・義昭によって雇われた「忍びくずれ」という設定で襲撃自体は、「おゆき」たちの働きで退けることができたのですが、自分の支配地で主君を襲われた「秀吉」は我慢なりません。後の石川五エ門と秀吉との因縁話はこんなところに端を発しているようです。

この後、「彌助」との再会や、「織田信長」の権力と財力を見せつけたといわれる「馬揃え」が行われるのですが、このへんは本シリーズでは「余談」的な扱いにされています。

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レビュアーから一言

信長を取り巻いていた強敵たちが次々と亡くなったり、降伏したり、と彼の「天下統一」の実現も目前となってきているのですが、その分、「本能寺の変」も近くなってきています。信長の命を守ろうと、明智光秀(本物の信長)や「おゆき」の決意は固くなるのですが、一その一角を占める「竹中半兵衛」がこのタームで失われてしまいます。秀吉・秀長兄弟の謀反の陰謀は、佐吉(後の石田三成)や毛利も巻き込みながらいよいよ先鋭化していきますね。

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