信長は武田本家を降し、毛利本体と対峙するー「信長協奏曲」18−20

現代から戦国時代へとタイムスリップしてきた高校生・サブローはなんと、あの「織田信長」とそっくり。病弱のため戦国時代を生き抜くことが難しいと自覚している「本当の信長」と入れ替わった現代高校生が天下統一へ向かっていく姿を描いたのが本シリーズ『石井あゆみ「信長協奏曲」(ゲッサンコミックス)』の第18巻から第20巻まで。

竹中半兵衛の急死後、いよいよ織田本体は武田勝頼率いる「武田家」の本体との決戦を迎えることになりますし、中国攻めを担当している秀吉は、毛利勢の先端勢力の三木城、鳥取城へと攻めかかるのがこのタームです。

構成と注目ポイント

第18巻 鳥取城落城。毛利は秀吉調略に本格的に乗り出す

第18巻の構成は

第100話 徳川さんがやって来た
第101話 道
第102話 盂蘭盆会
第103話 気のせい
第104話 重矩の回
第105話 大蛇
第106話 天正十年~1582~

となっていて、長篠の戦の後の秀吉を中心とした中国攻めでの織田上中の動きや、毛利の反応が描かれます。

サブロー信長のもとへは、高天神城を徳川家康が奪取し、安土城へ御機嫌伺にやってきます。この高天神城の攻防では、武田勝頼が徳川勢に取り囲まれて籠城している味方の城兵を見捨てた、と言われている戦で、この後の武田家滅亡のきっかけともなった戦ですね。

一方、秀吉の進める中国攻めも播磨・但馬を平定し、いよいよ因幡鳥取城に完全包囲網が敷かれます。事前に旧城主の山名氏の家臣団との不和を生み出して政情不安を作り出したり、商人を使って「米」を買い占めたり、と万全の準備をしての籠城攻めで、後に飢えのために城内では人が人を食ったという「鳥取の渇え殺し」と呼ばれる悲惨な籠城戦ですね。そのうえに、本シリーズでは記述がないのですが、秀吉は吉川経家が切腹し、その代償に城兵が助命され降伏した後、降伏してきた生き残った城兵に、たらふく飯をくわせて多くを急死させるといった情け深い行為に見せかけた「悪行」を行っているのはチェックしておきたいですね。

ここで、竹中半兵衛の弟・竹中重矩に、明智光秀(本当の信長)と「おゆき」から、羽柴秀吉の企みがリークされます。いままで「能天気な男」という印象しかなかった重矩なのですが、この情報を聞いて、「光秀=本当の信長」+「おゆき」派として、秀吉・秀長兄弟の本陣へ潜り込むことになります。

鳥取城も落城し、次々と毛利の城が奪われ、有能な武将が戦死したり、寝返ったりする中で、毛利一族の対外戦略を担当する「小早川隆景」に対し、安国寺恵瓊は秀吉へしかけた「寝返り工作」を報告します。秀吉の人間的な「残虐さ」に気付きながらも、織田勢の攻勢を一発逆転する有効な方法として認識した「小早川」+「安国寺」によって、ここらあたりから、毛利一族の「秀吉」への調略工作が本格化していくようです。

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第19巻 戦国の雄・武田家滅亡

第19巻の構成は

第107話 寝言
第108話 コワイ
第109話 弟
第110話 出陣!
第111話 想い
第112話 主
第113話 本能寺にて
第114話 時代

となっていて、まず前半部分では、小早川隆景が、毛利一族の「秀吉」調略の一手として、将軍・義昭のもとへ忍び込んできた羽柴秀長に接触を開始します。

将軍・義昭がすでに「小物化」されているのはちょっと気の毒なのですが、兵力を持っているかどうかでこの違いがでているのでしょう。

という小早川隆景に秀長は兄・秀吉の存在を毛利の重鎮が重要視していると喜んでいるのですが、どちらがどちらを利用しようとしているかはよくわからないところですね。そういえば、毛利一族が防長二国に押し込められたのは、関ヶ原で豊臣家の西軍に加担した責任をとらされたためでありましたね。

一方、織田軍本体は、いよいよ武田攻めです。戦国最強と謳われた「甲斐武田」の本国へ、木曽・駿河・関東から織田・徳川連合軍と同盟軍である北条勢が侵攻します。伝統と武力を誇る武田勢なので、さぞかし頑強な抵抗が、と思いきや、武田攻めの発端となった「木曽義昌」の寝返りに始まり、次々と有力武将や武田一族の武将たちが織田軍へ味方してきます。そして崩れるように武田本家は滅びていくのですが、ここらは本シリーズより、室井大賀さんの「レイリ」あたりを読んだほうが、滅びる武田一族の悲哀は感じ取れるかもしれません。

そして、安土の城に残っていた「おゆき」は、秀吉の反乱の証拠をつかむために、秀吉軍の陣中に忍び込もうと、帰蝶に暇乞いをして鳥取へ向かうのですが、途中の京都で「とき丸」と「五右衛門」につかまりまります。このまま、おゆきを秀吉の陣中に行かせると、彼女の生命が危ないと心配した「とき丸」は・・・、という展開です。

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第20巻 信長は富士山・駿河ツアー。秀吉は陰謀を温める

第20巻の構成は

第115話 あの男
第116話 天女
第117話 帰宅
第118話 正念場
第119話 好物
第120話 徳川家にて
第121話 北陸へ・・・

となっていて、物語はまず、秀吉の陣中から始まります。鳥取城を落とし因幡を平定した秀吉は、現在は「備中高松城」攻めに取りかかっています。

この城は周囲を「低湿地」に取り囲まれた攻め難い城で、三木城や鳥取城など重要な城が次々と秀吉によって落とされているため、毛利本体の出陣も噂されており、今までような時間のかかる「籠城戦」がちょっと難しい情勢です。ここで、秀長が勧めたのはなんと「毛利への寝返り」なのですが、秀吉にはなにか違う思惑があるような感じですね。

一方、信長のほうは武田を壊滅させた後、どういうつもりか甲府から富士山を見物し、そこから駿河へ行き、東海道を通って帰るという「富士山・東海道遊覧ツアー」の旅を開始します。
本シリーズでは、置いてけぼりになった「お市」ちゃんが激怒しているのですが、

実際は、信長には別の目的があったに違いありません。本シリーズでは、この信長の道中の安全を図るのを名目に、徳川家康が武田家から奪ってまもない駿河の地の基盤固めに使ったことになっているのですが、「センゴク」や「信長を殺した男」あたりの解釈では、信長がいずれやったであろう「家康討伐」のために敵情視察、といった解釈がされていたように思います。

そして、前巻で秀吉の陣中に潜入した「とき丸」は、「手取川の戦」のときに出会った「秀長」と再会し、手取川の戦の際の、秀吉たちが柴田勝家に楯突いて退却した本当の理由にきづき、これを明智光秀とおゆきに知らせます。「とき丸」は秀吉本人の「叛意」には確証を得られなかったようですが、二人はその疑いを拭いきれなかったようです。

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レビュアーから一言

戦国の雄・武田一族もあっけなく滅び、織田信長の「天下統一」も目の前に来ている段階なのですが、当然、それは後の世の人なら皆知っている「本能寺の変」も近づいているということで、シリーズの最終章も間近となってきています。さて、このシリーズでは「本能寺」をどう描いていくのか次巻以降の楽しみでありますね。

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