あなたの「言いづらい」を解決しますー稲垣陽子「「言いづらいこと」をサラリと伝える技術」

職場づきあいやビジネスのやりとりの場面で、一番悩むのは、相手の感情を害してしまうかもしれない「言いづらいこと」を言わなけれないけないけれど、どう言ったらいいかわかならない、あるいは言わないといけないけれど、相手から嫌われたくない、といったことが、多くのビジネスパーソンの共通の「悩み」なのではないでしょうか。
そんな悩みに、社長専門コーチとして、20年のコーチング歴をもち、現在は自分も相手も活かす「共創コーチング」を展開する筆者がアドバイスしているのが本書『稲垣陽子「言いづらいこと」をサラリと伝える技術」(三笠書房)』です。

構成と注目ポイント

構成は

第1章 なぜ、あの人には「言いたいこと」が言いづらいのか?
第2章 なぜ「言いづらいこと」を言ったほうがいいのか?
第3章 「言いづらいこと」が言える自分に代わる、5つのパワー
第4章 「言いづらいこと」を言う、6つのステップ
第5章 「言いづらいこと」を言うときに役だつフレーズ集

となっていて、本書でまず注目しておきたいのは、

あなたにとって「言いづらい人」が、必ずしも、他の人にとっても「言いづらい人」とは限らない

「言いづらい」というのは、あなたが相手に対して感じていることであった、その人が万人にとって「ザ・言いづらい人」というわけではない

としていて、本書では「言いづらさ」が発生しているのは、「自分の感情のクセ、考え方のクセ」が大きく影響している、と主張されています。つまり、私たちは、周囲に「言いづらい人たち」がいた場合、その人の特徴や考え方などを分析して、「言いづらさ」の一般て共通点、たとえば「いつもブスッとしている」とか「イヤそうに対応される」とかを探し出してくるのですが、「言いづらさ」の解消には、そういう分析は全く役に立たない、と言っているわけですね。

そして、本書では、こうした分析をしても、相手の態度が変わるわけはないわけなので、そうしたことに力を使わず

①ネガティブな感情を嫌がる
②相手の怒りを避ける
③自分は無能という思い込み
④損をするのを避ける
⑤変化への諦め

といった自分の方が「言いづらい」と感じている考え方のクセや、その人から感じる自分の感情のクセを把握して、「必要に応じてそれを書き換えたり、解消していくことが必要」と
しています。このあたりは、自分の側の「努力」によってなんとでもなるので、相手の動向に左右されることがなくて、かえって取り組みやすいといえますね。

さらに、相手との関係性を「私たちはいつも、その人の断片と関わっている」という意識をもって対応していけば、相手に過度にふりまわされることもなくなると思います。

そして「言いづらいこと」を言える人には

①共感力・・・相手の思いに寄り添い、分かり合える力
②俯瞰力・・・相手の状況や、動かしている動機など、相手を客観的に把握する力
③伝達力・・・自分の言いたいことを、相手に伝わるように伝える力
④触発力・・・言動によって、人にプラスのエネルギーを与える力
⑤調整力・・・相手に会わせて自分をうまく適応させる力

といった5つのパワーが潜んでいることが紹介されていますし、「言いづらいこと」を伝えるときに、相手がその言葉を:受け取りやすい状況にしておく「6つのステップ」

ステップ① 信頼関係を築く
ステップ② 観察する
ステップ③ 周りを巻き込む
ステップ④ 決める
ステップ⑤ 本番(伝える)
ステップ⑥ フォローアップ

も丁寧にアドバイスされているので、具体的なアクションを起こす前に目を通しておくと役立つこと間違いなしでしょう。

さらに、「具体的に、どんな言葉でいっていいいかわからないー」と、もっと懇切ん丁寧なアドバイスが欲しい人には最終章に「フレーズ」集とどんな相手に使えるか、といったことも掲載されています。

レビュアーから一言

本書の最後のほうで、「言いづらいこと」が言えないのは、「相手のパワーや威圧感によって気持ちがグラついてしまうのは、自分のリクエストや望みが曖昧なままだから、という面も大きいのです」と筆者はアドバイスしています。何よりも大事なのは、「自分の思いをはっきりさせる」ということかもしれません。言いたいことが言えない悩みには、伝える技術の習得とセットで「自分を振り返る内省の時間を持つ」ことも大事かもしれません。

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