スミスは旅の続行を断念し、恋人タラスと本国帰還か?ー森薫「乙嫁語り」13

19世紀の中央アジアのカスピ海の諸都市を舞台に、そこに住む若い夫婦たちや、諸都市を巡って旅をしているイギリス人写真家を主人公に、民族色豊かな生活叙事詩が描かれる『森薫「乙嫁語り」(ハルタコミックス)』シリーズの第13弾。

前巻まででロシアとイギリス・フランスといった列強同士の勢力争いが本格化し、社会情勢が悪化してきたため本国へ一時帰還しようと旅をしていた写真家兼探検家のスミスが、砂漠で悲恋のうちに別れたタラスとアンカラで再会し、彼女とともに地中海沿岸のアンタリヤを目指す旅が描かれます。

構成と注目ポイント

構成は

第87話 木彫り
第88話 お客様(前編)
第89話 お客様(後編)
第90話 海へ
第91話 不安
第92話 物盗り
第93話 分岐点
第94話 選択
第95話 帰途

となっていて、第97話の「木彫り」は、スミスが最終の目的地点と考えているウズベキスタンのブハラ近くの町で暮らす「カルルク」と「アミル」の甥っ子「ロステム」が木彫り職人の爺さんに木彫りを教わる話。

カスピ海あたりは、すでにロシアの勢力が入り込んできて戦乱の気配が漂うのですが、カルルクの住む町はまだ大丈夫のような感じですね。

第88話以降は、スミスとタラスの旅の話に戻ります。
カスピ海の周辺にあるサームとサーミとレイリとライラのダブル双子の住む漁村を訪れたスミスたちは、彼らと彼らの一族から大歓待をうけます。いままで、まともに「お客」を迎えて接待をしたことのない二組の双子夫婦の「奮闘」がはじまるのですが、作った蒸し餃子をお客に出す前に大量に試食してしまったり、揚げ魚を焦がしたり、とまあ大騒ぎです。

中央アジアとはいっても、カスピ海周辺と砂漠とでは、民族も風俗も全く違うので、タラスとレイリ・ライラ双方に新鮮な出会いとなっているようです。

後半部の第91話からは、ダブル双子の夫婦のもてなしを受けた後、カルルクたちの住むブハラ近くの町を目指して旅を進めるのですが、山中に入っていくと武装した物盗りがでたり、と治安が一挙に悪くなります。しかも職業山賊ではなく、今まで普通の暮らしをしていた人々が物盗りに転じた様子なので、この地域全体で武力衝突が始まっている証拠でもありますね。

そして、とうとう泊まっていた村にロシア兵が進軍してきます。町の中では、銃撃戦に始まり本格的な制圧戦も行われているようで、もはや平和に旅をするという情勢ではなくなってきているようです。

そして、とうとうスミスは、カルルクとアミルの住むブハラ方面への旅を断念。船でボンベイまで行き、そこから本国イギリスへと向かうようです。
残念ながら、「スミスの旅」はここで断念というところですが、タラスと馬のチュバルが同行してくれるのが何よりです。

レビュアーから一言

食事や料理の場面が少ない、このマンガなのですが、今巻ではスミスやタラスをもてなすために、レイリとライラが一所懸命、料理の腕を奮っています。
これは、お客さんそっちのけでつまみ食いした「蒸し餃子」ですし、

これがタラスとの話に夢中になって焦がしかけた「揚げ魚」ですね。

「絵」からだけでも、中央アジアの異国情緒が伝わってくるような気がします。

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