「チル」と「ミー意識」がキーワードの若者世代を分析するー原田曜平「Z世代」

消費行動や政治行動などを分析する際、よく使われるのが「世代論」なのですが、「マイルドヤンキー」「つくし世代」「さとり世代」などの若者消費を象徴する流行語・キーワードを生み出し、現在でも、若者と行動を共にしたり、1万人を超える若者インタビューなど若者の意識・行動研究の第一人者である筆者が、これから消費行動や政治行動を左右するであろう1990年代後半から2000年代序盤に生まれた「Z世代」の行動特性を分析したのが本書『原田曜平「Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにはまるのか?」(光文社新書)』です。

構成と注目ポイント

構成は

1章 なぜ今、日本でZ世代なのか?
2章 「ゆとり世代」との違いから見る「Z世代」の特徴
3章 Z世代と消費トレンド
4章 Z世代の「メディア生活」
5章 Z世代への新型コロナの影響
6章 Z世代をつかむツボ

となっていて、本書によれば1990年代後半から2000年代序盤生まれの「Z世代」は、日本では総人口の約15%で、人口ボリューム的には、かつて日本の消費を牽引した「団塊世代」や「団塊ジュニア世代」に比べ少なく、今まで、高齢者にターゲットをおいていた日本の企業マーケティングからは軽視されがちだったのですが、「アクティブシニア」の消費に翳りが出はじめ、さらには「新型コロナ禍」による生活の変化などによって、これからの社会のトレンドを左右する「世代」とし注目され始めた、とのこと。
確かに「お笑い第7世代」であったり、YoutubeやTikTokなどの動画アプリやインスタの爆発的普及といった、今までとは少し異なる潮流が大きくなってきている感じがあるのが、これなんでしょうね。

ただ、ここでおさえておかないといけないのは、同じ若い世代とはいっても、Z世代の少し上の「ゆとり世代」とはかなりの違いがでてきていて、本書から要点を抜き出してみると

①「平成不況」によって「消費離れ」を起こした「ゆとり世代」に対し、「アベノミクス」と「超人手不足」によって、進学・バイト・就職面で、不安や競争の少ない安心・安定した生活が送れた
②「ゆとり世代」に比べると、不安や競争の少ない生活を送ってきたので、「Chill(チル)」つまりは「まったりする」ことに価値をおくようになった
③ガラケー第一世代であった「ゆとり世代」に対し、「スマホ第一世代」であるZ世代は、SNS上で周りと同程度に自己アピールをする「自己承認欲求」と「発信欲求」が強く、「一見見えにくい過剰な自意識」(ミー意識)を持っている

といったことがあるようですね。で、こうした特徴によるZ世代の消費の4大ニーズ(①新時代、②新切り口、③新インスタ映え、④新タブー)によって、たとえば

「睡眠」と「リラックス」
「時限フード」「時限コンテンツ」
「情緒ネーミング」と「過剰ネーミング」
「匿名映え」「フェイク飯」

といった流行現象が生まれているようですが、詳しいところは原書のほうで。

さらに、Z世代がよく利用しているSNSやテレビ視聴の度合いやYoutubeの利用の状況など、他の世代とはちょっと違っている、この世代のメディア利用の特徴や新型コロナがこの世代の経済生活や消費行動にどんな影響を及ぼしたかなどについても、「データ」つきで分析されているので、広報とかを担当しているビジネスパーソンには何か仕事上のヒントがすくいとれるかもしれません。

レビュアーから一言

最終章のところで、これから消費行動のトレンドに大きな影響をもつであろう「Z世代」の心をどうつかむかということに関して、筆者は

おじさんの経験値がむしろマイナスに働くケースが多発するこれからの時代に、企業がやるべきことは二つしかありません。
一つ目は、若者に権限を委譲すること。少なくともZ世代に向けたマーケティングや広告や広報は、Z世代に大きな権限を委譲するべきです。ディテールのわからないおじさんクリエイティブディレクターは、おじさん向けのテレビ広告を作るに留めるべきでしょう。
(略)
二つ目は、これは私のZ世代を対象としたマーケティングのやり方でもあるのですが、Z世代と協働する方法です。長らく若者研究をしている私でさえ、Z世代のディテールは肌感覚ではわからなくなっています。

とアドバイスしています。マーケティングに関わるビジネスパーソンだけでなく、「最近の若い者は・・」と言いがちな「オジサン」世代は心に留めていくべきかもしれませんね。

Bitly

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