薬師の少女・猫猫(マオマオ)は宮廷内で名推理を見せるー日向夏「薬屋のひとりごと」1

昔、大陸の中央にあったという設定の大国「茘(リー)」の宮廷を舞台に、薬師出身の少女「猫猫(マオマオ)が、宮中でおきる難事件の数々を、薬学知識と鋭い推理で解き明かしていく歴史ファンタジー系ミステリーが『日向夏「薬屋のひとりごと」(ヒーロー文庫)』です。

「小説家になろう」で人気を博し、書籍化、そしてコミカライズ化された作品です。コミカライズ版では「サンデーGXコミックス」版と「ビッグガンガンコミックス」版で並行して出されるという異色の扱いです。

構成と注目ポイント

第一巻の構成は

一話 猫猫(マオマオ)
二話 二人の妃
三話 壬氏
四話 天女の笑み
五話 部屋付
六話 毒見役
七話 枝
八話 媚薬
九話 加加阿
十話 幽霊騒動 前編
十一話 幽霊騒動 後編
十二話 恫喝
十三話 看病
十四話 炎
十五話 暗躍
十六話 園遊会 其の壱
十七話 園遊会 其の弐
十八話 園遊会 其の参
十九話 祭の後
二十話 指
二十一話 李白
二十二話 里帰り
二十三話 麦稈
二十四話 誤解
二十五話 酒
二十六話 自他
二十七話 蜂蜜 其の壱
二十八話 蜂蜜 其の弐
二十九話 蜂蜜 其の参
三十話 阿多妃
三十一話 解雇
終話 宦官と妓女

となっていて、一話から九話までは、猫猫(マオマオ)が花街の妓楼から誘拐されて後宮に下働きの下女として売り払われるのですが、外界での「薬師」としての才覚を見いだされて、第一王妃の玉葉妃の侍女になるまでが描かれます。ここまでで、お白粉の粉に含まれる鉛毒によって玉葉妃母娘、第二王妃の梨花妃母子が蝕まれるのを助けたり(もっとも梨花妃の産んだ皇太子は生命をおとすのですが)、毒に耐性のある特質を利用して毒見役として力を発揮しながら、後宮内の取締をする「壬氏」の密偵役としても働き始めることとなります。

で、宮廷、特に王の寵愛を巡って美女たちがしのぎを削る後宮内は、事件や陰謀が渦巻いているところで、中級妃の夢遊病騒動や、4人の愛妃たちが集まる「園遊会」での第3王妃の徳妃・里樹の毒殺未遂事件などを解決していくのですが、毒殺未遂事件がおきた後に、後宮警備の武官が毒酒で死んだり、宮中の食事作りをする「尚食」に所属する下女が、後宮と宮殿を隔てれいる高い塀の上から水路に跳びこんで溺死したり、という変死事件がおきます。

一見すると、事故死あるいは自殺として扱われて決着する二つの事件なのですが、「猫猫」は、現皇帝がまだ東宮であった16年前におきた、当時、東宮妃だった「阿多妃」の赤ん坊の病死事件とのつながりを見出します。
その病死事件は、今は花街で薬屋をしている「猫猫」の養父が、その膝の骨を抜いて宮中から追放されるという重罪におちた原因となったものなのですが、そこに、後宮内の高い地位にいる女官が犯したミスと、今、病弱なために姿をほとんど見せない「皇弟」の秘密につながりそうな秘密で・・という展開です。

レビュアーから一言

本シリーズの主人公「猫猫(マオマオ)」は、普段はこういうソバカスいっぱいの顔(サンデーGXコミックス版)で出仕しているのですが、

実はこれは花街で女に相手にされない男たちに路地裏に連れ込まれたり、乱暴をされたりしないためのカモフラージュで、素顔はこんな感じのようです。

今巻では

そばかすとしみを持った、特徴のない顔の女。
だから醜女と呼ばれていた。
逆をいえば、そばかすもしみもなければ、ただの特徴のない、つまり平均的な顔立ちであることがいえる

と表現されているのですが、案外そんなところが「猫猫」が誰からも警戒されずに、様々な「秘密」を探り出してこれる理由なのかもしれません。

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