父の解けなかった連続殺人の謎を、ドS娘が解き明かすー七尾与史「ドS刑事 桃栗三年柿八年殺人事件」

漆のように黒くつややかな髪を方の下あたりまで伸ばし、日本人形のような風貌と白磁のような肌をもった極めつけの美人な上に、スプラッタ映画と殺人事件が趣味で、警察庁次長という警察官僚のトップクラスの父親の権力を平気で濫用する、ドSのお姫様刑事「黒井マヤ」巡査部長を主人公に、彼女のお守役として抜擢された「代官様」こと「代官山脩介」巡査、彼女の暴力で生命の危機にさらされながらも「マヤ命」を貫く浜田学警部補とともに、連続して起きる怪奇な殺人事件の謎を解く「ドS刑事(デカ)」シリーズの第4弾が本書『七尾与史「ドS刑事 桃栗三年柿八年殺人事件」(幻冬舎文庫)』です。

前巻の最後のところで予告のあった、双子の連続殺人事件を解決して、マヤたち捜査一課三係のメンバーが慰安旅行に向かった先は、マヤの父である警察庁次長・黒井篤郎が若い頃に手がけた連続殺人事件が起こった地・城華町。そこでマヤたちはこの地で繰り返す連続殺人事件の謎解きに挑み、父親が解き明かせなかった連続殺人事件の底に流れていた真相を暴き出すこととなります。

「ドS刑事 桃栗三年柿八年殺人事件」の読みどころ

構成は

二〇一三年三月〇日 ー 代官山脩介
一九七九年三月十五日 ー 諸鍛冶儀助
二〇一三年三月△日 ー 代官山脩介
一九七九年三月十七日 ー 諸鍛冶儀助
二〇一三年三月×日 ー 代官山脩介
一九七九年三月二十日 ー 諸鍛冶儀助
二〇一三年三月十八日 ー 代官山脩介
一九七九年三月二十七日 ー 諸鍛冶儀助
二〇一三年三月二十五日 ー 代官山脩介
二〇一三年三月二十九日 ー 代官山脩介

となっていて、今巻の構成は、現在におきる連続猟奇殺人事件の謎解きと、事件解決後慰安旅行で訪れた「城華町」で遭遇する連続殺人事件の謎解きと、34年前に「城華町」でおき、まだ若手であったマヤの父親・黒井篤郎が捜査本部の一員として捜査にあたった連続殺人事件とがパラレルに描かれます。

まず現在におきる第一の連続殺人事件は、双子たちが連続して殺されるという事件です。しかも、双子の男性と女性のそれぞれが頭から真っ二つに」切断され、その半身づつが縫い合わされていたり、頭部をそれぞれすり替えられて縫合され、二体が手をつないだ状態で放置されていたり、アニメの世界ででてくるような状態で発見されます。

「単純な殺人」ではない殺し方にこめられた意味が謎解きの鍵になるのですが、マヤたちは、ナチスのアウシュビッツ収容所で、「死の天使」と呼ばれ、人体実験、特に双子を使った実権を繰り返していた「メンゲレ医師」のことを研究しているジャーナリストから、メンゲレのことを同じく調べている医師や、その家族で難病を抱えている双子の男の子たちのことを知るのですが・・・、という筋立てです。

この双子猟奇殺人事件のところは、実は今巻の主題である「城華町」の年月を空けて繰り返されていた連続殺人事件とは関係ないので、純粋に、黒井マヤ好みの「連続猟奇殺人事件」の謎解きとして読んでおいたほうがいいですね。

そして、主題である「城華町」でおきる連続殺人事件のほうは、まず1970年代の後半におきた事件が描かれます。
最初の殺人は、城華町の人家から離れた草むらに、若い女性が下着姿で、腕を後ろに回され、手首と足首をロープで固定され、首を針金で締められ絞殺されている状態で発見されます。この女性はミス城華町にも選ばれた評判の美人で、しつこく言い寄っていた村の若者が第一容疑者として調べ上げられるのですが結局はシロ。捜査も行き詰る中で、所轄署だけではなく、東大出のキャリアで、警視庁捜査一課を望んで配属されていた、若い頃の「黒井篤郎」警部(今シリーズの主人公・黒井マヤのお父さんですね。現警察庁次長のおエライさんです)も捜査に加わったという設定です。

しかし、本庁が乗り出してきても捜査のほうは進展せず、連続して若い女性が殺されていきます。いずれも下着姿にされて、首を針金で絞められて殺されている上に、右手の中指が切断されているという共通点はあるのですが、被害者たちは勤め先もバラバラでそれ以外の怨恨や色恋沙汰などの共通点はみつかりません。そして、ついには、黒井警部たち捜査員が宿泊している旅館の娘・池上摩耶が何者かに電話に呼び出されて殺害され・・という展開です。

実はこの町では21年前にも、同じような女性連続殺人事件がおきていて、その時に犯人は、この町で長く警察官を勤めていて定年間際の男性警察官で、彼は捕まりそうになった時、「俺はこの町を守ったんだ」と叫んで自殺を遂げています。さらに町ではそれ以前の大正14年、大正15年、昭和2年、昭和4年、昭和12年、昭和33年と、数年おきに同じような連続女性殺人事件がおきており、この時も犯人が警察官であったことがわかります。さて、この数年おきにおきる連続殺人と今回の事件の関係、そして犯人はやはり警察関係者なのか、といった展開ですね。

物語のほうは現代の「城華町」へと移ります。今巻の前半部分の「双子連続殺人事件」の犯人をあげ、慰安旅行に「城華町」にやってきたマヤたち警視庁捜査一課三係の捜査官たちなのですが、ここで、殺人事件の捜査に急遽駆り出されます。事件は、JAに勤めていた女性が職場からの帰り道の途中で襲われ、背後から頭部を鈍器で滅多打ちされて殺されているというモノなのですが、慰安旅行の行き先を城華町を選んだのが、黒井マヤであるあたりから、彼女が事件の匂いを嗅ぎつけて計画したことのように思えてきますね。

読者の皆さんの予想通り、この殺人事件は連続化していきます。殺された最初の事件の女性の不倫相手の男性が殺され、さらに二人とは何の関係もない喫茶店の店員女性が殺されます。今回も、捜査関係者の中に、この町出身で定年間際のベテラン警察官が混じっているので、おのずと疑いの目で見てしまうのはしょうがないところです。

ここで少しネタバレしておくと、この町で起きていた連続女性殺人事件は、1,1,2、3,5,8,13,21,34年、という周期でおきていて、今回の事件は1979年に黒井警部が関わった事件からちょうど34年後におきているわけですね、この数字は、前2つの数字の輪で次の数字が決まる「フィボッチ数列」になっていて、黒井マヤは連続殺人がおきそうな時期を想定して、皆をこの町へ連れてきていた、ということらしいですね。

そして今回も、捜査陣たちが宿泊していた旅館の娘・池上千鶴が何者かに呼び出され、犯人によって撲殺されてしまいます。同じ旅館の叔母と姪の関係になる二人の女性が同系の事件の犠牲者になったわけですが、今回の犯人もやはり・・・といった展開です。

レビュアーから一言ー「マヤ」の命名の由来判明

現代の最初の事件の方が、ナチスのメンデレ医師をネタにだしながらの、優生学をつかった謎解きであったので、後半部分や、過去の事件の謎解きも、このあたりのネタが仕込まれているのでは、と思っていたのですが、見事に裏をかかれました。
まあ、今回は「黒井マヤ」の名前の由来がわかったので、そこで良しとしましょうか。

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