ドS姫・マヤは客船爆破を阻止できるか?ー「ドS刑事 井の中の蛙大海を知らず殺人事件」

漆のように黒くつややかな髪を方の下あたりまで伸ばし、日本人形のような風貌と白磁のような肌をもった極めつけの美人な上に、スプラッタ映画と殺人事件が趣味で、警察庁次長という警察官僚のトップクラスの父親の権力を平気で濫用する、ドSのお姫様刑事「黒井マヤ」巡査部長を主人公に、彼女のお守役として抜擢された「代官様」こと「代官山脩介」巡査、彼女の暴力で生命の危機にさらされながらも「マヤ」命を貫く浜田学警部補とともに、連続して起きる怪奇な殺人事件の謎を解く「ドS刑事(デカ)」シリーズの第6弾が本書『七尾与史「ドS刑事 井の中の蛙大海を知らず殺人事件」(幻冬舎文庫)』です。

あらすじと注目ポイント

今巻は、黒井マヤ、浜田警部補と飲み会後、マヤから二日酔い防止に効くドリンクをもらって飲み干すという暴挙をしでかした、代官山くんが、マヤの両親や彼女によって、就航まもない「リヴァイアサン」という豪華客船に拉致・乗船させられるところから始まります。マヤたちの魂胆が、この豪華客船に監禁状態にして、代官山くんがマヤの結婚相手にふさわしいか見極めるつもりだったのでしが、浜田警部補も代官山くんにくっついて乗船し、この「お婿さん選び」に参戦を勝手に宣言し、黒井マヤの「愛の争奪戦」が始まることとなります。

事件のほうは、この豪華客船のオーナー会社の経営者がフェルメールの名画を最近落札したのですが、これに目をつけたのが、テロリスト兼「猫」系名画のコレクターの「マモー」という爆弾魔。この人物が、フェルメールの絵画と引き換えに、「リヴァイアサン」に、高性能のプラスチック爆弾を仕掛けた、という設定です。

この「リヴァイアサン」には、豪華客船の処女航海とあって、黒井マヤ親子のような高級官僚だけではなく、日本を代表する企業グループの創業者夫人の老女と孫娘とか、日本を代表する美人女優の江陣原さとみ、とか各界を代表するセレブが多数乗船しており、この船が爆破され死傷者が多数でることになると、政府の信用と警察の威信は地に落ちること間違いありません。

このため、警視庁も、庁内でも腕利きの爆発物処理チームを送り込むのですが、その一員である春日太陽という警察官は、かつて「マヤ」と恋愛関係にあったのですが、マヤを「恋愛もの」の映画に誘ったことが彼女の怒りをかってフラれた前科の持ち主です。未だ、マヤちゃんに未練のある彼も、今回、黒井マヤの「愛の争奪戦」に参加することになって・・という筋立てです。

物語は、黒井マヤちゃんを巡る、代官山・浜田・春日の三人の警察官の「笑い」を誘う動きを「薬味」にしながら、第二の事件として女優の「江陣原さとみ」が殺されたり、大グループ企業創業者の夫人の発言が認知症のせいか、孫娘を他人のような発言をしたり、といった伏線をはらみながら、船にしかけられた爆弾の爆破時刻へ向かって進んでいきます。

警視庁の爆弾処理のエース・春日たちは、爆弾の高性能なトラップをかいくぐって爆破を止めることができるのか、代官山と浜田は、「リヴァイアサン」に乗船しているらしい「マモー」を見つけ出し、爆破を止めさせることができるのか、爆破時刻の迫る緊迫した状勢の中で、爆破を止めて娘(マヤ)を守ってくれた男との結婚を許す、というマヤの父親にして警察庁次長の黒井篤郎の言葉に、三人が「恋の争奪」をめぐって事件解決に邁進します・・といった展開です。

ただ、ここで少しネタバレしておくと、今回も一歩先の推理を展開して、事件の解決をしていくのは、ドS娘の「黒井マヤ」ちゃんですので、念のため。

レビュアーから一言

前巻までは、黒井マヤの熱烈なラブコールと強引なプロポーズ行動をうけながら、彼女のスプラッタ映画オタクと殺人事件嗜好という趣味に、少々ビビっていて積極的な動きに出てこなかった代官山くんなのですが、今回、船にしかけられたプラスチック爆弾が爆発すれば、黒井マヤちゃんも木っ端みじんになるところであったり、浜田警部補に加え「春日太陽」というかつてマヤとつきあっていたライバルも登場し、

それだけ強く彼女に惹かれているということか。ただなんとなく彼女を失いたくないという自覚はあった。しかしここではっきりと自分の気持ちを伝えないとマヤを春日にもっていかれそうな気がした。
(略)
失いたくない!

といった感じで、自分の心を再確認した代官山くんです。ちょっと意地悪な見方をすると、黒井マヤちゃんの掌の上で完全に踊らされている気がするのですが、さて次巻以降でどう転がっていくのでしょうか。

ドS刑事 井の中の蛙大海を知らず殺人事件 (幻冬舎文庫)
ドSすぎる女刑事マヤに一服盛られ、"ハネムーンの下見"のため豪華客船に"拉致"された代官山。しかしその船には「マモー」と名乗る人物による時限爆弾が仕掛けられていた。さらに乗船していた大物女優の死体が発見。果たしてマヤは時間内に事件を解決でき...

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