ゴーストに憑かれた「俺」はゴーストの死の謎に迫るー七尾与史「僕はもう憑かれたよ」

自分がプレゼントしたランニングシューズが原因で恋人が死んだのでは、という後悔の思いから立ち直れない女性・八木沼真知と、自分の知らないところで「自分」が勝手に行動していることに気付き、ドッペルゲンガー現象か夢遊病の疑いを持ち始めた男性・美門玲二をメメインキャストにして、事故死と思われていた真知の恋人の死の真相を解いていく、ゴーストストーリー風ラブ・ミステリ―が本書『七尾与史「僕はもう憑かれたよ」(宝島社文庫)』です。

構成と注目ポイント

構成は

第一章 ギョット
第二章 若草色のシューズ
第三章 俺ダッシュ
第四章 サロゲート
第五章 ファントム棘徐波

となっていて、まずは、本巻のメインキャストの一人で、イタリアン・カフェに勤めながら、自分のカフェ店を開く勉強をしている「八木沼真知」のマンションの部屋へ、突然、もう一人のメインキャストの一人、美門玲二が深夜に訪ねて来るところから始まります。

真知と美門は初対面なのですが、美門は知り合いから、真知のことを見てきてほしい、と来訪の趣旨を伝えるのですが、真知のほうには全く心当たりがありません。不審感を強める真知に対し、美門は、彼女の最近亡くなった恋人の出身地の方言・遠州弁を交えて、その恋人と真知しかしらない言葉を告げてくるのですが・・といった滑り出しです。

よくあるストーリー展開ですと、これをきっかけに真知と美門が知り合いになって、双方が互いに不審の念を払拭できないながらも、相手のことが気になり始めて、といった筋にいくのですが、本書の場合は、美門は勤め先である医療機器販売会社の取引先である歯科医院の歯科衛生士の女性の歓心をひこうとアイドルグループのコンサートチケットの入手に悪戦苦闘したり、真知のほうも勤めているイタリアン・カフェの店主がそれとなく寄せてくる好意を気付かないふりをして無視して。同僚の嫉妬をかったり、と二人の関係が接近していく気配もなく、物語が進んでいきます。

それどころか、真知の部屋から、盗聴器のしかけられた電源タップが発見されたりと、何やらストーカー系犯罪の匂いすら漂わせる雰囲気となってくるのですが、中ほどあたりから風向きが変わってきます。

実は真知の亡くなった恋人は、近くの急な階段のある坂道を彼女のプレゼントした靴をはいた状態で転落死していて、真知が恋人が死んだ原因が自分にあるのでは、と悩んでいたのですが、再度、調べたところ階段には滑り止めが施されていて、その靴のせいで転落しようもないことがわかります。

さらに、美門のほうも真知のところを訪ねたりしていたのは、彼が眠っていて意識のない状態の時におきていて、どうやら、真知の元恋人の意識が美門の意識内に入り込んでいるのではないか、と思い始めます。真知の恋人が転落した時に、彼を助け起こして救急車を呼んだのが美門だったことがわかってくると、その疑念がどんどん本当っぽくなってきますね。

そして、今回の謎現象は、真知の元恋人が誰かに「転落死」させられたのでは、という疑いが強くなることで一挙に「ミステリ―」っぽくなってくるという展開です。そして、その謎解きは、元恋人の「僕は誤診してしまったかもしれない」という言葉と、彼が生前にある高校生に勧めていた、イジメをテーマにした小説「サロゲート」にあるのでは、とあるイジメによる自殺事件のことを調べ始めるのですが・・といった展開です。

少しネタバレしておくと「イジメ」自殺事件の被害者の恋人の犯行か、といったところで一件落着かと思いきや、そこからさらに深みに展開していくところが読みどころですね。

レビュアーから一言

いつもヒネッた設定をしかけてくる作者なのですが、今巻は偶然、転落死する場面にでくわした主人公が、死んだ男性の意識に「勝手に」意識内に入りこまれておきる謎解きミステリ―で、今回は、作者特有の「ブラック」な風味は少なめで、珍しく「らぶ・ストーリー」風味が強めの仕上がりになってます。筆者にしては変わり種の「ゴーストストーリー」をお楽しみください。

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