変人化学者が大学内の不思議な事件の謎を解くー喜多喜久「化学探偵Mr.キュリー」

実験しか興味のない変わり者の天才化学者「沖野春彦」と大学の庶務課の新米事務職員「七瀬舞衣」をメインキャストに、文系から理系まで幅広く学部を揃えた中堅の私立大学「四宮大学」で起きる不思議な事件の謎を解いていく化学ミステリ―「化学探偵」シリーズの第一弾が本書『喜多喜久「化学探偵Mr.キュリー」(中公文庫)』です。

構成と注目ポイント

構成は

第一話 化学探偵と埋蔵黄の暗号
第二話 化学探偵と奇跡の治療法
第三話 化学探偵と人体発火の秘密
第四話 化学探偵と悩める恋人たち
第五話 化学探偵と冤罪の顛末

となっていて、まずは本シリーズのメインキャストの一人「七瀬舞衣」が「四宮大学」へ初出勤するところから始まります。彼女は学内の様々な雑用を担当する「庶務課」に配属されていて、こういう地味な職場でも「堂々と、自分の仕事に誇りをもって働く」ことをモットーにしているのですが、そのせいか、今回、「学内のあちこちで穴を掘ったあげく放置していく」事件の解決を命じられることになるのが第一話の事件となります。

彼女が組まされるのが、理学部一の変人でMr.キュリーと言われる化学担当の准教授「沖野晴彦」です。彼は先祖に「キュリー」という名の外国人がいるためにこういうニックネームがついているようですが、「ノーベル化学賞」をとった女性科学者とは全く関係ないようですね。

で、第一話の事件のほうは、もともとは学内の農学部の圃場で夜中に誰かが穴を掘っていたことが発端です。この穴から「埋蔵金の在り処 正門=109、ホームベース=22」というメモが発見されたとことから、学生たちが、その埋蔵金を探してあちこちに穴を掘っているようなのですが、舞衣たちが尋問した「SOS研究会」のメンバーは、自分たちは穴は埋め戻しているのだが、敵対勢力は穴を埋めずの放置しているのだ、と主張するのですが・・という展開です。少しネタバレすると、第一発見者を疑え、というミステリ―の鉄則がここでは生きてます。

第二話の「化学探偵と奇跡の治療法」では、七瀬舞衣の叔母がガンにかかっているという診断を受けるのですが、その診断を行った医者が、ヨーロッパでは信じる人も多い「ホメオパシー」という民間療法を奨めてきます。その治療薬として多額の薬代を請求されていて、詐欺と思った舞衣は沖野に、この医者を「化学的に」とっちめることを依頼します。
ところが調べてみると、この治療薬によって実際に治癒した人がいることもわかった上に、苦情をいうと、あっさりと今まで支払った治療薬代に上乗せをして返金してくれます。これには沖野のかつての同窓の化学者で今は新興の製薬会社に勤務している男が絡んでいるようで・・という展開です。

第三話の「化学探偵と人体発火の秘密」では、理学部の会議室を利用して開かれている講演会あとの懇親会で、画期的な発毛剤を開発した高名な化学者の頭髪が突如発火するという事件がおきます。その毛髪は、その化学者が発明した薬によって発毛したものだったので、薬の実証結果が燃えてしまった、というわけですね。
そして、当初は人体からの自然発火かと怪奇現象が疑われるようなこともあったのですが、テーブルに置かれていたキャンドルの火が引火したのでは、という疑いが広がります。このパーティー会場をセットしたのも、キャンドルに火をつけておいたのも舞衣だったので、彼女の責任問題にも発展しそうなのですが・・・という展開です。
結論からいうと、その発火した教授のおかげに舞衣は責任を問われることはなかったのですが、実はその発火事件には、発毛剤に関するもっと大きな秘密が隠されていて・・という展開です。

第四話の「化学探偵と悩める恋人たち」は、同棲中のカップルの仲をとりもつお話です。四宮大学の学部生の浅沼涼介はあこがれの美人学生の聖澤涼子と交際をはじめ、同棲するところまでこぎつけたのですが、同棲初日に宣言されたのが「肉体的な接触の禁止」です。これではルームシェアと変わらないのですが、彼女は「恋人」であることは否定せず・・というモヤモヤの相談に舞衣がのることになります。
調査のために、涼子を尾行すると、彼女は定期的に小児白血病の子どもの見舞いにいっていることがわかるのですが・・という展開です。少しネタバレすると、この見舞いはフェイク。真相は、浅沼くんを趣味的にストーキングしているストーカ女子が持ち帰ったゴミ袋の中身から明らかになっていきます。

第五話の「化学探偵と冤罪の顛末」では、舞衣が幼馴染のアイドルの窮地を救います。売り出し中のアイドル美間坂剣也は中性的な魅力で人気上昇中なのですが、レッスンスタジオからの帰り道、道端で腹痛で苦しんでいる女性の介抱をするのですが、そのシーンを動画にとられ、彼がクロロフォルムを嗅がせて女性の意識を失わせて乱暴した、といいがかりをつけられます。剣也は、本シリーズのメインキャスト・七瀬舞衣と幼馴染で、舞衣は剣也のマンションに「お泊り」をするほどの仲良しで、その縁で彼女に助けを求めてきて、という筋立てです。
さらには、この恐喝をしている男女が、四宮大学の学生であることも判明して、沖野准教授も駆り出されることになって、という展開です。この話では、沖野の語る「クロロフォルム」の真実が興味深いのと、剣也のマンションに「お泊り」する舞衣がスキャンダルにならない理由というところでしょうか。

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レビュアーの一言

本編のホームズ役は天才化学者の「沖野」なのですが、キャスト的な魅力は、沖野の研究室に遠慮なく入り込み、彼を引っ張りまわして現場に連れていく元気娘「七瀬舞衣」でしょう。彼女のパワフルなワトソン役をお楽しみください。

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