化学探偵は売れっ子アイドルのトラウマを取り除くー喜多喜久「化学探偵Mrキュリー」2

実験しか興味のない変わり者の天才化学者「沖野春彦」と大学の庶務課の新米事務職員「七瀬舞衣」をメインキャストに、文系から理系まで幅広く学部を揃えた中堅の私立大学「四宮大学」で起きる不思議な事件の謎を解いていく化学ミステリ―「化学探偵」シリーズの第2弾。

構成と注目ポイント

構成は

第一話 化学探偵と炎の魔術師
第二話 化学探偵と盗まれた試薬の使途
第三話 化学探偵と疑惑の記憶
第四話 化学探偵と幻を見た者たち
第五話 化学探偵と人魂の正体

となっていて、まず第一話では、三月生まれのために体も小さく、スポーツでも劣等感を抱えている少年・園田勇太が放課後、橋脚の下で一人の老人に出会います。その老人は、ポケットから出した物質を使って、地面に置いた壺から大きな炎を出現させます。勇太かこの老人こそ「炎の魔術師」に違いないと、老人にある頼みごとをするのですが・・と言う滑り出しです。この老人に頼みごとを拒否された彼が、学校の四宮大学見学の折に、「化学は魔法のようなものだ」といった沖野にその魔法を教えてくれ、と頼み込みます。少年の依頼を聞いた沖野は、少年が橋脚の下で見た老人の「炎の魔術」の本当の狙いと、少年の悩みの両方を一度に解決します・・、という展開です。

第二話の「化学探偵と盗まれた試薬の使途」では、沖野の主催する「先進科学研究室」から「過酸化水素水」の試薬が盗まれます。この盗難は当初誰も気付かなかったのですが、四宮大学のアイドル研究会が開く、大学アイドルのオーディションを延期しない場合は爆薬をしかけるという脅迫状が届き、その爆薬の原料に盗まれた試薬が使われるのでは、という疑いが高まり・・という展開です。謎解きの鍵となるのは、大学内のあちこちの建物に出入りしている小麦色の肌をした人物で、容疑者としてテニス部の春日井美月という女子学生の弟が浮上してくるのですが・・といった筋立てです。

第三話の「化学探偵と疑惑の記憶」は、舞衣の幼馴染でゲイのアイドル・美間坂剣也と親しい人気急上昇中の女性アイドル・東雲英梨子の幼いころからのトラウマを解決する話。
彼女には幼いころ、ガンで入院していた祖母がいたんですが、その祖母が退院してきたとき、嬉しくて学校でつくったクッキーをもっていきます。祖母がクッキーをひとつ食べた後、もっと食べてほしくて飲み物を準備しようと部屋を出たところで祖母が苦しみはじめ、その後死亡するという事件がおきます。
彼女はそれ以来、祖母に食べさせたクッキーに毒が入っていたのでは、とか、クッキーが喉に詰まって窒息死したのでは、と疑惑をもっていた、という設定です。最近までは詳細を忘れていたのですが、あるとき思い出しでからそれが気になり始め、とうとう演技にも影響してきて、という筋立てです。彼女が祖母にクッキーをすすめた時の「アーモンド臭」が謎ときのヒントになりますね。

第四話は、四宮大学の学生・花隈が熱を出して寝込んでいるときに、彼女から差し入れられた四宮大学限定飲料を飲んで幻覚に襲われた現象の謎解きです。その飲料をめぐっては、共同開発先のメーカーから共同研究者の多田が研究費不正をしているというタレコミが舞衣の属する大学庶務課に入った後、多田がそのメーカーの研究者に研究費をキックバックしていることがわかり、二人とも責任をとって辞職を申し出るという事態がおきます。
ところが実際は研究費不正を隠れ蓑にした、もっと大きな企みが隠れていて・・という展開です。

第五話は、オリジナルの占いをくるほどの占いフリークの女子学生が、「人魂を一緒に見た人と結ばれる」という予言が出た日に、自宅の川向うに建つ洋館の二階で、緑色に輝く「人魂」を見るのですが、その正体は・・という謎解きです。好きな男の子と一緒に「人魂」をみるために頑張る女性の恋心の、舞衣が人肌脱ぐこととなります。
もっとも、人魂と思えた「緑の発行体」は実は・・という種明かしはありますので、真相は原書のほうで。

Bitly

レビュアーの一言

シリーズ開始の頃は、コンプライアンス委員会の担当ということで舞衣が持ち込んでくる学内の揉め事に参加させられていた沖田准教授なのですが、シリーズ2巻目では、舞衣のところへ来る相談事が「恋愛相談」が増えてきているので、少々、「専門外」な気配が強くなっていますが、コージー・ミステリ―風味は強くなっています。血が出たり、人が死んだり、悪意でコテコテのミステリ―に疲れたときにはおススメです。

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