アシリパは脱獄王を第七師団から奪還できるか?ー「ゴールデンカムイ」9〜10

アイヌの娘「アシリパ」と日露戦争の生き残りで「不死身の杉元」と呼ばれた杉元佐一たちが、明治期の北海道を舞台に、かつてアイヌ民族が明治政府打倒のために集めていた大量の金塊を巡って、幕末の新選組の生き残りの土方歳三や日露戦争で頭蓋骨の上半分を失った第七師団所属の情報将校・鶴見中尉を相手に、金塊の在り処を記した「刺青人皮」の争奪戦を繰り広げる、明治の北海道版ゴールドラッシュストーリー『野田さとる「ゴールデンカムイ」(ヤングジャンプコミックス)』の第9弾と第10弾。

第9巻 偽物人皮を見分ける偽札犯を確保しろ

第9巻の構成は

第81話 隠滅
第82話 二階堂
第83話 恋占い
第84話 獄中
第85話 恋路いくとせ
第86話 昔の話をしよう
第87話 お行儀
第88話 耳長お化けがやって来る
第89話 沈黙のコタン
第90話 芸術家

となっていて、剥製作家・江渡貝の自宅兼作業場で、アシリパ・杉元・白石のグループと土方・永倉・牛山・尾形のグループが手を結ぶことに合意します。全面的に協力体制を築くというのではなく、鶴見中尉たち第七師団に対抗するために臨時的に手を結んだ、というレベルですね。

このアシリパ・土方連合軍は、第七師団の二階堂による江渡貝の自宅兼作業場焼き討ちを逃れ、偽造人皮の鑑定ができる可能性のある偽札犯・熊岸長庵が収監されている樺戸監獄のある「月形」を目指します。この道中に白石や永倉たちの「昔話」が始まります。

まず、「脱獄王」白石由竹の話。彼はこの樺戸監獄で熊岸長庵に出会っていて、彼が「脱獄王」と異名をとることとなったわけは、長庵の描いた「シスター宮沢」の肖像画の当人に会いたいという欲望をいだき、彼女を追って全国の刑務所を脱獄してまわったというもの。
まあ、実際の「シスター宮沢」がどういう女性だったかは、本書のほうでご確認を。

そして次は永倉新八と土方歳三の明治に入ってからの再会の話です。土方歳三は、通説では箱館戦争の際に戦死したことになっているのですが、実は密かに、新政府軍にいた樺戸監獄の典獄・犬童四郎助によって幽閉されていた、という設定で、樺戸監獄に剣術師範で出入りしていた永倉が出会った、というわけですね。さらに、永倉の前歴を活かして情報をとったところ、熊岸長庵は脱走を企んで射殺されたことになっているのですが、ここには仕掛けが隠されています。

一方、永倉や家永たちの後発として樺戸を目指しているアシリパたちは途中のアイヌの村で休ませてもらうことにするのですが、村人の前で鉢巻をとらなかったり、不作法をあざける言葉をかけたり、と失礼な行動をしでかします。どうやら子グマに粗末なゴミのような餌を与えている村人たちを見て、不審なところを感じているようですが、これが「大当たり」。脱獄してきた囚人たちが村の男達を殺害して入れ代わり、ここで偽札づくりをしていた、というわけで、熊岸長庵も実は生きていて、この偽札づくりに協力させられています。

アシリパが拉致されたと気づいた杉元や尾形たちに、村人に化けている囚人たちが襲いかかるのですが、ここは戦闘能力の違いは歴然ですね。あっという間に囚人たちは蹴散らされてしまいます。

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第10巻 偽札技術を餌に、第七師団を騙せるか?

第91話 トゥレブ
第92話 変装
第93話 カムイコタン
第94話 機能美
第95話 似ているもの
第96話 千里眼
第97話 旭川第七師団潜入大作戦!!
第98話 薩摩隼人
第99話 飛行船
第100話 大雪山

白石が第七師団に捕まる。このまま旭川の本部に連行されると、アシリパや土方の秘密がバレてしまうので、土方たちが白石の救出に向かいます。しかし、救出のために打つ手はがことごとく失敗します。

次の手段として、アイヌの村の入れ替わりを行っていた主犯格の詐欺師・鈴川を使い、彼を網走監獄の典獄・犬童に変装させ、第七師団の司令部に入り込み、淀川連隊長の出世欲をつついて、「偽札づくりの技術」と白石を交換しようと画策するのですが、残念ながらこれは、鶴見中尉の命を受けた鯉登少尉によって阻止されます。

正体を見破られた杉元たちは、連隊の庭に係留されていた飛行船を奪い、大雪山方面へと逃走を図るのですが・・という展開です。

一方、鶴見中尉たちのほうでは、剥製作家・江渡貝の自宅の焼き討ちの際に、土方歳三に右足を斬り飛ばされた二階堂が入院治療中。彼は足を失ったことで杉元に復讐することができなくなったと思い、麻薬に逃げ込んでいます。そこで鶴見中尉が呼んだのが、三十年式小銃をはじめ陸軍の多くの武器を考案した有坂中将です。彼から銃を仕込んだ義足をプレゼントされます。これで再び二階堂が杉元の刺客として復活してくるわけですね。

また、アシリパたちを追いかけてきていた谷垣、インカラマツ、チカパシは夕張まで来ているのですが、ここでインカラマツが詐欺師集団に拉致されるというハプニングが起きるのですが、彼女の奪還騒動を通じてインカラマツが谷垣に好意を持つ、という次巻以降の展開に重要となるエポックが描かれています。

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【レビュアーの一言】アシリパの百合根料理はどんなもの

今巻はアイヌの村も内地人である脱獄囚人に占領されていますし、メインテーマは、第7師団に捕らわれた脱獄王・白石の奪還なので、「アシリパ飯」の場面は少ないのですが、第10巻でアイヌの人々の淡水化物である「オオウバユリ」の百合根を使った料理が紹介されています。

百合根を搗き潰して、水を加えて袋で濾してとったデンプンを団子状にして食べるものなので味は薄いような気がしますが、狩猟生活が中心のアシリパたちにとっては貴重な「炭水化物」資源であったようです。

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