アイヌの少女・アシリパは父の恋人・ソフィアのいる亜港監獄へ向かうー「ゴールデンカムイ」17

アイヌの娘「アシリパ」と日露戦争の生き残りで「不死身の杉元」と呼ばれた杉元佐一たちが、極東アジアを舞台に、幕末の新選組の生き残りの土方歳三や日露戦争で頭蓋骨の上半分を失った情報将校・鶴見中尉率いる第七師団を相手にアイヌ民族が明治政府打倒のために集めていた大量の金の争奪戦を繰り広げる明治のゴールドラッシュストーリー『野田サトル「ゴールデンカムイ」(ヤングジャンプコミックス)』の第17弾。

前巻までで樺太に残された父親の足跡をたどって、アシリパに金塊の隠し場所の手がかりを思いださせようとしているキロランケが、日ロの国境を密入国して最終地点へ至るまでが描かれるのが本巻です。

あらすじと注目ポイント

構成は

第161話 カムイレンカイネ
第162話 狙撃手の条件
第163話 指名手配
第164話 悪兆
第165話 旗手
第166話 頼み
第167話 白くらみ
第168話 燈台守の老夫婦
第169話 メコオヤシ
第170話 亜港監獄の女囚

となっていて、ウイルタ族に偽装して樺太のロシア国内へ密入国しようとしたアシリパたちにロシア兵のスナイパーが銃撃してきます。これは前巻で鶴見中尉が打ち明けていた、1881年、ロシアの首都・サンクトペテルブルグでおきた皇帝アレクサンドル2世の爆死事件の犯人である「ユルバルス」ことキロランケの抹殺を図ろうとしたもので、アシリパたちの情報は鶴見中尉からロシア側にリークされていたという仕掛けです。
このアレキサンドル2世の暗殺の主犯は「キロランケ」なのですが、アシリパの父親ウィルクもこの犯行をアシストしていて、二人していわゆる「国事犯」としてロシア帝国から20数年間ずっと狙われていたんですね。

ロシア兵の襲撃に対し、アシリパ側で迎え撃ちにいったのが、狙撃兵あがりの尾形「上等兵」で、同じスナイパー同士の虚々実々の駆け引きと騙し合いが雪原で展開されます。ここでは、ウイルタ族の死者を葬る儀式である「天葬」の棺を使ってのかなり罰当たりなトリックを尾形が仕掛けています。「天葬」というのは死体を経文などが書かれた布でくるみの針に放置して、鳥や獣に処理させるもので、日本では「鳥葬」という名称のほうが一般的かもしれません。

そして、このスナイパー勝負に勝ったものの、待ち伏せによる体力消耗で気絶した尾形の脳裏を、彼の「弟殺し」の記憶が駆け巡っていくので詳細は原書でお確かめください。
この狙撃事件によって、国事犯のキロランケと一緒にロシア国内を旅するのにビビった白石がアシリパに逃亡をもちかけるのですが、彼女は父親の足跡をたどることを決断します。

そんなアシリパたちをキロランケが樺太の最終目的地として導くのはアレキサンドロフスクサハリンスキーにあるアレクサンドロフスカヤ監獄に収監されている、キロランケ(ユルバルス)とウィルクの同士・ソフィアです。ソフィアからキロランケも知らない父親の思い出をアシリパに語らせ、金塊の隠し場所の手がかりを思い出す最後の引き金とするつもりのようですね。

一方、アシリパたちの後をおいかける杉元たちは雪原で道に迷い、あわや遭難して凍死という危機を迎えるのですが、日露戦争以後使われることなく放置されていた燈台によって命を救われます。

レビュアーから一言>アシリパ飯は「シロイルカのくじら汁」

ここらあたりまでくると、アシリパが得意に披瀝するアイヌの郷土料理はでてこなくなるのですが、ニヴフ族と一緒に漁をして仕留めたシロイルカの料理は、じゃがいも、干ギョウジャニンニク、干ニリンソウと、アシリパが密かに隠し持っていた杉元の「味噌」を入れたくじら汁、モニフンペ(シロイルカ)のオハウです。

樺太に渡ってからはロシア料理やロシアっぽいシーンが増えているので、この「オハウ」はアシリパらしさがでていて好印象です。

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