アイヌの娘・アシリパは札幌ビール工場で宿敵たちと対峙するー「ゴールデンカムイ」25〜26

アイヌの娘「アシリパ」と日露戦争の生き残りで「不死身の杉元」と呼ばれた杉元佐一たちが、極東アジアを舞台に、幕末の新選組の生き残りの土方歳三や日露戦争で頭蓋骨の上半分を失った情報将校・鶴見中尉率いる第七師団を相手にアイヌ民族が明治政府打倒のために集めていた大量の金の争奪戦を繰り広げる明治のゴールドラッシュストーリー『野田サトル「ゴールデンカムイ」(ヤングジャンプコミックス)』の第25弾と第26弾。

前巻までで、シリアルキラー砂金掘りの「平太師匠」の残した「白金標本」をてがかりにして見つけた海賊房太郎を仲間に加えたアシリパたちが、札幌で刺青人皮の争奪戦に参戦。二人の囚人を巻き込みながら、札幌の連続殺人事件が解明されていくのがこの二巻です。

第25巻 札幌でアシリパは土方一派と手を結ぶ 

第25巻の構成は

第241話 消えたカムイ
第242話 交互に
第243話 上等兵たち
第244話 小樽上陸
第245話 再会の街
第246話 アイヌの偶像
第247話 決まり事
第248話 教会
第249話 それぞれの夢
第250話 打ち上げ花火

となっていて、アシリパ一行は札幌へ向かっています、札幌では、娼婦連続殺人事件の犯人と、顔に自作の刺青を施した脱獄囚の一人・上エ地が潜伏していて、彼らを第七師団と土方一派も追っている、という構図です。

この札幌行の途中で、海賊房太郎が支笏湖の湖底の金塊を積んでいた沈没船で見つけた「金貨」を白石に見せます。

それは「交互」「交差」を意味するアイヌの文様に似た模様が刻まれていて、おそらくアイヌの砂金を溶かしてつくったもの。巻の前半部分での「ホロケウカムイ(オオカミ)」は「消えてしまったカムイ」だと教えてくれたアシリパの父の思い出とか、当時の北海道の原野の木を根こそぎ倒す伐採方法とかのエピソードと合わせると、アシリパのアチャ(父)ウィルクの、極東の少数民族の連邦国家の建国理念や国家体制がおぼろげに見えてきますね。

巻の中盤では脱走囚人の一人「上エ地」が札幌で犯行を始めます。彼はほかのところでも少年の連続殺人を繰り返しているのですが、その動機は人のがっかりする顔を見たいとい欲求と昔の自分を思い出させる「男の子」を殺したいという欲求の混合で、彼もサイコパス的なシリアルキラーの典型ですね。

この現場をおさえたのが柔道王・牛山です。彼は上エ地を捕まえて投げ飛ばしてギタギタにし始めます。この騒ぎを見つけて集まってきた土方一派と杉元たちが出くわして・・ということで案の定、土方vs杉元のバトルが始まります。

激しいバトルが警察や第七師団の目を引くことを警戒した牛山や白石たちが二人を引き離すのですが、ここでアシリパが樺太で鶴見中尉に聞いたものと同様の質問「土方歳三が考える未来では、アイヌはどうなっているか」という質問をします。それに対する土方の

という回答に対するアシリパの返答は

というもの。どうやら、鶴見中尉の唱える中心に日本を据えた「大東亜共栄圏」より土方の「蝦夷共和国」のほうがアシリパによってはましな考えであったようです。
この土方と手を結んだことを使って、アシリパは彼の持っている刺青人皮を使って、樺太で気づいた暗号解読の鍵に従って、金塊の隠し場所の暗号を解こうとするのですが、うまくいきません。アシリパは暗号を解く鍵が父親の「隠し名」であると考えているのですが、それと符合しないものが出現しているのです。これは、鶴見中尉から奪った刺青人皮に「本物」が巧妙に混ぜられているためで、この意味で鶴見中尉の偽物を使った攪乱作戦は大成功です。

巻の後半では、娼婦連続殺人の現場をまわって手がかりを探している、土方一派の一員となった「新聞記者」石川啄木が、この連続殺人と三十年前にイギリス・ロンドンでおきた「切り裂きジャック事件」との類似性に気づきます。豊平川をテムズ川に、貧民窟にある教会を「セント・ボトルフ教会」に置き換え、殺人のおきた場所をポインティングすると次の犯行場所として「札幌麦酒工場」が浮かび上がってきて・・という筋立てです。

アシリパ+土方一派は、「札幌麦酒工場」で「札幌のジャック・ザ・リパー」と推測される外国人の脱走囚人「マイケル・オストログ」をつかまえるため、「罠」をしかけるのですが、ここに第七師団の宇佐美や孤独のスナイパー・尾形も集まってきて、という展開をしていきます。

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第26巻 「札幌ビール工場の戦い」決着。刺青人皮出揃う。

第26巻の構成は

第251話 札幌ビール工場
第252話 貯酒室
第253話 父の汚名
第254話 ウオラムコテ
第255話 切り裂き杉元
第256話 篤四郎さんの一番
第257話 がっかりした顔
第258話 重荷
第259話 故郷を作る
第260話 死守

となっていて、札幌で起きている連続娼婦殺人事件の犯人である刺青脱走囚人「マイケル・オストログ」を確保するため、土方一派や第七師団の宇佐美・鯉登が動きます。加えてアシリパを捕まえようと菊田特務曹長が脇から迫り、さらに、この集団を狙うスナイパー・尾形と彼を標的にするロシア人スナイパー「ズキンちゃん」と、金塊探しに絡む人間の殆どが参加してのバトルロイヤルが展開されます。

そして、連続娼婦殺人犯「マイケル・オストログ」と最終対決するのは菊田の手を逃れたアシリパです。このシリーズではロンドンで起きていたジャック・ザ・リパー事件の犯人が極東の端の日本まで逃れてきていた、という設定なのですが、彼が抱えていた出生のトラウマをアシリパが「制裁棒」で粉砕します。

ついでにいうとこのバトルロイヤルの中で、尾形と宇佐美の因縁の対決の決着がついているのですが、勝負の行方は原書のほうでどうぞ。もともとは宇佐美の「鶴見中尉のお気に入り」をめぐる嫉妬が発端で、尾形が彼を鶴見の「安い駒」と評したことから激化した争いだったのですが、宇佐美の「鶴見中尉リスペクト」は尾形が真正面から粉砕する流れになってます。

連続娼婦殺人犯の決着がついたところで、男児殺人魔・上エ地が登場します。彼は、もともと高級軍人の子供だったのですが出来が悪く強い劣等感を抱いていたのですが、父親の失望する顔を見るのに鬱屈した快感を得たのが、刺青を入れ始めた始まりです。そして、今回、金塊を探す第七師団、土方一派たち多くの人に失望させ、がっかりした顔をみるために彼の取った手段は、自分の体に彫られた金塊の在り処の手がかりとなる暗号を「読めなく」することだったのですが・・・という筋立てです。

ところが、上エ地の目論見に反して、刺青人皮24枚をすべて集めなくても暗号が解けることは全員が承知済みで、上エ地の刺青一枚が失われたところで大勢に影響は最小限にとどまるため、誰も彼の相手をまともにしようとはしません。失望し、足を滑らして落下する彼が見たものは、彼が待ち望んだ「がっかりする顔」、つまり自らの失望した顔で、というオチですね。

今巻の後半戦では、24枚目の刺青が意外な人物の背中に彫られていることが判明するとともに、刺青人皮24枚全てを集めなくても、金塊の暗号が解ける可能性があることがわかったため、暗号解読の「鍵」を知っているアシリパの争奪戦が激しくなります。燃え広がるビール工場の中に取り残されたアシリパの確保のため、第七師団だけでなく、手を結んでいた海賊房太郎も自らの野望を叶えるため、アシリパを奪取しようとして、鯉登や二階堂、月島たちと激しく争います。そして、勝負は第七師団有利に動き、とうとう、アシリパは鶴見中尉たち第七師団に確保されることとなり・・という展開です。

ちなみに、菊田特務曹長とスナイパー・尾形がビール工場の中で出くわすのですが、双方とも争うとことなくスルーしています。どうやらこの二人のバックは同じなのでは、という疑惑がますます広がりますねー。

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レビュアーから一言

ゴールデン・カムイの時代設定は「日露戦争」からすこし経った明治40年代と思われるのですが、今巻で切り裂きジャック模倣事件の犯人の4番目の犯行の舞台となる「札幌麦酒工場」は、明治9年に建設された「開拓使麦酒醸造所」がもとになっているのですが、建設当時、札幌の人口は3000人程度で、見渡す限りの荒野であったようなので、ここにビール工場を建設するには相当な勇気が必要だった思います。
この札幌麦酒工場をメイン工場にしていた札幌麦酒の会長が、2021年の大河ドラマの主人公となっている「渋沢栄一」ですね

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