法医学教室では「幽霊」を使って殺人事件を解決するー椹野道流「新装版 無明の闇 鬼籍通覧2」

大阪府にある医科大学の法医学教室を舞台に、茶髪で口と目の大きな、トトロを細くしたような女性医師・伏野ミチルと、ビジュアル系のロッカーのような風貌で怖がりの医学部の大学院生・伊丹崇、伊丹の小学校時代の同級生でガッチリした体型にセサミストリートの太い眉毛で大きな目のマペット似の風貌ながら動きのいい敏腕の刑事課の刑事・筧兼継をメインキャストに繰り広げられる法医学+ホラー・ミステリー「鬼籍通覧」の第2弾が本書『椹野道流「新装版 無明の闇 鬼籍通覧2」』です。

本書も2003年に出版されたノベルス版を時代にあわせたリライトを加えた新装版になってます。

あらすじと注目ポイント>ひき逃げ事件がミチルの過去のトラウマに結びつく

構成は

一章 ただ何となく
間奏 飯食う人々 その一
二章 図太くできてるわけじゃない
間奏 飯食う人々 その二
三章 幻の消えた先に
間奏 飯食う人々 その三
四章 呼び合う名前が
間奏 飯食う人々 その四
五章 夜はいつか明けるから

となっていて、今巻はまず、伊月やミチルの所属する法医学教室に、赤ん坊の突然死の検案が連続して持ち込まれるところから始まります。一件目の案件は、赤ちゃんをうつ伏せ寝させているうちにうたた寝してしまい、起きてみると亡くなっていたというもので、母親は自分が寝入ったことが悪かったと自責しているのですが、両親とも喫煙していたりといった周辺事情と解剖結果から「乳幼児突然死症候群」と診断し、両親の気持ちを鎮めるのですが、二件目は、同じように授乳中に母親が寝入ってしまい、起きたら赤ちゃんが死亡していたというものながら、全く別の結論になってしまい、伊丹くんが検死の残酷さに動揺する姿が描かれます。

今回の本命の事件は、68歳の男性が道路に倒れているところが発見された、というもの。一見するとひき逃げが疑われるのですが、道路にはブレーキ痕もないながら、被害者には轢かれたときの痕に生活反応もある、という状態。被害者がはねられた時の様子を見たという目撃者はいるのですが、8歳の女の子で、詳しいことになると、全く覚えていないという状況です。

で、法医学教室で、目撃者の様子を語る警察官が「アレは嘘ですわ、嘘」という発言をした途端、検死をしていたミチルが突然怒り始め、その警察官を殴り飛ばすという事態が起きます。たしかに、その警察官の目撃者を嘘つきと決めつける態度はよくないのですが、ミチルがそこまで怒り狂う原因は、というところが今回のストーリーのうち、ホラー系への入り口です。

少しネタバレしておくと、ミチルは幼少時に同級生が目の前で車に撥ねられ、しかも、その撥ねた犯人が車に乗せてつれていってしまい、後日、死体となった発見されたという経験をしていて、当時、事故の様子や犯人の特徴を警察にきちんと伝えることができなかった、というトラウマをかかえていることがわかります。当時も、警察官から「嘘つき」よばわりされたことが、今回、警察官を殴りつけた引金になったようですね。

さらに、ミチルが一人目の赤ん坊の検死解剖を行ったとき、大学病院の駐車場で、その同級生が亡くなくなったときと同じ服装をした女の子の姿を見た、というあたりから、本シリーズらしいミステリー+ホラーの傾向が強まってきます。

そして、ひき逃げ事件のほうは意外にあっさりと犯人が捕まります。大学の理学部講師をしている知能犯的な男で、車からアシがついたのですが、逮捕された後の自供で、今回のひき逃げだけでなく、21年前に女の子をひき逃げしていたことを告白します。
そのときは警察の捜査をくぐりぬけて捕まらなかった、と得意げにいうのですが、その事件というのが、ミチルの同級生のひき逃げ事件であることがわかるのですが、すでに時効が成立していて・・という筋立てです。
(現在では、殺人や強盗殺人のような場合は公訴時効が廃止されているのですが、執筆当時の2003年はまだ廃止される前でした)

駐車場で見た女の子が、当時ひき逃げされた同級生であることを確かめたミチルは、女の子を霊を犯人のもとへ連れていき、犯人に憑かせます。そして、法律では裁けなくなった犯人を罰するため、ミチルがとった手段は・・という展開です。この女の子の霊はミチルと伊月以外には見えていないのですが、どうやって幽霊の力で復讐を果たすかがキモになりますね。

新装版 無明の闇 鬼籍通覧 (講談社文庫)
凄惨な轢き逃げ遺体が運ばれ、解剖が始まった。唯一の目撃者は8歳の女の子。警察...

レビュアーの一言>夜、口笛は吹いてはいけない

ミチルが犯人に復讐するために、犯人に「留置場は静かで退屈だから、口笛でも吹けば気が紛れるだろう」とアドバイスするのですが、この仕掛けの根拠は19世紀イギリスの有名な怪奇小説作家であるM・R・ジェイムズの「おお君よ、口笛吹かばわれ行かん」となってます。この話は原典では、イギリスの聖堂騎士団の遺跡で古代の古い「笛」をみつけた大学教授が、夜中にその笛を吹いたことが原因で起きる怪異のことが書かれているので、少々、作者のアレンジが入ってるような気がします。この話は「消えた心臓/マグヌス伯爵」(光文社古典新訳文庫)に収録されているので興味のある方は読んでみてください。これ以外にも古き良き時代の怪奇小説が収録されていますよ。

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