アメリカ人留学生や、サブキャストによる外伝・化学探偵を楽しもうー「化学探偵 Mrキュリー」6~7

実験しか興味のない変わり者の天才科学者「沖野春彦」と四宮大学の庶務課の新米事務職員「七瀬麻衣」をメインキャストに、文系から理系まで幅広く学部を揃えた中堅私立大学・四宮大学の庶務課に持ち込まれる不思議な事件の謎を解いていく化学系コージーミステリー『喜多喜久「化学探偵 Mrキュリー」(中公文庫)』シリーズの第6弾と第7弾。

第6巻 天才アメリカ人少女の研究を沖野と舞衣が絶妙サポート

第6巻はシリーズ最初の長編となります。

物語は両親が亡くなって叔父の家に引き取られている「エリー」という名のアメリカ南部の

女の子が、日本から来た有機化学を専攻する大学院生・二見雄介と街角で偶然出会うエピソードの後、数年して、その女の子が四宮大学に短期留学生としてやってくるシーンに切り替わります。

エリーはまだ16歳なのですが、優秀なため、飛び級で進級して現在理学部の1年生という設定です。

さらに、日本語が全く話せないので、日常会話はスマホのアプリに頼らざるをえず、トラブルに巻き込まれる可能性も大きい、ということで、大学庶務課の好奇心娘・七瀬舞衣が、留学期間中の「お世話係」となったというわけ。

ところが、エリーの天性の方向音痴のために最初の空港での出迎えもすれ違いになったり、会話はアメリカ南部訛りがキツイという理由で翻訳アプリを介しての会話に限定したり、日墓の食事は、ケーキ+サプリという状況で、舞衣も「お世話」にかなり苦戦することとなります。

そして、彼女の留学中に取り組む課題が、今まで人工合成されたことのない「トーリタキセルA」という物質の合成に取り組むこと希望していて、これにはMrキュリーこと沖田晴彦が指導教官としてつくことになります。

この物質は、4年ほど前に四宮市の山中に自生する針葉樹から見つかった物質で、癌細胞を減衰させる効果があるということで人工合成が期待されている物質です。過去に、共同研究として東理大学の研究室が開発した新しい分析法でその分子構成をつきとめ、四宮大学の研究室で人工合成を試みたのですが、実権を担当していた「二見」という学生が最終段階で失敗してしまい、それ以後、研究記録も失われ、現在まで人工合成されてたことがない、という代物です。

その難物に挑むエリーは、所属するサンフランシスコ科学大学の主任教授が「天才」と評価するほどの優秀さで、人工合成に至る様々なハードルをクリアしていくのですが、先行事例の二見がしくじった同じ最終段階で、彼女も失敗してしまいます。失意の中にいるエリーを再び立ち上がらせるため、舞衣と沖野は、二見に彼からエリーに対するアドバイスを求めようとするのですが、トーリタキセルAの実験失敗で研究者としての道を諦めてしまった二見が行方をくらましてしまいます。

二見を探すと同時に、過去の失敗した実験をトレースしていく沖野は、過去の実験の基礎中の基礎のところに隠されていたある致命的な事実に気付くのですが、それは二見の実験の失敗がおきるべくして起きたことを示すもので・・という展開です。少しネタバレすると、功をあせった研究者の隠蔽と誤魔化しが若い研究者の未来を潰しそうになるのを、沖野が阻止、二見とエリーの研究者としての未来を守っていく話です。

ついでにいうと、エリーが南部なまりがキツイからといってスマホの翻訳アプリを意固地に使うにも、彼女が隠しておきたかった秘密がありますので、原書のほうでご確認ください。

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第7巻 サブキャストたちの絶妙推理の数々

第7巻のメインを務めるのは、今までこのシリーズに登場してきた、個性あふれるサブキャストたちです。

収録は

第〇話 夜の虹ー1996年のMrキュリー
第一話 みゅーたんと赤色の疑惑
第二話 国島聖也と橙色の謀略
第三話 仁川慎司と黄色の邪霊
第四話 猫柳課長と緑色の連鎖
第五話 美間坂剣也と水色の消失
第六話 氷上一司と青色の忘却
第七話 紫色の手紙ー2003年のMrキュリー

第一話の「ミュータンと赤色の疑惑」は太め好きの四宮大生・花隈の彼女の女子高生・みゅーたんが花隈の浮気疑惑を舞衣のところに持ちこんでくる話。最近、いままで断ったことのなデートも実験が忙しいと断ったり、キスマークを首筋につけていたり、と疑惑が募る一方だと訴えるのですが・・といった展開。

第二話の「国島聖也と橙色の謀略」は、舞衣や沖野が謎解きの決め手としていらいすることの多いサンプル分析の専門会社「分析技術研究所」の所長で、沖野の同窓の国島聖也が、四宮大学の薬学部の助教の保険金目当ての自宅放火のトリックを暴いていきます。

第三話の「仁川慎司と黄色の邪霊」は、七瀬舞衣を名誉顧問にすえるSOSこと四宮オカルトサークルの名誉部長・仁川慎司が、学業に専念する前の最後の調査と決めた山中の廃屋で発生する「邪霊の声」の謎に挑む話。ラジオや電話で聞き取れる不気味な声の正体を暴いてみれば、やけに科学的なトリックとわかるのですが、科学では気づかなかった、自分の恋心に遅れ馳せに気づく、理系青年の話でもあります。

第四話の「猫柳課長と緑色の連鎖」は舞衣の勤務する四宮大学庶務課の課長にして、四宮大学関係者のプライベート情報を密かに握っている猫柳課長が、キャンパスに住み着いている野良猫たちの集団体調不良の謎を解く話。

第五話の「美間坂剣也と水色の消失」は、舞衣の幼馴染で、ゲイであることを隠している売れっ子アイドル・美間坂剣也が、水素水を入れたお酒の水色の色が消えて、透明な液体になってしまった謎を解く話。ちゃらちゃらしているように見えて、実は、仕事のオファーも真面目に吟味する剣也くんの態度が凛々しいです。

第六話の「氷上一司と青色の忘却」は、沖野の先輩で、沖野を東理大学に復帰させようと熱心に画策している、若手の化学者・氷上教授が、偶然作られた「青色」の顔料となる物質の合成方法の再現を行う話。その物質は担当していた学生が、眠気を催して、実験台に突っ伏して寝てしまっている間に出来上がったもので、その学生もどうしたらその物質が出来上がったのか記憶喪失にかかっているように霧の中です。自治は、この学生の眠気と記憶喪失にはある原因があるのですが、それが、今回の製法解明のヒントになります。

最終話の「紫色の手紙ー2003年のMrキュリー」は、最初の第0話「夜の虹ー1996年のMrキュリー」とツインになっている話で、沖野が家庭教師をしていた男の子の純愛物語がビビットに描かれています。

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レビュアーの一言

今回のニ巻は、アメリカから留学してきた少女の研究+初恋物語であったり、七瀬舞衣や沖野晴彦といったメインキャスト以外の登場人物が中心となって推理を展開する物語であったりと、どちらかというとシリーズの外縁部に位置する「外伝」的な感じです。

こういう話が増えてくるとシリーズの厚みが増すのと、作者が予想していなかった登場人物が主役級になってくることがあって、私は好きですね。

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