総解説>キングダム34~35「成蟜反乱篇」=王弟・成蟜、再び反乱を起こす?=

中国の春秋戦国時代の末期、戦国七雄と呼ばれる七カ国同士の攻防が続く中、中華統一を目指す秦王「嬴政」と、戦争孤児の下僕から、天下一の大将軍を目指す「信」が、ともにその夢の実現を目指していく歴史大スペクタクル「キングダム」シリーズ34弾と第35弾を総解説します。

前巻で、趙の宰相・李牧が起死回生の策とした、「南道」を使っての咸陽攻撃を手前の小城「蕞」で食い止め、秦国が滅亡する危機を回避した「政」たちだったのですが、国の乗っ取りを企む呂不韋によって、王弟・成蟜の「反乱」がでっち上げられ、王族同士が争う内乱の危機が勃発します。

あらすじと注目ポイント>王弟・成蟜、再び反乱を起こす?

第34巻 羌瘣は仇討ちを果たし、飛信隊に復帰する。

第34巻の構成は

第361話 変ずる理由
第362話 対極の力
第363話 別の道
第364話 二つの目標
第365話 白老の言葉
第366話 戦後の各国
第367話 相国の肚
第368話 兄弟の今
第369話 企ての臭い
第370話 不穏な影
第371話 屯留の異変

となっていて、冒頭のところでは、前巻に引き続き、蚩尤となった幽連と羌瘣との戦闘が継続しています。

一族の儀式「祭」で実の妹を手にかけて唯一の勝利者「蚩尤」となりながら闇に落ちた幽連は感情を超越し、内部の力を無尽蔵に解放する「鬼神」のような強さを身につけていて羌瘣は彼女のボロボロに打ち負かされるのですが、瀕死の重傷を負う中で、信たち飛信隊での思い出を頼りに復活し、ある極意を見いだし始めます。

そして、羌象が羌瘣を殺すために編みだそうとしていた禁断の術「魄領の禁」を犯して放つ剣技で幽連を斃します。この「魄領の禁」で闇の底に沈んだ者の意識は再び浮上しないと言われていたのですが、信たちとの繋がりが彼女を闇の底から引き上げることとなります。

こうして幼馴染・象の仇を討った羌瘣は、再び飛信隊の副長として復帰。戦略と武術両方扱える彼女は飛信隊の中心となります。

場面は転じて、五カ国合従軍と秦との函谷関戦と「蕞」籠城戦で勝利者となった秦では、蒙驁将軍が老衰のため死去し、政の側室・向は彼の公女を出産しています。しかし、各国では戦後処理と戦の責任追及の嵐が吹き荒れていて、合従軍の総大将となった春申君は失脚、合従軍の実質的な司令官であった李牧は趙の宰相を罷免。前線の現場監督に降格されています。

もっとも、一番の嵐となりそうなのは、この合従軍戦で傍観者となっていた呂不韋の動向で、彼は私財を投じて多くの食客を抱え、「政」が成人となる一年後の「加冠の儀」に向けて、大きな陰謀を仕掛け始めています。

まず動きは秦の宿敵「趙」から始まります。李牧の失脚後、趙の政治は郭開という大臣が実権を握っていたのですが、彼の命令で趙軍二万が国境近くの屯留に向けて侵攻を開始します。

この時期、蒙武、王翦、桓騎といった主だった将軍は他方面へ出征中で、小粒の将軍しか咸陽には残っていません。ここで、政自らの出陣を勧める呂不韋に対し、王弟・成蟜が出陣を申し出ます。

これは呂不韋の王出陣の裏の意図と、成蟜の夫人・瑠衣が実家のある屯留に帰郷していたためなのですが、呂不韋の企みは「成蟜」を罠にはめることにあるような気がします。

3万の成蟜軍は、屯留城外で趙軍と戦うのでですが、趙軍はあっさりと退却。成蟜は到着後、わずか半日で屯留城内に入るのですが、城内で待っていた城主代行の蒲鶮が、彼に屯留を拠点に反乱を起こすようそそのかしてくるのですが・・・という展開です。

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第35巻 王弟の反乱、鎮圧。成蟜は妻・瑠衣を守り死す。

第35巻の構成は

第372話 討伐軍出陣
第373話 大いなる成長
第374話 屯留城攻城戦
第375話 脱獄
第376話 曲廊
第377話 剣と楯
第378話 正義
第379話 新たな要所
第380話 私情と戦略
第381話 古い人間
第382話 魏火龍

となっていて、 王弟・成蟜の反乱を鎮圧するため、将軍となっている「壁」が総大将となって三万の討伐軍を指揮して屯留へ向かいます。これほどの大軍を動かすのは、成蟜が謀略にはめられて反乱をおこしたことにされているのでは、という政の推測に基づく、成蟜救出も腹中に秘めた配備です。

反乱を起こした「屯留」城のほうは、城主代理の蒲鶮が、周辺の城邑の有力者を抱き込んで一大蜂起の動きに高め、7万もの兵力に増強しています。これに対し、3万の兵で向かう「壁」だったのですが、ここで撤退したはずの趙軍二万が現れ、「壁」の討伐軍を攻撃してきます。屯留側が趙と通じていたのがここで明らかになるわけですね。

趙軍の横からの攻撃に慌てた壁ですが、ここは飛信隊が援軍にかけつけ、反乱軍、趙軍とも兵を退却させます。

一方、屯留城内では、成蟜が地下牢に監禁されています。
この反乱を裏で操る呂不韋の狙いは、王弟の反乱という王族同士の内訌の印象を秦国内に植え付け、「蕞」籠城戦での政の功績に傷をつけ、さらに、派遣されてくる大王派を中心とする「壁」の討伐軍を壊滅させるつもりです。

加えてゲスなことに、蒲鶮は呂不韋から屯留城主にしてもらい、成蟜の妻の瑠衣を我がものにするということも考えているようです。

しかし、蒲鶮の計画も、反乱に引き込んだ龍羽将軍が城外での壁軍+飛信隊に敗れて、城内に帰ってきたことで狂い始め、攻め込む飛信隊の前に反乱兵は蹴散らされていきます。

そして最大の誤算は、ひ弱な王族のつもりだった成蟜が牢を脱け出し、同じように監禁されていた瑠衣を救い出していくことですね。ゲスな望みを抱く蒲鶮が成蟜の剣で成敗されるところはスカッとすること間違いなしです。

このシリーズの解釈では、成蟜は兄の「政」の中華統一の偉業に協力するつもりだったが、屯留で反乱者に仕立てられたということになっています。ただ、王宮内の成蟜派は、呂不韋に恨みをもつ妻の瑠衣がまとめ、秦王派につくことになるので、「秦王・政」の派閥に楔を打ちたい呂不韋にとっては失点といえるでしょう。蒲鶮のような私利私欲にまみれた人物に反乱を仕切らせたのが間違いといえば間違いだったように思います。

ちなみに、この蒲鶮の反乱で、屯留城内の軍吏は全て処刑されたのと、遠く離れた土地へ強制移住させられた城内の民が、一番災難だったかもしれません。

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なお、この35巻の後半では、秦が山陽地方を領有した後、秦の中華進出の魏の著雍攻略戦が始まるのですが、それについては次の記事でレビューしますね。

レビュアーの一言>趙一番の奸臣と言われた”郭開”とは

今回、呂不韋と共謀して、趙側で成蟜の反乱に協力する趙の大臣・郭開は、合従軍の敗戦の責を李牧に負わせて失脚させたほか、後に政が趙へ侵攻したときに、趙の幽繆王に讒言して離反させたり、廉頗が趙を出奔した後も、その帰参を邪魔したりして、「趙を傾けた奸臣」として有名な人ですね。

見方によっては、こうした人物を排除して、国政に関わらせないようにできたことが秦が中原を統一できた理由かもしれません。

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