【総解説】キングダム54〜56「趙「鄴」城攻略戦」その4=楊端和は、橑陽で犬戎王の圧政を降す

中国の春秋戦国時代の末期、戦国七雄と呼ばれる七カ国同士の攻防が続く中、中華統一を目指す秦王「嬴政」と、戦争孤児の下僕から、天下一の大将軍を目指す「信」が、ともにその夢の実現を目指していく歴史大スペクタクル「キングダム」シリーズ第54弾~第56弾を総解説します。

前巻で楊端和たち山の民軍によって橑陽城を征服した秦軍だったのですが、いよいよ朱海平原での趙との最終対決が始まります。さらに、「鄴」城でも包囲を続ける桓騎が、城を中から崩壊する策を講じ始めます。

第54巻 王賁は堯雲により重傷を負う。信は秦右翼軍を率いる

構成は

第581話 見える景色
第582話 最後の夜
第583話 十三日目
第584話 数十騎
第585話 雷獄
第586話 ニ突きの勝負
第587話 祈るのみ
第588話 疎くの本営
第589話 夜の出来事
第590話 攻め偏重
第591話 三大天の盾

となっていて覚醒した「飛信隊」「玉鳳隊」が趙左翼軍を圧倒し退却をさせることで、王翦軍の中央軍が出陣、ここでやっと中央軍同士が激突するお膳立てが整います。

そして朱海平原戦の十三日目に入り、今回も秦右翼軍と趙左翼軍との戦いで幕を開け、尭雲軍と飛信隊がぶつかりあうのですが、ここで暁雲と彼直下の雷雲騎兵団が飛信隊の前から姿を消します。彼らの狙いは秦右翼軍の最右翼にいる玉鳳隊の王賁。

乱戦となっているところを巧妙にすり抜け、気配を消して玉鳳隊に近づき、陣の横から攻撃を開始します。攻撃の主体は尭雲本人と彼の親衛隊となる雷雲十槍で、次々の王賁の護衛を屠っていくなか、王賁は果敢に暁雲へと肉薄し、逆襲を図ります。

なんとか暁雲の右腕を粉砕するのですが、ここで力尽き、尭雲によって地面に叩きつけられ、王賁は瀕死の重傷を負ってしまいます。

亜光将軍も王賁の重傷を負い、戦闘不能になった秦右翼軍はここで飛信隊が右翼軍の中心となり、信が軍を統率するという乱暴なことを選択します。ただ、王翦将軍は想定内であったようですね。

一方、桓騎が囲む「鄴」城内では奇妙なことが起きています。それは、城内に逃げ込んだ住民のうち怪我をして動けなくなっていた者がいつの間にか別人に変わっていた、というものです。ちょっとした怪奇譚なのですが、実はこれが王翦将軍があらかじめ忍ばせておいた「仕掛け」で、この変わっていた者は秦軍のスパイ。彼らが一斉に動いて、「鄴」城内の食料備蓄倉庫を焼き討ちし、「鄴」の兵糧は一挙に枯渇していきます。

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第55巻 信によって藺相如の遺臣・趙我龍斃れる

構成は

第592話 死に場所
第593話 趙峩龍本陣
第594話 楔
第595話 最高の隊
第596話 趙峩龍を討て
第597話 武運を
第598話 紡ぐ者
第599話 右翼の風向き
第600話 十四日目の夜
第601話 決着の日
第602話 李牧の陣形

となっていて朱海平原戦の十四日目。この日も秦右翼軍と趙左翼軍の激突から始まりまるのですが、主将2人を欠き、食料もそこを尽き始めた秦右翼軍は捨て身の戦いで、趙左翼軍の頭脳というべき「趙我龍」の首を狙って突撃していきます。

ここで、歩兵を統べる松左は、河了貂から潰れそうな部隊は見捨てるようにという指令をうけているのですが、新兵たちが趙軍のやられそうになっているのを見て、思わず救援に駆けつけます。しかし、これが裏目にでて、松左は瀕死の重傷を負ったほか、趙我龍の策にかかり、趙我龍の精鋭部隊「土雀」部隊に包囲され押し潰されそうになっていきます。

この危機を救ったのが羌瘣で、彼女は信を取り囲んでいる「土雀」部隊のど真ん中に飛び込み、内部から切り崩しを始めていきます。

この捨て身の攻撃で「土雀」の包囲陣は崩壊、趙我龍は一旦、森の中に逃れるのですが、信が追撃し、一騎打ちが始まります。

追い詰められた趙我龍ですが、彼の脳裏に去来しているのは十数年前に病死した主君・藺相如の「いつの日か、中華統一の剣を手にする敵と出会った時は」

という言葉です。今、中原統一という夢を抱いた秦王・政の「剣」として現れた「信」に向かって趙我龍は渾身の力を込めて矛をふるうのですが・・という展開です。信は、この趙我龍戦で大きなアドバンテージを秦軍にもたらすことになります。

しかし、信の活躍に引き寄せられたのか、信に一太刀をあびせられてから山に籠もっていたあの武神「龐煖」がこの朱海平原の戦場に現れます。蒙恬軍の野営場に現れ、そこにいた小隊を全滅させ、また姿を消すのですが、次巻以降で信との最終決着がありそうです。

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第56巻 信は堯雲を斃し、李牧軍を挟撃する

構成は

第603話 十五日目の異変
第604話 李牧の戦術
第605話 王翦の読み
第606話 起こり
第607話 総大将の対話
第608話 中央軍の勝ち目
第609話 中華のうねり
第610話 藺相如の助言
第611話 王翦の分
第612話 答えを持つ者
第613話 必勝戦略

となっていて王翦軍と李牧軍の最終決着をつける第十五日目となり、双方の中央軍がぶつかり合うのですが、李牧は「守り」の構えに徹しています。

というのも、彼は「鄴」の食糧にまだ余裕があると思っていて、守りを固め長期戦に持ち込むことで、秦軍を兵糧不足で自壊させようと考えていたのですが、ここでかれの計画をぶち壊す、「鄴」の食糧庫焼失という知らせが届きます。このため、早期に王翦軍を退け、「鄴」救援に回る必要が生じ、否応なしに、李牧も「攻め」の陣形へと変えざるをえなります。

ただ、この李牧の「攻め」は、単純な攻撃ではなく、相手軍が動こうとする兆しを察知し、それに素早く返しの攻撃で対処する「起こり」の攻撃が全軍に行き渡っていて、秦軍の攻撃は全て封じられてしまいます。

この李牧の攻め方をわずかな間に見抜いた王翦は、戦術を使わない戦い方で趙軍を崩し、超軍が攻めに転じると、これに合わせて撃退するという戦法に転じます。

さらに、王翦軍を無理やり左にいた秦の田里弥軍と合流し、後方にいた秦の倉央軍も合流させ、戦いながら攻めに転じる「赤大鶴の陣」を組み上げていきます。そして、陣が組み上がろうかというとき、王翦は陣の一番前に進み出て、こちらも前へ出てきた李牧と向かい合って対談を始めます。

そこで、王翦が李牧に告げたのは

という想定外の言葉で、このあたりは王翦という人物の複雑さを現していますね。もちろん李牧は拒否し、趙に殉じることを告げるところは、彼もブレていない証拠です。

ここで秦右翼vs趙左翼の戦いは、王賁と尭雲の一騎打ちの場面を迎えています。尭雲は「中華統一」か「乱立継続」か、主人の藺相如から預かってきた問を王賁にぶつけ、王賁を斃そうと矛を振るうのですが、王賁の槍の突きが一瞬早く、という展開です。

暁雲を斃し、趙の左翼を崩した秦右翼軍は、余力の残っている飛信隊を中心に中央の李牧軍へと向かいます。途中、伏兵と治して潜んでいる金毛軍を亜花錦の援軍でかわし、李牧本軍の横っ腹に攻めかかります。

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レビュアーの一言>藺相如の二つ目の遺言は?

「信」に斃された趙我龍は旧主・藺相如から遺された第一の言葉として、「中華統一の剣を手にする敵に出会った時は、全てをかけてそいつを倒せ」という言葉を信に投げかけたのですが、同じく「信」と「王賁」の前に斃れた堯雲は、その第二の言葉として「本当に中華を一つにする刃になろう」と願うのなら

というものを伝えます。藺相如の時代は廉頗や趙奢といった時代を代表する武将にも恵まれ、秦とも対等に戦えていた時代だったので、こうした「天下」についての思いも巡らすことができたのかもしれませんが、史実では白起に大敗し、趙兵40万が坑殺された長平の戦い以後、国勢が衰えていくことになります。

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