大倉崇裕「死神さん」=無罪事件の陰には全く別の暗い真相があった

検察庁のHPによると、令和元年の刑法犯の検挙件数は29万5千件ぐらい。そのうち8万人ちょっとが裁判にかけられているのですが、日本の有罪率は99.9%と無罪となるケースはかなり少ないのが現状なのですが、しかし、数は少なくても、冤罪で無罪になるケースは存在しています。

そんな一旦、裁判で無罪判決が出てしまった事件を再捜査し、真犯人をつきとめる専従捜査を行う警察官・通称「死神」刑事の活躍を描くのが本書『大倉崇裕「死神さん」(幻冬社文庫)』です。

あらすじと注目ポイント>無罪事件の陰には全く別の暗い真相があった

物語の主人公となるのは、警視庁の所属ではあるのですが、所属部署も連絡先も一切不明な「儀堂堅忍」という警部補。彼が「逃げ得は許さない」という言葉をモットーに、裁判で無罪となった事件を担当していた警察官のうちの一人を相棒に指名して、事件を管轄していた警察署の一室(たいていは荷物置き場になっている倉庫か会議室)を臨時に借りて、そこを根城に再捜査を繰り広げていく筋立てです。

収録は

「死神の目」
「死神の手」
「死神の顔」
「死神の背中」

となっていて、第一話目の「死神の目」の被害者となるのは星乃洋太郎という一人暮らしの資産家が刺殺されていたのが発見されたというもの。当時、被害者の家から銀行からもってきさせた500万円のお金が紛失しているのですが、事件の才一発見者であり被害者の甥が借金をしていた街金へキャッシュで借金を返済していることろから容疑者として逮捕されたのですが、一年後に無罪が言い渡されたという次第です。

儀堂は、当時事件を捜査していた屈強な警察官・大邊と、借金を返済した街金や、容疑者であった星乃礼人の妹・佐智子の再聞き取りを始めるのですが、佐智子の夫は、以前事業に失敗して大借金を負っていたのですが、伯父の死亡後、妻の遺産できれいに返済。今は再び起業しようかと計画中といった疑えばきりのない状況です。そして、ここで、釈放された星乃礼人の行方がわからなくなって・・・という展開です。

少しネタバレをしておくと、星乃家に銀行から500万の現金が届けられたのを知っている人物は誰?といったところですね。

第二話目の「死神の手」の無罪となった事件は、波多野一という男性が自宅近くの道で彼が友人から借りていた車を盗まれ、その車によってひき逃げにあい死亡。当初は車窃盗とひき逃げ事犯と思われていたのですが、被害者と離婚寸前だった妻が容疑者として逮捕起訴されたのですが、無罪となったというもの。

犯行に決め手となったのは現場にブレーキ痕がなかったのと、現場に乗り捨てられた車のタイヤの下か妻の結婚指輪が見つかったということ。

今回は起訴の決め手となった証拠に事件の真相が隠されていて、ネタバレ的には事件の被害者は、本物だったのか、というあたりです。

第三話目で、儀堂の相棒となるのは、練習では強さを発揮するのですが、本番の柔道の試合ではからっきしで、「宝の持ち腐れ」と言われている榎田悟という、今は奥多摩の駐在所に勤務する巡査です。この事件では、被害者の高校生の周りにした男性2人、女性1人が容疑者の痴漢行為に気付いて、声をあげて捕まえたというもので、容疑者が元ボクサーで前科もあったのですが、おとなしく捕縛されたのが不思議な事件です。

そして、裁判のほうは、こうした冤罪事件を多く扱っている有名弁護士が介入して、無罪を勝ち取ったのですが、儀堂はその事件が起きた時、近くには黒っぽい服装な小柄な男がいたことを不審がり・・という展開です、

そして、今回の相棒は、捜査の最終番で自分の力の目覚めることに成功します。

第四話目の事件は二十五年前の事件です。当時、カルト宗教の教祖的なことをやっていた人物の息子が誘拐されて身代金が請求されます。身代金の受け渡し方法は、父親に金の入ったバッグを持たせて、マラソンをさせ、疲労して蹲っているところを奪われてしまいます。亡くなった被害者はいないのですが、金はそれっきり返らず、犯人も捕まらなかったという事件です。

今回の相棒は、この事件の捜査員をしていた既に定年退職した警察官なのですが、被害者の教祖とは、教祖の子供(誘拐された子供)のイジメを巡って当時対立していて、容疑者の疑いもあって事件捜査から外されたという経緯があります。

彼は現在、認知症となった妻の介護をしながら生活しているのですが。儀堂との再捜査の過程で当時、事件現場で嗅いだ「白檀」の香りと自分の家の香りが類似していることに気付き・・という展開です、

Amazon.co.jp: 死神さん (幻冬舎文庫) 電子書籍: 大倉崇裕: Kindleストア
Amazon.co.jp: 死神さん (幻冬舎文庫) 電子書籍: 大倉崇裕: Kindleストア

レビュアーの一言>「死神刑事」とかかわると本当に「不幸」になるの?

今巻の主人公となる「儀堂堅忍」は、別名「死神」と呼ばれています。それは、彼の再捜査が、その無罪事件をはじめに捜査した捜査陣の無能と失策をあばき、触れてほしくない古傷をほじくり返すため、「相棒」に抜擢された警察官が組織からはじき出され不幸な目にあうから、と言われているからなのですが、この四話を通じてみると、あながち「不幸」ともいえない事態となってます。
むしろ、組織の縛りから解放されて「清々」しているという感じがなきにしもあらずです。

2021.09.30現在、この死神さんは、田中圭さんの主演で、Huluのオリジナルドラマとして放映もされてるのですが、彼の「怪しい」演技に加え、そのあたりもしっかりチェックしてみてはいかがでしょうか。

Hulu についてはこちらの記事にまとめています。

【VOD(動画配信)】Huluの特徴とおすすめポイント
Huluとは?Huluはもともとアメリカの定額動画配信サービスで、日本では2011年からサービス開始、2014年からは日本テレビ傘下のHJホールディングスが、承継して事業を展開している動画配信サービスです。このため、日本とアメリカではサービ

コメント

タイトルとURLをコピーしました