東野圭吾「マスカレード」シリーズ=ホテル客の仮面をかぶる真犯人を見つけ出せ

宿泊客が様々な「仮面」をつけたままで宿泊し、その様々な思いが交錯するシティホテル「コルネシア東京」を舞台に、そのホテルに現れる殺人事件の犯人を確保するため、潜入捜査として、ホテルマンとしてふるまいながら犯人を捜す刑事と、その刑事の犯人捜しのアシストをしながらも、ホテルの誇りと矜持を守るホテルウーマンの活躍を描くのが『東野圭吾「マスカレード」シリーズ』の三作です。

「マスカレード・ホテル」のあらすじと注目ポイント

シリーズ第一作目となる「マスカレード・ホテル」は、都内でおきる連続殺人事件の4番目の事件が都内にあるシティホテル「コルテシア東京」でおこるという推理のもとで、警視庁の捜査一課の捜査員たちがホテルの従業員として潜入捜査をするのですが、そのうちの一人、フロントクラークのホテルマンになりすます「新田浩介」とホテルのフロントクラークを担当する「山岸尚美」との「バチバチ」した出会いから始まります。

実は、第1の事件から第3の事件の現場にそれぞれ「45.761871」「143.803944」、「45.648055」「149.850829」、「45.678738」「157.788585」という数字が書かれたメモが残っていて、この数字から事件がおきた月日の数字を差し引いたものが次の事件の起きた場所の緯度・経度となっていて、今回三番目のメモから、このホテルが4番目の犯行現場と推理された、という理由です。

不特定多数が出入りするホテルのため、誰がつぎのターゲットとなるかは全くわからない状況のため、警視庁はホテルに捜査員を24時間潜入させ、監視して犯人を確保しようと狙ったわけですね。

しかし、ホテルマンと警察官という全く性質の職業で、しかも、下手な対応があれば即座にホテルの評判と警察の威信にかかわる方法で、いたるところで、新田と尚美は衝突するのですが、そこに、ホテルならではの様々なトラブル案件がおきたり、面倒な客が登場してきます。果たして、このホテルで起きるという推理は正しいのか、そして狙われている人物は誰なのか、さらには、犯行現場を予告してきた犯人の狙いは・・といった筋立てです。

ホテルでおきる面倒事は多彩で、禁煙の室内で自分で煙草に火を点けて部屋の格上げを狙う客やそのホテルで行われる結婚式の新婦を狙うストーカーが現れたり、自分につきまとっている男性の写真を示して、その男性が現れたら絶対に自分の側に近づけてくれるなという女性客の本当の狙いが錯綜していきます。

さらには、新田刑事に個人的な恨みを抱えている様子の男性客が執拗に新田にクレームや無理難題をふっかけてくる事態も発生して、神経をすり減らすばかりなのですが、なかなか犯人へは行き着きません。

そんな折、尚美から聞いた「不倫カップルの偽装方法」から新田は、今回の事件の真犯人について大きなヒントをもらいます。そして、彼が推理した犯人が殺そうとしている相手は「客」ではなくて・・といった展開です。

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「マスカレード・イブ」のあらすじと注目ポイント

シリーズ二作目の「マスカレード・イブ」は第一作の「マスカレード・ホテル」の登場人物である山岸尚美と新田浩介が出会う以前の前日譚を集めた短編集です。

収録は

「それぞれの仮面」
「ルーキー登場」
「仮面と覆面」
「マスカレード・イブ」
エピローグ

となっていて、第一話目の「それぞれの仮面」は入社4年目の頃の山岸尚美の話です。彼女の大学生時代の元恋人が尚美の勤める「ホテルコルネシア東京」に宿泊をしてきます。彼は大学卒業後、ゼネコンに就職していたのですが、会社が倒産。そのため、尚美との仲も自然解消してしまっていたのですが、その後、プロレスラーのマネージャーになっていたのが今回の宿泊でわかります。彼は夜10時過ぎに、尚美の助けが必要だと電話をかけてきて、部屋をきてほしいと頼み込んできます。尚美が部屋に行くと、彼は「不倫相手が消えてしまった」と言い、その女性を探してほしいと頼んでくるのですが、彼女がいたのはホテル内の意外な場所です・・・。

実は、不倫相手の女性の本当の不倫相手は尚美の元恋人とは別の人物なのですが、彼女が姿を消したわけにも隠していた別のわけがあって・・という展開です。

尚美が女性の行き先を突き止めるやり方には、ホテルマンのスキルが存分に発揮されています。

第二話の「ルーキー登場」は警視庁の捜査一課に配属されたばかりの新田刑事の話です。彼は、ホワイトデーにおきた美人料理研究家・田代美千代の夫殺しの事件の捜査チームの一員となっています。その事件はホワイトデーの深夜、江東区永代の建設工事現場内で背中と腹部を刺されて死亡していたというものです。

捜査をすすめるうちに、美千代の料理教室に熱心に通ってきている生徒の一人が、美千代に好意を抱いていて、さらに美千代が夫から虐待されていると信じこんでいるのがわかり、彼が刺殺犯であると判明するのですが、実はその陰にある企みが隠れていて・・という展開です。

第三話の「仮面と覆面」は再び尚美の話に戻ります。フロントクラークをしている尚美は、宿泊予約をしているオタクっぽい5人組から、コルネシア東京に、新鋭の人気小説家・タチバナサクラ」はが「缶詰」になって執筆しているのではないか、と執拗に聞かれます。この小説家は、半年前に新人賞を獲って華々しいデビューをした27歳の女性小説家で、最近、ネットに流れた本人と思われる画像がすごい美人と評判になっているという設定です。。

しかし、「玉村薫」という名前でホテルを予約した「タチバナサクラ」として実際に現れたのは、さえない中年男です。この予約をいれた出版社の担当に確認すると、タチバナサクラは実は女性ではなく、この中年男性のペンネームで、イメージが悪くならないように素性を隠していた、ということのようです。尚美は、熱狂的なオタクファンから、彼女(彼)を隠すため様々な手を打つのですが、出版社の社員を騙ったファンの突撃で、サクラの泊っている部屋に電話をかけられてしまいます。そのファンは、サクラの肉声の録音に成功するのですが、そこには若い女性の声がはいっていて・・という展開です。

ドンデン返しの上にドンデン返しが設定されているので要注意です。

最終話の「マスカレード・イブ」では、オープンしたてのコルネシア大阪のヘルプにやってきている尚美と八王子で起きた事件の捜査に動員されている新田とのニアミスがおきます。

事件のほうは八王子にある大学の研究室で、そこの教授が殺されているのが発見されるというものなのですが、その有力な容疑者とされる准教授が犯行のあった日、大阪で開かれていた学会に出席していた、というアリバイがあるのですが、そのアリバイ崩しのため、新田のサブパートナーの女性刑事が、准教授の宿泊していた「コルネシア大阪」に裏どりにやってくるのですが、そこで尚美は内緒でアリバイ崩しの重大なヒントを女性刑事に告げるのですが・・という展開です。

そして最後の「エピローグ」のところでは「マスカレード・ホテル」につながる重要な「ミッシングリンク」が出てきますのでお見逃しなきように。

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「マスカレードナイト」のあらすじと注目ポイント

シリーズ三作目の「マスカレードナイト」は「マスカレードホテル」の事件が起きてから数年後、東京の練馬にあるワンルームマンションで、トリマーをしている若い女性が殺された事件の犯人が12月31日に、コルネシア東京で開かれるカウントダウン・パーティーに現れるという投書が届いたことから、再び、コルネシア東京での「潜入捜査」が始まります。

新田浩介は先回の経験を買われてフロントデスク業務に潜入するのですが、先回の相棒だった山岸尚美はコンシェルジェに異動している上に、彼女の後任の「氏家」は、警察捜査にホテルが巻き込まれるのを嫌っていて、新田にはお客の接待を禁じてくる、というアウエー状態での潜入捜査となります。

さらに、この殺人の方法は、睡眠薬で眠らした上で、裸の胸と背中に電極をつけて、心臓に通電させて殺すというもののうえ、被害者の部屋からは地味な被害者が身に付けるはずもない「ゴスロリ」の衣装が大量に発見されるという、かなりマニアックな事件設定となっています。加えて、このカウントダウンパーティーというのが、出席者は全員、仮装して参加するパーティーで、と二重三重に犯人検挙が難しい仕掛けなのですが・・という筋立てですね。

今巻でのホテル内のトラブルや突発イベントは、新田がフロントクラークとしての仕事を禁じられているため、尚美がコンシェルジェとして受ける、宿泊客からの「無理難題」を軸に展開していきます。

ただ、その無理難題というのもお金持ちの男性のレストランでのプロポーズの企画を依頼されたところに、その相手の女性から、こっそりとプロポーズを男性が傷つかない形で断るイベントの上乗せであったり、すでに死んでしまっている恋人と食べるはずだったウエディングケーキのレプリカづくりであったりしますし、宿泊客も、視覚障がい者と偽って宿泊し、ホテルの障がい者向けのサービスをチェックする女性客や家族連れの宿泊客のところへ突然現れ、別の部屋に宿泊する、その家族客の旦那の浮気相手といった多彩なお客が出現してきます。

そして、このいくつかが結びついたところで、カウントダウンパーティー当日の犯人捜しへと展開していくのですが、シリーズ一作目と同様、尚美が再び危機に陥ることになります。

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レビュアーの一言

このシリーズは第一作「マスカレードホテル」と第三作「マスカレード・ナイト」が新田浩介役を木村拓哉さん、山岸尚美役を長澤まさみさんという豪華キャストで映画化されています。
第一作は多くのVODサイトで提供されていますし、第三作も一作目にひけをとらない名作だという評判です。木村拓哉、長澤まさみファンだけでなく、東野圭吾ファンにもおススメです。

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