内藤了「首洗い滝 よろず建物因縁帳」=因縁の滝に隠された怪異の謎を浄化せよ

広告代理店に勤務するバリキャリ・ギャルながら、怪異を呼び寄せてしまう「審神者」の才能もあわせもつ高沢春菜が、仙龍の号を持つ曳き屋師にして、古来から伝わる隠温羅流の導師である鐘鋳建設の経営者の守屋大地、守屋の会社の従業員で軽薄そのものの風貌ながら文化人類学の専門家・祟道浩一、廃寺三途寺の生臭住職・加藤雷助と、建物や山河に依った怪異を封じ浄めていく「よろず建物因縁帳」シリーズの第2弾が本書『内藤了「首洗い滝 よろず建物因縁帳」(講談社タイガ文庫)』です。

あらすじと注目ポイント>因縁の滝に隠された怪異の謎を浄化せよ

構成は

プロローグ
其の一 姥捨山登山道整備事業
其の二 首洗い池因縁譚
其の三 大宝寺三重塔普請のこと
其の四 眞白滝洞観音霊験記
其の五 白絹一反・紅一匁
エピローグ

となっていて、今巻の怪異は、信濃の山中の雨木村近くにある滝でおきます。宮司が亡くなって無人となってしまった神社の裏道を抜けたところにある滝を、シャワークライミングの観光地とするため、下見にきているインストラクターが、この滝に登ろうとして、子守歌を歌う女の妖異によって転落し、顔面の皮をはぎとられる事故がおきるところから始まります。

事故の起きた滝には、落ち武者狩りの伝説のあるところで、戦から逃れてきた落ち武者を毒殺した後、狩った首を洗ったのがその「首洗い滝」という伝承が残っています。ところが、その滝の所在は国土地理院の地図にも載せられておらず、さらに首洗い滝と近くの八角神社周辺は昔は「眞白村」という名前だったのですが江戸中期までその存在自体が秘匿されていたといういわくつきのところですね。

主人公である春菜は、同じ会社の上司と登山道整備事業の現地調査に来ていて、この事故に遭遇する、という設定なのですが、この事故の被害者の救出騒ぎで上司が体調を崩して寝込んでしまい、単独での入山調査が難しいため、彼女は、第一巻で知り合いになった民俗学者小林元教授に同行を依頼します。
この小林教授が鐘鋳建設の曳き師・仙龍に連絡をとったことから、第一巻に引き続いて、この滝でのチーム活動が始まることとなるのですが、この神社で、神主が代々灯し続けていた「幽世の火」が灯されていた石灯籠には、隠温羅流の刻印が残っていたり、事故死を報道するTVニュースの現場映像のなかに、クライマーの顔が浮かび上がって映っているなど、すでにチームの活躍場面は整えられているようです。

そして、不審な事故死はこのインストラクターだけにはとどまりません。同じ日に村の老人が一人行方不明になり、数日して顔の皮が接がれた状態で「首洗い滝」の浮かんでいるのを、神社の宮司の息子・志水辰巳が見つけます。
この息子は村を離れて都会に就職しているのですが、首洗い滝に宮司の一族以外の村人が近づくと「取られ」てしまう言い伝えがあるため、老人の捜索と死体の引き上げに急遽呼び戻された、というわけですが、遺体をひきあげるときに、滝のなかに、老人の顔をした「観音」像が見えるなど、滝での怪異現象は続いていきます。

そして、その怪異のもとを就く止めるため、雷助和尚の提案で、春菜や仙龍、コーイチは滝の近くでキャンプをすることになるのですが、そこで見たのは・・といった展開です。
ここでも出現する「観音」の姿や、「ひょうず・・ひょうず・・」と聞こえる鵺や「おっかあ」と聞こえる雉の鳴き声が、怪異の真相へとつながるヒントになります。

そしてこの後、村には、落ち武者を毒殺する伝説のほかに、村内にある大宝寺という寺が今は国宝となっている三重塔の修復工事をしたときに「鈴木兵頭」という宮師(彫刻師)に観音菩薩の造仏を依頼したという記録が残っているのがわかるのですが、滝の側の八角神社の宝物殿に残されていた須弥壇の中から40㎝ぐらいの大きさの観音像の試作品が発見されます。どうやら本体は滝の裏側にある洞穴に安置されているらしく、仙龍が怪異を鎮めるためそこへと向かうのですが・・と展開していきます。

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レビュアーの一言

落ち武者狩りの首を洗った滝とか、江戸中期まで存在を隠されていた村といったアイテムが多く出てくるので、戦国時代由来の怪異に結びついていくものと思っていたのですが、結末は違う方向にいってしまい、管理人の予測は大幅に外れてしまいました。
とはいうものの、山中の「滝」という絶好の場所を舞台にして「怪異」色満載の怪異ミステリーに仕上がっていますので、ホラーファンもミステリーファンも十分楽しめる作品に仕上がっていると思います。

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