内藤了「犬神の杜 よろず建物因縁帳」=山に封じられた「犬神」が春菜を襲う

広告代理店に勤務するバリキャリ・ギャルながら、怪異を呼び寄せてしまう「審神者」の才能もあわせもつ高沢春菜が、仙龍の号を持つ曳き屋師にして、古来から伝わる隠温羅流の導師である鐘鋳建設の経営者の守屋大地、守屋の会社の従業員で軽薄そのものの風貌ながら文化人類学の専門家・祟道浩一、廃寺三途寺の生臭住職・加藤雷助と、建物や山河に依った怪異を封じ浄めていく「よろず建物因縁帳」シリーズの第4弾が本書『内藤了「犬神の杜 よろず建物因縁帳」(講談社タイガ文庫)』です。

前巻では、旧家の座敷牢に封じられていた娘の怨念を祓った春菜・仙龍チームだったのですが、今巻では、信州の深山の山に封じ込められた「犬神」の呪を祓うために、「山」そのものを曳くという大物曳きに挑みます。

あらすじと注目ポイント

構成は

プロローグ
其の一 嘉見帰来山風切トンネル建設工事
其の二 風切りトンネル現場事務所
其の三 神人の山
其の四 犬神の杜
其の五 狗場杜の謂れ
其の六 狗墓を曳く
エピローグ

となっていて、今回、春菜は派遣社員として、トンネルの掘削工事をしている現場事務所へ出向社員として派遣になります。名目上は、そのトンネルの完成後に併設されるポケットパークの受注のためなのですが、実はその現場で、事務職と食堂の賄い係をしている二人の女性が不審死を遂げていることと、地鎮祭の時に供えた「鯛」がいつの間には腐っていたという変事がおきていて、今までの春菜の蒼具村や首洗い滝などの実績から、現場に何か「障り」がないか調べてほしいという依頼です。

鐘鋳建設の仙龍やコーイチからは、「サニワ」だと言われている春菜なのですが、当人は全くそうした怪異を信じない性質なので断ろうと思ったのですが、ポケットパークの受注に釣られて了解してしまった、という経緯です。この結果、一週間の間、本来の広告代理店ではなく、トンネル工事の現場事務所に通って仕事をすることになります。

派遣先の現場事務所のほうは、掘削現場の近くに仮設の事務所をつくったものなのですが、人里離れた現場の特徴で、朝食から夕食まで無料・食べ放題の食堂があるのですが、そこの食堂ではご飯に味噌汁をかけて食べてはいけない、と注意をされます。最初は「汁かけ飯」のような行儀の悪いことはしてはいけない、ということかと思ったのですが、味噌汁のご飯をいれるのは大丈夫とのことです。妙な飯場のしきたりなのですが、この意味は中ほどになって明らかになってきます。

さらに初出勤の時に、現場で目つきの悪い作業員に出会った後、笠島朔子という女性からレクチャーをうけるのですが、近くで真っ黒な犬をみかけるのですが、ここも今巻の謎解きの重要な鍵となってます。加えて、春菜が自席やロッカーで見つける、痩せて手足の長い鬼が彫られた木札も重要なヒントになっていきますいので覚えておいてくださいね。

春菜が調べるよう頼まれた事故にあった二人は、黒くて大きな毛の長い犬を見たといっていたのですが、一人は結婚間近で、一人は子供ができて「リア充」であったことがわかります。さらに、この地は「犬神」の伝承がある土地で、数十年前には、一帯が焼け落ちる大きな山火事がおきているのですが、その時に、集落の村長(むらおさ)の役目をしていた一家が焼死しているのですが、その火事にあわせるかのように、町へでていた子供たちも帰省させられていて全滅していた、ということがわかります。どうやら、この嘉見帰来山一帯は、犬神憑きの一族が集まり住んでいた地域らしく、しかも、一度憑いてしまうと離れない「犬神」を屠るための場所でもあるらしく、その災いが春菜へと向かってきて、といった展開をしていきます。

春菜の危機を救い、この地に残る犬神の災いを封印するため、仙龍たちは、「山」全体を曳いて、廃トンネルの中に封印しようと試みるのですが・・・といった筋立てです。

春菜に飯場の様子を教えてくれる「笠島朔子」という女性は、美人ながら風変わりな印象で描かれていて、犯人オーラがにじみ出ているのですが、それを上回る怪異の仕掛けが、最後の方で仕掛けられていますので、お見逃しなきように。

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レビュアーの一言

今巻にでてくる「犬神」は、狐憑きとか犬神憑きといった血統に由来するものではなくて、先祖が「蠱」によってつくりだしたものがその一族に伝来したもののようです。

「蠱」というのは、古代中国で用いられていた呪法で、「ヘビ、ムカデ、ゲジ、カエルなどの百虫を同じ容器で飼育し、互いに共食いさせ、勝ち残ったものを祀った上で、この毒を採取して飲食物に混ぜ、人に害を加えたり、思い通りに福を得たり、富貴を図ったりするといったもののようです。

この「蠱毒」をモチーフにしたマンガには諸星大二郎の「諸怪志異第二巻 壺中天」収録の「蠱毒」とか、宇宙で「蠱毒」実験をする星野之宣の「コドク・エクスペリメント」などがありますので、興味の湧いた方はそちらもどうぞ。

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