内藤了「蠱峯神 よろず建物因縁帳」=「たたら」に隠された隠温羅流の秘密を探れ

広告代理店に勤務するバリキャリ・ギャルながら、怪異を呼び寄せてしまう「審神者」の能力もあわせもつ高沢春菜が、仙龍の号を持つ曳き屋師にして、古来から伝わる隠温羅流の導師である鐘鋳建設の経営者の守屋大地、守屋の会社の従業員で軽薄そのものの風貌ながら文化人類学の専門家・祟道浩一、廃寺三途寺の生臭住職・加藤雷助と、建物や山河に依った怪異を封じ浄めていく「よろず建物因縁帳」シリーズの第9弾が本書『内藤了「蠱峯神(やねがみ) よろず建物因縁帳」(講談社タイガ文庫)』です。

前巻で、アーキテクツを襲った女性の死霊を浄化するとともに、出雲の地で隠温羅流の秘密に近づいた春菜だったのですが、今巻は岡山の吉備津神社と島根の金屋子神社、長野県の明治期の邸宅に祀られた「屋根神」の調査でさらに深い真相へと近づいていきます。

あらすじと注目ポイント>「たたら」に隠された隠温羅流の秘密を探れ

構成は

プロローグ
其の一 棟梁がサニワに触れる
其の二 吉備中山の九柱
其の三 金屋子神が仙龍を縛る
其の四 坂崎製糸場跡地と坂崎蔵之介邸宅
其の五 ハヤリガミを連れ帰る
其の六 蠱峯神(やねがみ)
エピローグ

となっていて、まずは鐘鋳建設の専務で、当代当主の仙龍・守谷大地の祖父の弟である棟梁こと「守谷治一郎」が古代のタタラを営んでいる村でおきた、生贄のすり替えの場面の夢をみるところから始まります。タタラに携わっている男が、高炉に投じられる生贄とする娘が住む家の屋根に、タタラの守り神・金屋子神の託宣に基づいて射られた矢を、他の家に差し替えるという暴挙を働きます。これは、人間であるその男が「神」に成り代わることを意味していて、これにより男は「金屋子神」による呪いを受けることになるのですが、ここは巻の後半で明らかになりますね。

物語のほうは、前巻で隠温羅流のルーツを調べるため、出雲へ出向いた春菜たちなのですが、今巻では「温羅」の伝説の本拠地である「岡山」へ調査へ出向きます。
しかし、朝廷に反乱を起こした温羅と、温羅を討った吉備津彦尊が祀られている吉備津神社と吉備津彦神社に行くのですが、そこで春菜は光の9本の円柱を見るのですが、ここでは、境内に不穏な空気を感じることがなく平穏なままに参拝終了です。

変異がおきたのは、ここから島根県へ向かい、出雲の「金屋子神社」へ参拝をしようとしたときにおきます。ここで仙龍の体に「黒い蛇」がからみつき動けなくなってしまいますね。どうやら、タタラの守り神である「金屋子神」に隠温羅流の総帥は疎まれているようですね。

本来ならここで詳細の調査に入るところなのですが、ここで春菜の勤務するアーキテクツから突然のヘルプ要請が入ります。春菜の天敵である設計会社の社長・長坂が受注し、アーキテクツが下請けしている現場で、発注者の市役所の担当課長が変死してしまったので、長坂から、名指しで春菜と鐘鋳建設に要請がはいったというわけですね。
この現場は明治期に整備された製糸業を営んでいた大実業家の邸宅と繭倉庫なのですが、寄贈されることとなる邸宅の一室で、寄贈を受ける市役所の担当課長が、全身を虫に食い荒らされたように、皮膚に無数の穴が空いて死んでいたというもので、その部屋に入った春菜は、無数の小さな羽虫のようなものがうごめいているのを発見します。しかし、その無数の虫は春菜だけに見えていて・・という流れですね。

そして、その虫たちは、この邸宅のどこかにある「屋根神」が祀られているところから湧いているようなのですが、屋根神が祀られている部屋に入った春菜は、隠温羅流の因縁が生まれたらしい、金屋子神と隠温羅流の先祖との確執の幻影を見るのですが・・という展開です。

今巻では、この因縁の発端ひたどり着くまでで、ここから先の浄化と隠温羅流の因縁の解除は次巻以降の展開となります。

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レビュアーの一言>出雲のミステリアス・スポット「金屋子神社」

今回、隠温羅流の因縁のもととなっているらしい、金屋子神が祀られている「金屋子神社」は全国に1,200余りあるという金屋子神社の総本山で、春秋の大祭には全国の製鉄関係者が多く集まる神社ですね。
この神社には、「村下(むらげ)」と呼ばれる技術長が麻の足をとられて転んで死んでしまったとき、金屋子神のお告げで高殿の柱にくくりつけて鉄を吹くと、いままでにない良質の鉄ができあがったという伝説も伝わっています。島根県東部を訪れる際は、出雲大社と並んで、訪ねておきたいミステリアスなスポットですね。

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