内藤了 「夢探偵フロイト 1」=「悪夢」は地滑りに隠された過去の事件を掘り起こす

埼玉県所沢市に所在する総合大学「私立未来世紀大学」の「幽霊森」といわれる学生も教員の近寄らない学内のはずれにある「夢」を可視化することを研究している「夢科学研究所」を舞台に、そこの主任教授の「フロイト」、工学専攻のオタク大学院生「ヲタ森」、卒業が危ういパリピ女子大生「あかね」が、夢に関連しておこる怪事件の謎を解いていく「夢探偵フロイト」シリーズの第1弾が本書『内藤了「夢探偵フロイト マッド・モラン連続死事件」(小学館文庫)』です。

あらすじと注目ポイント>「悪夢」は地滑りに隠された過去の事件を掘り起こす

構成は

プロローグ
1 幽霊森の研究室
2 マッド・モラン
3 感染する夢
4 殺人夢
5 フィールドワーク
6 へんぴさいごく早よ逃げまい
エピローグ

となっていて、まずはバイトと合コンに明け暮れて、卒業単位が危なくなったパリピー女子学生「城崎あかね」が、単位獲得のため、学内の学生がほとんど行かない「幽霊森」の中にある「夢科学研究所」で研究室の手伝いをして、単位をもらうという「裏技」に手を出すところからシリーズがスタートします。

この裏技は、大学の職員棟近くの「バラ園」で作業員のような格好で植物の手入れをしている老人、実は大学の学長のアドバイスなので犯罪がらみのものではないのですが、これが縁で、夢を可視化するという研究をしている研究所の教授・風路亥斗こと「フロイト」と情報工学専攻の大学院生で、通称「ヲタ森」こと森本太志が研究する風変わりな「夢」の研究につきあっていくことになります。

今巻で扱うのは、一年前にマンションから飛び降りて亡くなった男性が、繰り返し見ていた悪夢です。それは、何かに追われて森の中を逃げ、どこかに逃げ込むと襲われる夢に関わるもので、この夢の話がネットにあげられると、同じ夢を繰り返し見ているという「音羽楓花」という女性が、この夢科学研究所に悪夢への対処法のアドバイスを求めてきたことから、悪夢の可視化と謎解きに関わることになるという筋立てです。

その可視化の方法というのが、相談者が見た夢の様子を聞き取ったデータをもとに、3Dプリンターで3次元立体模型をつくり、それもとにCGを合成してVRを制作。VRゴーグルをつけて仮想現実の「夢」の世界に入り込む、という仕掛けです。今回は、相談をしてきた「音羽楓花」に「城崎あかね」が付き添って、二人で仮想現実の中に入っていくのですが、そのVRが悪夢で見る情景とそっくりだと感心しているうちに、だんだんと血の気が引いて、体温も下がってきて、といった状態に陥ります。幸い、生命の危険はなかったのですが、逃げるように研究室を立ち去ってから、彼女との連絡がとれなくなって・・という展開です。

一方、研究室のHPにあげた悪夢の情報を見て、自分あるいは知人が同じような悪夢をみたという情報が次々と寄せられてきます。その中に、御嶽山の近くの、子供の頃に言った気がする廃墟の心霊スポットに似ているという情報があり、フロイト、ヲタ森、あかねの三人は、その廃墟を探しに出かけます。土砂崩れにあって職員3人と入院していた子どもさ3人は死亡した、小児病院兼病児の入所施設として運営されていた建物を見つけ、内部を調べるのですが、そこで見つけたのは、睡眠薬を飲んで自殺している「音羽楓花」の姿で・・という展開です。

この後、この小児病院が建っていた場所は昔から地滑りの多いところであったことがわかるのですが、そこに病院の食料を配達していたスーパーの従業員から、報道発表による職員や入所者よりもっと多い人数分の食料を納入していたことや、「音羽楓花」はその施設の記憶があるにもかかわらず、彼女は入所児童の名簿に名前のなかったことがわかります。
これらの事実と、以前、この病院に試験的に通院していた男性から聞かされた、この病院の幼稚園には「遊べない子」と「遊べる子」と「もらわれた子」がいる、という話が意味するものは・・・という展開です。

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レビュアーの一言>パリピ娘大活躍の怪奇ミステリー

表題にもなっていて、この巻の被害者となる飛び降りて死んだ男性や、「音羽楓花」の悪夢にでてくる追いかけて来る怪物「マッド・モラン」の意味は、「マッド」は「泥」、「モラン」は憂鬱という意味をもつムーミン童話にでてくる怪物の名前の合成語なのですが、最後まで読むと、悪夢の正体をすでに暗示していることがわかります。
今巻は見かけはホラーものなのですが、実体は、「怪奇」にコーディネートされた事件の謎を解いていく「怪奇ミステリー」。パリピ女子大生の「あかね」が、明るいドジっ子ぶりを発揮するところとあわせてお楽しみください。

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