内藤了「夢探偵フロイト3」=「夢売り」は密かに悪夢による自殺を仕掛ける

埼玉県所沢市に所在する総合大学「私立未来世紀大学」の「幽霊森」といわれる学生も教員の近寄らない学内のはずれにある「夢」を可視化することを研究している「夢科学研究所」を舞台に、そこの主任教授の「フロイト」、工学専攻のオタク大学院生「ヲタ森」、卒業が危うい不器用なパリピ女子大生「あかね」が、夢に関連しておこる怪事件の謎を解いていく「夢探偵フロイト」シリーズの第3弾が本書『内藤了「夢探偵フロイト 邪神が売る殺意」(小学館文庫)』です。

前巻で金持ちのお嬢様の不眠の原因となっていた、神社で赤い着物を着た「のっぺらぼう」の女の子の悪夢が、十五年前から連続発生していた、女性を絞殺し髪の毛を奪う殺人事件に結びついていたことを明らかにした「夢科学研究所」のメンバーだったのですが、今回は、「夢を売る」サイトの運営者がしかける、夢によって人を操る犯罪の謎ときに挑みます。

あらすじと注目ポイント>「夢売り」は密かに悪夢による自殺を仕掛ける

構成は

プロローグ
1 お祈りメールが届く日
2 葛咲くや
3 買った悪夢が動き出す
4 ヲタ森とあかね夢を見る
5 刑事がやってくる
6 悪夢が外へ漏れ出してくる
エピローグ

となっていて、プロローグのところでは、オンラインのフリーマーケットサイトから「人を殺す夢」を買い、そのとおり、殺人の夢を見て興奮している、ひきこもりっぽい男性の様子が描かれます。この「夢を売るサイト」が本巻の主要テーマになってくるので覚えておきましょう。

本篇のほうは、大学四年の秋になっても一向に就職先が決まらない本シリーズの主人公のパリピ女子大生、「ペコ」こと「城崎あかね」が、卒業単位取得のために手伝いをしている「夢科学研究所」の常連投稿者の「レンゲちゃん」のメールから、ネットで夢を売っている、という話をみつけます。

その「アボガド」というフリマアプリのサイトでは、ハンドルネームが「夢売り」という人物が、「人殺しの夢」「悪夢」「凶夢」「吉夢・華」といったタイトルの「夢」を売っていて、夢研究所の教授・フロイトは、そこから研究のために凶夢ひとつと吉夢ひとつを買おうと試みます。しかし、その出品者「夢売り」は、個人客にしか夢は売らないといってきたため、フロイトとあかねがそれぞれ自分の住所宛に、フロイトは「凶夢」を、あかねは「吉夢」を注文することとします。

フロイトが買った夢のあて先は彼の静岡の実家宛となっていて、実家に届く「夢」の転送をするため、彼が実家に帰省したところで、フロイトが「夢」にこだわって研究者となった父母が夢に殺された話の一端がでてくるのですが、ここは原書のほうでご確認ください。

さて、フロイトとあかねが買った夢のほうなのですが、フロイトの買った凶夢の入った箱には色とりどりの花びらやきれいな犬張子や鈴、てまりなどが入っていた一方、あかねの買った吉夢には、長い黒髪、粘ついた大量の血液、歯根のついた人間の歯が入っています。まるで、凶夢と吉夢を取り違えたような内容物なのですが、まさにそのとおりでフロイトから夢を譲り受けたヲタ森は梅干しや旧型メモリチップ、初代CPUといった彼なりの宝物が実った木の吉夢をみ、あかねのほうは祖母が庭に出現した血の池にうつ伏せに浮かんでいる悪夢をみてしまいます。これは「夢売り」が送る夢を取り違えた結果なのか・・といった流れですね。

そして、この夢科学研究所に所沢警察の刑事たちがやってきます。彼らは管轄内でおきた高齢女性が呼び出されて襲撃された事件の捜査をしているのですが、その容疑者がネット通販で「人殺しの夢」を買って、その夢でみた感覚が忘れられずに犯行に及んだというのですが、フロイトは、そのオウレイ女性を呼びだしたトリックに、彼の周辺で彼を操っている存在に気づいて・・という筋立てです。

この後、過去に「夢売り」によって自殺に追い込まれた女子高生の事件を見つけ出していくのですが、「夢売り」の毒牙は「あかね」を目指してきていて・・と展開していきます。

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レビュアーの一言>「夢買い話」のルーツは?

今巻にでてくる「夢を買う話」というのは、北条政子が妹から「高い山に登って着物の袂に月と日を入れ、3つの橘の実のついた枝を頭の上に置いている」という夢を買ったおかげで、源頼朝に妻となり、最後は尼将軍として天下を采配した話とか、落ちぶれた商人が絵描きから長者の住む屋敷に庭に生えている白い花の咲く椿の木の根本から黄金を掘り出す夢を買い取り、椿に白い花が咲くのをまって本当に黄金を手に入れる話や、飛騨の山奥に住む炭焼が味噌買橋で、自分の家の近くの黄金が埋もれている情報を得る話とか、日本の昔話にはよく似たものが存在するのですが、実はアイルランドの「スワファムの行商人」の昔話とかイギリスのマン島に伝わる伝説とか、コルシカ、スイスにも似たような昔話があるようです(どんぴんからりん「夢にまつわる昔話・スワファムの行商人、味噌買橋ほか」)。

残念ながら、夢を買う話のルーツと思える神話の類は見つけることができなかったので、この夢買い話は、夢に暗示性にヒントを得て世界各地で同時発生した昔話のような気がします。

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