宮下英樹「センゴク権兵衛」25=秀吉と秀次の対立は豊臣政権の衰退を暗示する

美濃・斎藤家の落ち武者から国持大名にまで出世したのに、自らの突出によって島津との戦に敗戦して改易。一家離散のどん底から再び国持大名まで出世。さらには徳川二代将軍のときには「秀忠付」に任命されるなど徳川幕府の重鎮となった「仙石久秀」のジェットコースター人生を描く「センゴク」シリーズの第4Season『宮下英樹「センゴク権兵衛」』の第25巻。

前巻では、朝鮮半島での日本軍の形勢が悪化し、「唐入り」にかかる暗雲がどんどん濃くなっていく中で、京都で勢力を伸ばしていた大盗賊団の親玉である石川後右衛門を捕縛する功績をあげたセンゴクだったのですが、今巻では、豊臣政権の衰退のはじまりとなる太閤・秀吉と関白秀次との対立と、それとは距離を置く小諸でのセンゴクの領国統治が描かれます。

あらすじと注目ポイント>秀吉と秀次の対立は豊臣政権の衰退を暗示する

構成は

vol.211 褒賞
vol.212 小諸帰省
vol.213 風呂興行
vol.214 猜疑の心
vol.215 雑説
vol.216 対峙
vol.217 雷の如く
vol.218 波濤立つ
vol.219 糾明
vol.220 幕引き

となっていて、まずは、石川後右衛門捕縛の褒賞で、秀吉から千鳥の香炉を拝領したエピソードから始まります。これは天下の名器として知られるこの香炉を盗もうと石川五エ門が聚楽第に忍び混んだときに、香炉の千鳥が鳴いて知らせた、というエピソードを元ネタにしたものなのですが、秀吉と久々に面談したセンゴクは、彼の天下人としての孤独を慰めるシーンとして描かれています。

この当時、秀吉の草創期から一緒だった武将は残り少なくなっていたので、センゴクは遠慮なく愚痴をこぼせる貴重な存在だったと思われます。
そして、今回の功績によって、小諸への一時帰省を許され、ひさびさに本格的な領国統治を手掛けることとなります。

てはじめに、戦国時代の町割りが色濃く残り、点在する村を、城下町の近くへ移住させるため、村々の湯治場で歌舞音曲を催すという「風呂興行」を行うのですが、戦国時代を通じて甲斐の武田氏と越後の上杉氏の勢力争いが続き、自立性の強かったこの地の農民や国人たちはそう簡単にセンゴクの勧誘に応じることはないようです。

浅間山の噴火活動の続き、疲弊していく小諸領を謹製城下町へと発展させたセンゴクなのですが、まだまだその道程は遠いようです。

一方、センゴクが離れた都では、太閤・秀吉と関白・秀次との不和が噂になり始めています。

秀吉は自分の死んだ後の豊臣政権の安定化を考え、関白・秀次に「唐入り」で戦死したり、未だ戦闘の中にある大名たちの信頼を得ておくため、関白の渡海出陣を勧めたりするのですが、もともと武張ったことが苦手な秀次に不安を与えるだけの結果となった上に、彼の弟である秀保の急病死が、秀次の秀吉への拒否反応を産み、彼は「痰そう」の病が発症してしまうこととなります。この病は「喘息」の発作の激しいもののようですが、その根っこには秀頼の誕生により地位を追われるのでは、という不安神経症があるように思えます。

そして、秀吉のほうも当初は秀次を後押しして、嫡子・秀頼が成長し豊臣家を継ぐまで、秀次に政権を託すつもりであったのですが、彼の不安が世間に漏れ出すことによって生じてきた謀反の噂を無視することができず、秀次を高野山へ蟄居させ、しばらく頭を冷やさせることを決断します。

この措置は秀次にとって「唐入り」を始めとした秀吉を失政の責任を自分にひっかぶせようという意図に捉えられたようで、伏見の邸で二人の間で激しい諍いがおきます。

これを鎮めたのが石田三成という展開になっていて、秀吉は秀頼政権における宰相を彼に任せようと心に決めるのですが、豊臣政権にとってこれが良かったのかどうかは判断の分かれるところでしょう。

そして、通説では、この後、秀吉側は秀次への圧迫を強め、最終的に秀次は高野山で自害させられるのですが、本巻では、秀吉へのあてつけで自ら自害をしたこととなっていますね。秀次の切腹により、豊臣政権が割れかけるのですが、ここを石田三成が豪腕にまとめ上げていきます。

ここで、心労が増すばかりの秀吉を元気づけるために、側近たちがセンゴクを御伽衆にして、秀吉の鬱憤を晴らさせようとするのですが、そこをスイーとかわしていくのが、センゴクの「自由人」なところですね。

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レビュアーの一言>真田昌幸との対立の芽はこの頃から?

小諸の城下を整備する時に、センゴクが頭に浮かべているのは「真田昌幸」で、本シリーズではこの時点で、なにか不穏な感じを嗅ぎ取っているように描かれています。

実際のところ、これから親・徳川色を強めていくセンゴクに対し、領土問題もあって反・徳川色を強める真田勢とは関ヶ原の戦では敵味方となって戦っています。真田昌幸を警戒していたセンゴクの勘は間違っていなかった、というところでしょうか。 

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