内藤了「LEAK 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」=死体にコインを詰め込む猟奇連続殺人の目的は?

八王子西署の刑事組織犯罪対策課に勤務する、長野県出身で、八幡磯五郎製の七味唐辛子を常用する女性警官・藤堂比奈子が、ベテラン刑事の「ガンさん」こと厚田巌夫、東大法医学部の教授で「死神」と異名をとる石上妙子、鑑識課のオタク鑑識官・三木健、同僚のKY警察官・東海林恭久、バイク乗りのイケメン刑事・倉島とともに、都内でおきる奇妙で凄惨な死亡事件の謎に挑んでいく「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」シリーズの第四弾が本書『内藤了「LEAK 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」(角川ホラー文庫)』です。

前巻では、連続しておきる自殺事件の陰に、最初は自殺を止めながらも、それが不可能な時には臓器移植を進める自殺サイトの陰に、30年前に日本中を震撼させた、飲み物自動販売機に仕掛けられた農薬による無差別殺人の真相を突き止め、それに伴い、敬愛していた大先輩を失った比奈子だったのですが、今巻は、口に札束を加え、食道に大量の硬貨を注入された「リッチマン」殺人の謎解きに挑みます。

あらすじと注目ポイント

構成は

プロローグ
第一章 裕福な死体
第二章 リッチマン連続殺人事件
第三章 警視庁特別合同捜査本部
第四章 リーク
第五章 殺人予告
エピローグ

となっていて、今回の事件は秋葉原のオフィス街の中の公園内で、下半身を埋められた男性の死体が発見されるところから始まります。今回の事件の異様さは、死体の口に丸められた札束が栓のように押し込められていて、さらに、死体の喉から胃にかけてコインが詰め込まれいるということです。

まるで、人間の体を「貯金箱」のようにする殺人事件なのですが、犯行はこれで終わらず、石神井公園の池の中から、ブランドもののスーツや下着を身につけ、高価なイヤリングをした女性が、江東区の海浜公園のテトラポットのところから釣り人の男性が、秋葉原のケースと同じように、口を札束で栓をされ、喉から胃までに硬貨を詰め込まれた状態で発見されることになります。

これらの事件はいずれも、八王子西署の管轄外でおきているので、比奈子の属する「厚島班」には本来関りがないのですが、解剖を担当した東大法医学部の石上教授によって、警視庁の担当管理官へ話が通り、厚島班のメンバー全員と鑑識の三木捜査官が、警視庁の捜査本部へと臨時に駆り出されることとなります。

この奇妙な抜擢を、本庁の捜査員たちが歓迎するはずもなく、嫌味は発言の嵐で完全なアウェイ状態なのですが、とりわけ、前巻までの事件で「猟奇犯罪」を解決する敏腕刑事という前評判が高くなっている比奈子への風当たりはかなり強いものがあります。

普段なら、このあたりは右から左に受け流す比奈子なのですが、今回は、彼女が贔屓にしている「太鼓屋」の経営者のおばあさんが、彼女が若い頃に生き別れた息子が癌になって余命いくばくもないということをネタにオレオレ詐欺の被害にあいそうになり、それ以後ふさぎ込んでいて、プライベートのほうでもなにかとトラブルに巻き込まれています。

そんな折、太鼓屋のおばあさんの息子が入所しているというホスピスを訪れた帰り道、一人のおばあさんとコンビニで仲良くなり、彼女の暮らすシェアハウスで、同居の老人たちに晩御飯の手打ちうどんを御馳走になってほっこりする、といったエピソードがはさまるのですが、実はこれが事件の重要なカギとなってくるので注意しておいてくださいね。

そして、捜査本部に詰めて資料整理をしている比奈子のもとへ、四番目の殺人が起きていることを教える匿名電話がかかってきます。そ電話で指定された廃工場にかけつけると、工場に中に、高級そうなスーツを着て、同じように硬貨を詰め込まれた初老の男性の死体が発見されます。その死体の身元が、オレオレ詐欺の首謀者であることがわかり、他の3つの事件の被害者も、その詐欺グループに関連しているらしいことがわかってくるのですが、再び、比奈子のもとへ犯行声明の匿名の電話がかかってきて、という展開です。

少しネタバレしておくと、口に札束で栓をし、食道にコインを詰めるという単なる猟奇連続殺人と思われていたものが、最後のほうで、オレオレ詐欺グループに対する壮大な「復讐劇」となる一方で、太鼓屋のおばあちゃんとも関連してくる偶然に驚くかもしれません。

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レビュアーの一言

第2巻の「CUT」以後、太鼓屋でパート勤務を続けているシングルマザーの吉田佐和親子なのですが、今回のオレオレ詐欺騒動でさらに、太鼓屋内での絆が強くなった気がします。
もっとも、第2巻「CUT]で生じた縁はこうした良縁ばかりでなく、連続殺人を犯した犯人・都夜と比奈子との悪縁もあって、これが次巻以降で災厄をもたらしそうな感じです。

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