内藤了「メデューサの首」=初老の微生物学者が凶悪なゾンビ・ウィルスから日本を守る

バイオテクノロジー技術が驚異的に進化している今日において、その技術の軍事利用やバイオテロの恐怖が現実のものになりかけている気がするのですが、大学の研究室で生成された「ウィルス」を巡って、世界規模のパンデミックによる生物滅亡の危機に、初老の微生物学者が挑む「バイオ:サスペンス」が本書『内藤了「メデューサの首 微生物特任教授 坂口信」(幻冬舎文庫)』です。

あらすじと注目ポイント>初老の微生物学者が凶悪なゾンビ・ウィルスから日本を守る

構成は

プロローグ
Chapter1 大学教授 坂口信
Chapter2 ゾンビ・ウィルス
Chapter3 寡夫の食卓
Chapter4 消えたウィルス
Chapter5 感染ゲーム
Chapter6 中央区を封鎖せよ
Chapter7 老兵は消えず

となっていて、最初のところでは、都内にある医科系大学・帝国防衛医大で、大学の65歳定年を過ぎて今は特任教授をしている今巻の主人公・坂口信が、恩師・如月の自宅を訪ねるところから始まります。その恩師はすでに亡くなっているのですが、その妻から彼に渡すよう故人から頼まれた遺品の研究データがあるとのことで訪問したという経緯なのですが、渡された研究データがとんでもない代物だった、という滑り出しです。

渡されたCDに中には、大学の研究サンプルの冷凍保管庫を写した動画が記録されています。動画に映っている保管庫の冷凍状態となっているウィルスを解凍・培養してマウスに感染させたところ、そのマウスは一定期間、仮死状態になった後復活し、互いに食い合いをはじめます。さらに、食い合いで頭部だけになってもしばらくの間共食いを続けるという異常さで、しかも、食うものがなくなると自らの身体を食い始めるという、自滅型の「ウィルス」だったのです。

どうやら、恩師の如月は、狂犬病のウィルスとインフルエンザのウィルスを合成して新型ウィルスを作り上げ、それを秘密裏に大学の保管庫に格納していたようなのですが、彼はその目的を明かさないまま死亡しています。

市中に出て、人類や動物に感染すれば、互いに殺し合い、食い合うという地獄絵図が生み出されるの間違くなくて、坂口は、教員仲間の黒岩准教授や助教の二階堂たちとそのウィルスを焼却することを決めるのですが、それを担当した黒岩准教授が、自宅近くの河川敷で死亡しているのが発見され、彼の新婚の妻も葬儀が終わると姿をくらましてしまいます。

その後、坂口のところへ警視庁の「捜査支援分析センター」の「海谷」と名乗る女性警官や、二人連れの公安担当の警察官が聞き込みにやってきて、彼の死が何かの事件に関連しているような気配が漂ってきます。

本当に、坂口が、如月教授の遺した「ゾンビ・ウィルス」が焼却されたのか疑念を持ち始めたころ、何者かが坂口の研究室で撮影されたゾンビ・ウィルスに感染したマウスが互いに食い合う動画をネットや都内のビルの巨大モニターで放映し、ゾンビ・ウィルスを封入した爆弾を爆発させ、無差別テロをこれから実行すると犯行予告をしてくるのですが・・といった筋立てです。

非常事態宣言が出され、都市封鎖がされる中、ゾンビ・ウィルスの入った爆弾はどこに、そして、犯人の目的は・・といった感じのサスペンス・ドラマが展開されていきます。途中、ゾンビ・ウィルスがすでに学校に撒かれているのではと思わせるシーンもあって、かなりドキドキすること請け合いです。

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レビュアーの一言>タイムリーな「バイオ・サスペンス」もの

本書は令和元年12月の刊行で、令和元年12月に中国の武漢市で見つかった新型コロナウィルスの世界的な大流行と時期的に被ってしまったために、現実のパンデミックに圧倒的されてしまった感のある、少し不幸な作品のような気がしています。

物語的には、バイオテロを仕掛けるはずのマフィアたちが腰砕けになって、ちょっと残念なところはあるのですが、初老の一介の微生物学者が、凶悪なウィルスを見つけ、その被害を食い止めようとする「バイオ・サスペンス」として愉しめると思います。

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