「ちるらん 新撰組鎮魂歌」21~24 慶喜は非戦を貫き、土方歳三は「戦」を引き受ける

幕末を彩る「新撰組」を、副長・土方歳三をメインキャストに、幕末の京都から戊辰戦争・函館戦争へと続く激動の時代を「ヤンキー漫画」テイストで描く「橋本エイジ・梅村真也「ちるらん 新撰組鎮魂歌」」のシリーズの第21弾から第24弾。

前巻で、薩長と手を組んで、新選組の勢力を二分しようとしていた伊東甲子太郎を始末し、そのため試衛館以来の同士・藤堂平助もうしなうことになった新選組メンバーなのですが、徳川慶喜の大政奉還の奇手に対し、岩倉具視たちも「王政復古」の命令によって対抗し、鳥羽伏見での幕府軍と薩長軍との激戦が描かれます。

第21巻 土方歳三が新選組の新・指揮官となり、鳥羽伏見の戦に臨む

第21巻の構成は

第八十七話 それぞれの覚悟
第八十八話 継承
第八十九話 洗礼
第九十話  覚醒の刻

となっていて、前巻の後半部分で岩倉具視や薩摩、長州の倒幕派による武力倒幕の目論見を、徳川慶喜の大政奉還の奇策によって防いだと思ったのもつかの間、岩倉たちは王政復古と将軍職の廃止、そして徳川家の所領返上を要求し、幕府側の侍たちを暴発させ、武力で権力奪取することを狙ってきます。

これに対し、幕府側の旗本、会津、桑名といった勢力は二条城に1万人の将兵を集結させ、いよいよ戦端が開かれるか、と思われたところで、慶喜は二条城を出て大阪へ退去、という予想外の決断を下します。彼はここで薩長相手に戦をおこせば、勝ったとしても西欧諸国につけいる隙を与え、日本国自体が植民地化されることを恐れ、あえて不戦恭順の途を選んだのですね。

ただ、慶喜が不戦を選択しても、武力決戦を考えている薩長がおさまるわけはなく、ここで土方は、彼ら新選組が将軍の決断に逆らって突出して薩長と戦い、彼らの戦闘意欲を一手に引き受けるという途を選びます。

この段階で、今まで鉄の規律として定めていた「局中法度」を破棄。これからは逆賊の汚名をきても幕府に殉ずる者だけが残っての「戦」を開始することとなります。

しかし、ここで彼らの動きを削ぐ自体が発生します。二条城からの帰り道、御陵衛士の残党たちが近藤勇を襲撃し、近藤は負傷。この怪我がもとで剣を振るうことのできない身体となり、これ以後、新選組の全指揮は土方歳三がとることとなります。

そして、「新選組」の属する幕府軍は鳥羽伏見の戦で、後に日清・日露戦争で日本軍を勝利に導き「不敗の名司令官」と称され、幕末には新型砲を生み出した砲術の天才・大山弥助率いる薩摩軍と激突し、その大火力のもとに壊滅寸前まで追い詰められます。

ここで退却しようとする幕府軍の指揮官・竹中重固を制して、土方率いる」新選組」は、世界最先端の銃を配備し、一人ひとりが薩摩示現流の達人でもある、薩摩最強の部隊「薩摩藩洋式歩兵銃隊」と対峙するのですが、ここで、幕末の京都で恐れられた「壬生狼」の本領を発揮し・・という展開です。

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第22巻 味方の裏切りにあい、土方たちは鳥羽伏見で大敗北

第22巻の構成は

第九十一話 最強たちとの再会
第九十二話 漢たちの共闘
第九十三話 最期の一言
第九十四話 大英帝国からの暗殺者

となっていて、鳥羽伏見の戦で新選組は、薩摩藩洋式歩兵銃隊に損害を与えたものの、劣勢は挽回できず、幕府軍とともに伏見を退却し、「淀・千両松」付近に陣を移します。

ここを基点に、鳥羽・伏見街道沿いに大阪へと向かう薩長軍を佐川官兵衛率いる会津藩の「別撰組」、佐々木只三郎率いる幕府の旗本・御家人で組織する「見廻組」、そして土方歳三率いる「新選組」が迎え撃つこととなります。

兵力数なら薩長軍のほうが圧倒的に優勢なのですが、川沿いの堤に陣をおいて火力の優勢と大軍展開を防ぎ、弾込めの隙を狙って斬り込みをしてくる三部隊の動きに、薩長側も攻めあぐね苦戦を強いられます。このまま日没まで持ちこたえれば幕府関係者の撤退も完了し、戦後交渉を有利に進められると思われた時、徳川譜代の藩で老中も務めている「淀藩」が裏切り。城門を閉ざし、幕府軍を挟み撃ちにして、鳥羽伏見の戦いの幕府軍壊滅へとつながっていきます。

この場面で、新選組六番隊組長・井上源三郎が殿軍となって、新選組たち幕府軍の撤退を成功させるのですが、わずか15名で大山弥助の薩摩軍を足止めした激闘の様子は原書のほうでどうぞ。

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第23巻・第24巻 「新選組」vs「亡霊の騎士団」。日本とイギリス植民地の猛者の激突の結末は?

第23巻の構成は

第九十五話 亡霊の騎士団
第九十六話 騎士と武士
第九十七話 闘う理由
第九十八話 復讐の種

第24巻の構成は

第九十九話 傷
第百話   我慢比べ
第百一話  奪う漢vs守る漢
第百二話  誓いの六文銭

となっていて、鳥羽伏見の戦線から脱出し、徳川慶喜たち幕府軍将兵を乗せた艦隊は江戸に向かって航行しているのですが、これに岩倉具視が雇った、武器商人グラバーの手配したイギリスの植民地から集められた刺客が、徳川慶喜、松平容保、近藤勇、土方歳三など幕府軍側の主要人物の暗殺を狙います。

この刺客である「亡霊の騎士団」はインド、ケープ植民地、アメリカ、オーストラリア、香港、スコットランドでイギリスへの反逆や反乱を企み死刑を宣告されている者たちの集団で、それぞれが独特の武器でこの幕府艦隊に乗り込んでいる要人たちの殺害を狙ってきます。

ここでは二巻にわたって、新選組と「亡霊の騎士団」とのバトルシーンが展開されていくので、戦闘シーンの好きな読者は大好物かと思います。

少しネタバレしておくと、戦闘の最終盤で、今まで新選組と長州との二重スパイをしていた「山崎烝」が新選組に殉じて爆死しています。

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レビュアーの一言>慶喜の「非戦」戦略は不発に終わる?

幕府軍と薩長軍が激突し、内乱化することを防ぐため、徳川慶喜は大政奉還をしたり、二条城で不戦の決断をして大阪から江戸へ逃れ謹慎する、といったとことん低姿勢の態度を貫いているのですが、誰の陰謀なのかことごとく的を外されて、戊辰戦争から会津戦争、箱館戦争にいたる内乱を避けることはできなかったですね。
やはり、今までの長期政権が倒れ、新しいものが生まれるためには、犠牲が必要となるものなのでしょうか。

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