東川篤哉「野球が好きすぎて」=野球を愛するミステリーファンに捧げる倒叙型ミステリー

数十年前はスポーツといえば「野球」としたもので、男はすべてグローブを持ち、放課後の遊びといえば、空き地での草野球というのが、「ドラえもん」でもおなじみのシーンだったのですが、時代は移り変わり、サッカーに押され、ワールドカップが開催されるときはラグビーにも人気を脅かされるようになり、不満を抱えている野球ファンも多くなっている今日この頃。

そんな中、ミステリー界の数少ない「カープファン」として有名な筆者が満を持して送り込んだ倒叙型野球ミステリーが本書『東川篤哉「野球が好きすぎて」(実業之日本社)』です。

あらすじと注目ポイント

構成は

第1話 2016年 カープレッドよりも真っ赤な嘘
第2話 2017年 2000本安打のアリバイ
第3話 2018年 タイガースが好きすぎて
第4話 2019年 パットン見立て殺人
第5話 2020年 千葉マリンは燃えているか

となっていて、警視庁捜査一課に勤務する、熱狂的スワローズファンの「親子燕」あるいは「桜田門スワローズ」こと「神宮寺勝男」警部と「神宮寺つばめ」刑事が、都内でおきる野球がらみの事件の数々を、新宿区にある「ホームラン・バー」というスポーツ・バーに出没するカープ女子の名探偵に勝手に謎解きされるというのが基本的な展開なのですが、その探偵役のカープ女子の名前が、その年の広島カープのペナントレースの状況によって毎年変わるという筋立てです。

まず第一話の「カープレッドよりも真っ赤な嘘」は、プロ野球選手のサインなどが入った「お宝ユニフォーム」を着ている野球ファンを脅して、そのユニフォームを脅し取る犯行に見せかけて、カープファンの男性を殺害するというトリックの解明です。「ホームラン・バー」で事件の謎解きに苦戦している「親子燕」の前に現れた赤いユニフォームい赤い眼鏡、肩のラインで切りそろえた髪に赤いカチューシャで、赤いカクテルを飲んでいるカープ女子の推理は、ファン以外なら区別のつかない、カープの「C」の字に目を付けた謎解きで・・という展開です。

第二話の「2000本安打のアリバイ」は、ジャイアンツの阿部慎之助が2000本安打を達成した瞬間に撲殺されたジャイアンツ・ファンの事件の謎解きです。被害者は2000本安打が達成された瞬間にはすでに死亡していたのですが、その犯行時間を偽装するために犯人が行ったTwitterのツィートが謎解きの鍵となってきます。

第三話の「タイガースが好きすぎて」は遺産と保険金目当てに叔父を殺害した甥のアリバイ崩しです。容疑者として、その甥が疑わしいことは、捜査一課の「親子燕」こと神宮寺親娘も気づいているのですが、現場の家にいた婚約者が証言した野球中継の時刻頃には甥にはアリバイがあります。このアリバイを崩したのは、負け試合は見たくない、というタイガースファンらしい習性で・・という筋立てです。

第四話では、東京・蒲田の廃工場で、頭を平たい板状のもので殴打された後、首をロープで絞められて殺された男性の死体が発見されるのですが、この「凶器」が謎解きの鍵となります。この年、DeNAで活躍していたパットン投手が打ちこまれて降板し、その腹いせにベンチ内の冷蔵庫に八つ当たりして表面をボコボコにした上にに自分も拳を負傷して戦線離脱というトラブルがあったそうなのですが・・・

最終話の「千葉マリンは燃えているか」は三角関係のもつれから、バットで撲殺された小説家の殺人事件の謎ときです。重要参考人として、小説家の家に盗みに入った男性が捕まるのですが、彼は、盗みに入ったとき、すでに小説家は殺されていた、そして盗みに入ったのは、千葉マリンスタジアムで西日が原因で試合が中断された日だと主張します。彼が嘘を言っているとも思えないなか、新たに小説家と親密な関係にあった女性編集者が容疑者として浮上するのですが、彼女には、その西日で中断された試合を現地で観ていた、というアリバイがあって・・という展開です。この話では偽物のカープ女子が現れて、捜査をかく乱していきますね。

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レビュアーの一言

この「野球が好きすぎて」には、珍しいことに作者の「あとがき」が掲載されていて、そこで各話ごとの製作秘話っぽいことが語られているので、詳しくはそちらを読んでいただくとして、本書はプロ野球ファンの小説家による、野球愛に満ちた見ミステリーに仕上がっています。おまけに、探偵役がコテコテの「広島弁」で推理を披露する数少ないミステリーでもあります。
ただ、カープファンにとっては、第一話の栄光から段々とチーム成績が下降していったのを呼び起こす結果となるので、悔しい想いが蘇るミステリーとなっているかもしれません。

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