「イサック」10~11=オランダへ攻めかかるスピノラ軍の大型大砲+ロレンツォの新型銃をイサックは撃破できるか?

17世紀初頭から半ばにかけてドイツやオーストリアなどの中央ヨーロッパでカトリックとプロテスタントの間で戦われた宗教戦争「三十年戦争」を舞台に、大阪夏の陣の後、戦乱が収まった日本から、兄弟弟子が師匠のもとから盗み出した銃を取り返すため、傭兵としてやってきた火縄銃の名手「イサック」の活躍を描く戦場物語『真刈信二・DOUBLEーS「イサック』シリーズの第10弾と第11弾。

前巻で、ヴァレンシュタイン軍から脱出したハインリヒ王子や、逃走中の選帝侯・フリードリヒ5世と彼と一緒に逃れていたゼッタと合流できたイサックなのですが、今巻では、ヴァレンシュタイン軍の追及を逃れて、ライン川を渡河してオランダ領へ脱出するまでの戦闘と、さらにオランダへ到達してからの、オランダ制圧を狙うスペイン軍とそれに味方するロレンツォとの戦いが描かれます。

第10巻 イサックはオランダへ渡り、ロレンツォを追う

第10巻の構成は

第42話 執念の一撃
第43話 ライデンの亡霊
第44話 潜入!ライデン市
第45話 オランダ式射撃術

となっていて、まずはゼッタの略奪をとめる説得に心を動かされた傭兵たちによってイサックたちはライン川を渡河することに成功します。

さらに、対岸から牽制するヴァレンシュタインを狙撃して追撃を断念させます。ヴァレンシュタイン将軍は、ハインリヒ王子やフリードリヒ5世を捕縛して、神聖ローマ帝国の爵位を手に入れ自らの王国を建設するつもりだったのですが、その野望を挫かれることになります。

ただ、その後、プロテスタントの反乱の鎮圧に伴い、ボヘミアの土地を買収して広大なな領地を手に入れ、さらに皇帝への兵員と戦争資金を供与してボヘミアのフリートラント公の地位を手に入れるなど、着々と勢力を固めていくことになるのですが、これはまた別の話ですね。

オランダ領へ渡ったイサックとゼッタはここで、アムステルダムへ向かうハインリヒ王子たちと別れ、ライデンへと向かうこととなります。この二人には商人のクラウスが同行することになるのですが、彼は新しい金儲けの種を二人の中にみつけているようですね。

イサックがライデンに向かったのは、彼がヨーロッパへ渡る仲立ちをしてくれたオランダ人の平戸商館長・ヤンセンが住んでいるからで、おそらくロレンツォは彼らの師匠が銃に刻んだ日本語で書かれた新式銃の製造法を、ヤンセンにオランダ語に訳させるだろうとふんでのことです。残念ながらイサックの懸念は的中し、娘を人質に取られたヤンセンは銃の製法を訳し、これをもとにロレンツォは新式銃を二丁新たに製造し、これをネタにスペイン軍のスピノラ将軍の軍隊の銃士として雇われることになります。

一方、イサックの方は、スピノラ将軍率いるスペイン軍が当面の攻略地点と考えているネイメーヘンの町の後背にあるユーリヒ要塞の守備隊長・ピタンの軍に加わります。イサックが日本を出るときに契約したオランダ東インド会社との契約に基づいての傭兵として雇い入れられたということですね。イサックはゼッタとともに、ユーリヒ要塞に入り、スペイン軍とロレンツォの攻撃を迎え撃つこととなります。

イサックは、銃士隊による集団攻撃を補う狙撃兵として雇われるのですが、この時点では、彼の銃の腕を活かせる銃がないのが残念なところです。

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第11巻 愛銃「尽」を取り戻し、ユーリヒ要塞を砲撃する大砲部隊を撃破せよ

第11巻の構成は

第48話 敵銃士を狙え!
第49話 肉薄!
第50話 新兵器
第51話 去来
第52話 獣
第53話 渾然

となっていて、まずユーリヒ要塞には大型大砲の砲撃に先駆けて、ロレンツォと彼が新たにつくった新式銃二丁を装備した銃士による守備兵の狙撃攻撃を始めます。

これに対抗するためには、遠方に陣取る狙撃兵を逆狙撃するための堡塁の窓の大改造が必要になるのですが、相手の狙撃の隙きをついた闇夜の工事となるため、ここでゼッタの得意とする天気予報が役に立つことになります。

応急工事をすませたイサックたちは夜明けを待って先制攻撃をしかけるのですが、イサックは木立の中に陣取るロレンツォを発見し、彼に向かって突進していきます。

愛銃の「尽」をロレンツォに奪われているので、彼には白兵戦によって彼を斃す方法しか確実なものがない状況なわけですね。しかし、イサックの捨て身の攻撃も、ロレンツォを斃すまでは至らず、ユーリヒ要塞へは、ロレンツォの狙撃によって、出足を止められたところへ、スピノラの騎兵による先遣隊が襲いかかります。

この戦闘にはクラウスも参加させられていたのですが、彼は「短剣」しか所持していないため、敵の騎兵に蹂躙されそうになるのですが、落ちていた銃の先に短剣をつけることによって、即製の銃剣をつくり、それで敵を撃退することに成功します。これを真似た他のユーリヒ要塞の守備兵も騎兵を圧倒し、ひとまずスピノラ軍の先制攻撃を回避することに成功します。

この翌日、この勢いをかって、敵本隊が到着する前に高台占領に守備隊が向かうのですが、ここではイサックがロレンツォから愛銃「尽」を取り返す大バトルが展開されることになるのですが、詳細は原書のほうで。

そして、オランダへの早期侵攻を計画するスピノラ軍は、新方の大型大砲6門による要塞への砲撃を開始します。新型大砲の射程距離も長いことを利用して、要塞からは見えない坂下に、大砲を据え付け、照準は高台に設置した遮蔽板に隠れて砲術長が射程距離と方角を指示するという砲撃方法のため、要塞からの反撃はほとんど不可能と思われます。

この危機を打破したのが、愛銃の「尽」を取り返したイサックの狙撃技術とゼッタの正確な天気予報です。ほんのわずか、朝日が射したところをねらっての狙撃の見事さは原書のほうでお楽しみくださいね。

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レビュアーの一言>「銃剣」は騎兵対策の大発明

スピノラ軍の先遣隊を押し返すことを成功させたのが、本シリーズではクラウスの考案した「銃剣」となっているのですが、史実では17世紀に、フランスのバイヨンヌでおきた農民騒乱で、興奮した農民が持っていたマスカット銃の銃口に短剣を差し込んで相手に襲いかかったのが起源と言われています。

これは、半ば伝説っぽい感じがあるのですが、当時のマスカット銃は射程距離が短く、装填にも時間がかかったため、射撃と射撃の間に時間があき、ここを騎兵や歩兵に攻め込まれることが多かったようなので、銃を使った白兵戦で銃兵に護衛の槍兵をつける必要がなくなって、兵力の有効活用につながったようです。

特に、馬は尖ったものを恐れる習性があるので、騎兵対策には有効な対抗戦術だったようです。

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