高田崇史「卑弥呼の葬祭 天照暗殺」=卑弥呼と天岩戸神話に隠された古代国家の陰謀

東京の大学の理科系学部を卒業後、母親の得意とする「四柱推命」の占いに従って、医薬品関係出版社「ファーマ・メディカ」が発行している医療系月刊誌の編集者をしている「萬願寺響子」が、周囲の知り合いが関わっていく歴史に由来する事件に巻き込まれ、知らずしらずに自身は苦手にする「歴史の謎」の解明をしていく歴史ミステリー「萬願寺響子」シリーズの第三弾が本書『高田崇史「卑弥呼の葬祭 天照暗殺」(新潮文庫)』です。

「鬼門の将軍」で平将門に関する連続殺人、「七夕の闇」では「七夕」に関する連続殺人に巻き込まれてしまった響子だったのですが、今回は、日本の古代史の謎中の謎「卑弥呼」に関する連続殺人に巻き込まれていきます。

あらすじと注目ポイント

高千穂、宇佐で猟奇連続殺人発生

構成は

天照大神
満身創痍
天地神明
乱雑無章
水月鏡花

となっていて、事件のほうは、まず宮崎県の高千穂で地域の集落で、十一月中ごろに開催されている夜神楽の法奉納舞で「手力雄神」を演じる男性が、幕間に首を切り離されて殺されているのが発見されます。その少し前には、手力雄神の面をかぶった演者が舞っているので、おそらく舞い終わって休憩しているほんの少しの間に殺害されて、首を切り落とされたのではと推測されます。しかし、地域の住民の多くが集まる祭りでおきた事件なので、誰も目撃者がいないはずかないのですが・・という筋立てです。

この首切り殺人事件の犯人がまだ逮捕されない中、第二の事件がおきます。場所は大分県の宇佐神宮。早朝、神社の霊水を汲みにきた氏子の女性が、霊水を汲み上げる井戸の中に手首と生首が放り込まれているのを発見するというもの。

さらに連続して、宇佐神社から少し離れた雑木林の中にある、古におきた「隼人の乱」の際に討伐した隼人の首を埋めたという伝承をもつ「凶首塚古墳」の近くで首を吊っている男性の死体が発見されます。近所の住民の証言では、生首となっていた女性と区部を吊っている男性とは恋人同士であった、ということなのですが・・というシチュエーションです。。

さらに翌日、第一の生首の発見者である女性も神宮内の一柱騰宮跡で絞殺されているのが発見されるという矢継ぎ早の連続殺人となっていきます。

「漣」は卑弥呼の調査で行方知れずに

一方、本シリーズの主人公である萬願寺響子のところには、甥で第二弾の「将門事件」のときに重要なパートナーとなった鳴上漣が、春休みを利用して卑弥呼と邪馬台国の謎を解くため、九州の大分から福岡高千穂までを調査旅行する、といって出かけたきり連絡がとれなくなった、と漣の母親の叔母から相談が入っています。まあ、大学生のことなので、そんなに心配することでも、とは思うのですが、オタクレベルの高い息子「漣」に過保護な叔母の頼みを断り切れず、休暇をとって、響子が捜索旅行にでかけることになるのですが・・というのが物語のおおまかな展開です。

魏志倭人伝をはじめ卑弥呼や邪馬台国関連の資料を買い込んで、古代史の知識を即席で詰め込んだ「歴史嫌い」の響子は、漣が辿ったであろう宇佐神社、高千穂の天岩戸へと向かうのですが、これは偶然、高千穂や宇佐で起きた猟奇殺人事件の起きた場所を辿る旅にもなっています。そして、天岩戸の近くにある茶店にたちよったところで、店の女性店員から漣の情報を教えられます。彼はここに立ち寄り、近くの危険な転落スポットに行ってみると言っていたとのこと。その響子はその女性店員にその崖の獣道を登ったところにあるその場所に案内してもらうのですが、そこで、背後から襲われ、という感じで、いつものように事件に巻き込まれていきます。

古代史の秘密が猟奇殺人と漣失踪の原因?

もっとも、響子はそこに出くわした「桑原崇」という薬剤師、高田崇史さんの歴史ミステリー「QED」の探偵役ですね、に助けられるのですが、彼の協力で「漣」の行方を調べていくうちに、日本史の陰に隠されていた、卑弥呼の秘密と、日本神話の主神ともされる「天照大神」の秘密を解き明かすことになり、さらにはこの連続殺人の原因と「漣」の失踪がその「古代史の秘密」に関連していることが明らかになり・・という展開です。

少しネタバレしておくと、古事記にでてくる天照大神の天岩戸の神話と卑弥呼の正体と、日本書記の神武天皇の東征伝説がリンクしていって、「天照大神は殺された」というトンデモ説が飛び出していくのですが、詳しくは原書のほうでお楽しみくださいね、

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レビュアーの一言=響子のお気に入りは「等々力渓谷」

主人公の萬願寺響子は、母親の信奉する四柱推命によって、進学する大学や、下宿先を決めていて、現在は東京の等々力に住んでいます。本巻の最初のほうでも、少しコミュ障の傾向のある響子が心を鎮めるために、東京23区唯一の渓谷である「等々力渓谷」を散歩するシーンが出てきます。東急大井線「等々力駅」南口から徒歩5分で、都心の住宅街の中にある「都心の癒しスポット」「都心のオアシス」とも言われています。公園内には日本庭園や等々力不動尊や甘味処もあるそうなので、自然好きの方は立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

参考ホームページ:Holiday「【等々力渓谷の楽しみ方完全ガイド】お散歩やデートにも!都会の中で自然を満喫」

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