「准教授 高槻彰良の推察2ー怪異は狭間に宿る」=「こっくりさん」の呪いには同級生への思いが隠されていた

一度見たら全てを記憶する「瞬間記憶」と抜群の観察力、そして子どもの頃に誘拐されたことによるトラウマを抱える、東京都千代田区にある青和大学で民俗学を教える准教授・高槻彰良と、幼い頃の怪奇体験から人の嘘が歪んで聞こえる異能を持ってしまった青和大生・深町尚哉が、民俗学の知識を遣いながら、世の中で不思議現象といわれているものに隠されている「真実」を解き明かしていく民俗学ミステリー「准教授 高槻彰良の推察」シリーズの第2弾が本書『澤村御影「准教授 高槻彰良の推察2ー怪異は狭間に宿る」(角川文庫)』です。

第一巻では、主人公の一人・深町尚哉が「嘘」の気付いてしまう能力を得た出来事やその後に、彼が家族や世間と距離をおくようになった経緯がわかったのですが、今巻では、もう一人の主人公・高槻彰良が幼いころの経験した神隠しのことやそれによって彼と家族との間に何がおきたのか、といったところが、怪異譚の謎解きとともに明らかにされていきます。

あらすじと注目ポイント

構成は

第一章 学校には何かがいる
第二章 スタジオの幽霊
第三章 奇跡の子供

となっていて、まず第一話の「学校には何かがいる」は、皆さんお馴染みの学校の怪談のお話です。相談者は前巻の神隠し事件の調査で知り合いになった小学生からの相談で、彼の隣のクラスの女子たちが召喚した「こっくりさん」が教室に置いてあったロッカーに取り憑いてしまったという案件です。

召喚したこっくりさんは、しばらく前までクラスに在籍していた病気がちの女の子の名前を名乗っていて、この女の子の霊が現れたのか、と疑われるところなのですが、この女の子はこの学校から転校後、手術が成功して、今は健康に過ごしていることがわかります、果たして、教室のロッカーに取り憑いているものの正体は・・という展開です。

少しネタばれすると担任の若い先生の気持ちが空回りしての怪異譚の発生のようですね。

第二話の「スタジオの幽霊」では、青和大の学園祭のトークショーで彰良と対談した、青和大出身の有名女優からの相談案件です。

相談の中身は、彼女が主演を務めている映画の撮影スタジオに女性の幽霊が出るというもの。彼女からスタジオに来て調べてほしいという依頼を受けてやってきた彰良たちは、スタジオセットの枠組みの上に幽霊が立っている、とその女優が悲鳴をあげ、撮影が中断してしまう場面にでくわします。撮影上、スタッフが立つ必要もなく、高さや足場の悪さといい、人が立つと危険なのので、通常ならありえないことなのですが・・という筋立てです。

この話では嘘を見抜くことのできる尚哉の聴力が、中耳炎の手術をしたことで失われていたため、怪奇譚の真相へたどり着くのは、高槻の推理頼みとなっているのですが、実は幽霊を見たことがあるというその女優の発言があながち「嘘」ではなかったことが、さらに謎解きを混乱させているようです。

第三話の「奇跡の子供」では、自分の親が新興宗教っぽいものにのめり込んでしまって、困っているという相談を受けます。

その問題の家には、「奇跡の少女」と呼ばれている、崖から遠足バスが転落して乗っていたクラスの担任教師や同級生が死亡する中、たった一人生き残った少女と彼女の母親が住んでいます。彼女に面会すると良いことがおきたり、災厄から逃れることができるという話。けして「お布施」や「謝金」をとったり、宗教上の教理があるわけではないので、「新興宗教」というわけではないのですが、多くの人が「お礼」として物やお金をもってくるようになっています。

高槻は依頼を受けて、その少女に会い、彼女がバスが逆さまになっている絵を好んで描いていることや、「遠足のしおり」を大事にしているのを見て、少女が「バス事故」から生き残ることのできた、彼女が学校でクラスメートにイジメられていたという話から推測される「哀しい理由」にいきあたるのですが・・という展開です。

Bitly

レビュアーの一言

今巻で注目しておきたい「うんちく」ポイントは、なぜ学校の理科室や音楽室やトイレでは「怪談話」がつきまとうのか、というもの。たしかに、学校の怪談といえば、全国共通で」こうした場所でおきることになっているのですが、今巻の第一章「学校には何かがいる」では

怪異とは日常性からの逸脱・・・。「日常」の中にあるものは、普段慣れ親しんで、よく知っているものばかりだ。だから、安心できる。でも、怪異が潜むのは「日常」と「日常」の隙間にある「非日常」だ

と説明されていて、教室などの普段よく使うところは、「日常」と認識されるに対し、使う頻度が低い「理科室」や「音楽室」はいつまでも非日常であり、さらに、「日常」である「授業中」ではなく、「非日常」である「放課後」や教室から離れて一人になるトイレで怪異が発生すると説明されています。そういえば、たいていの都市伝説は、始めて訪れたところやよく知らないところで発生していますね。

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