「ローズ・ベルタン 傾国の仕立て屋」6=ベルタンはアントワネットに出会い、ベルサイユ進出

フランス革命期に、ルイ16世の王妃・マリーアントワネットのモード商を務め、40年間にわたってフランス宮廷、すなわちフランスのファッションをリードした平民出身の女性ファッションデザイナーの元祖「ローズ・ベルタン」の成り上がり物語を描く『磯見仁月「ローズ・ベルタン 傾国の仕立て屋」』シリーズの第6弾。

前巻では、下積み時代からの盟友で、現在はマリー・アントワネットの髪結として宮廷に食い込んでいるレオナールの助けを得て、「ケサコ(それは何?)型髪型」や「愛着風(サンティマン・プフ)髪型」といった流行作を次々と発表し、ヴェルサイユ宮殿を沸かせたマリー・ベルタンだったのですが、今巻ではその評判をきっかけについに、マリー・アントワネットへの食い込みを開始します。

あらすじと注目ポイント

構成は

26針目 王位
27針目 別れ
28針目 パリ
29針目 チェス
30針目 謁見

となっていて、まずはヴェルサイユ宮殿にいるマリー・アントワネットと夫のルイ・オーギュスト、後のフランス・ブルボン王朝最後の王となったルイ16世の話から始まります。
ここでは、もともと王太子でもなく、フランス国王となることなど考えていなかった彼が、兄の突然の事故死によって王太子となり、国王ルイ15世の崩御によって、フランス王位へと押し上げられていく様子が描かれます。

彼は自らが正当な王位継承者ではないことに悩み、若くしてフランスを担う王座に就かされたことに悩んでいる様子です。一方で、アントワネットは夫・ルイ16世の心のうちをはかりかねていることもあるのですが、王妃としての自覚はほとんどないようですね。
このあたりの国の統治者としての当事者感覚の無さが、これからのフランス王国に暗雲をもたらしたのだろうと思われます。

一方、ベルタンのほうは、売れっ子の髪結師・レオナールの協力を得て、さらなる飛躍を目指すのですが、ここで今まで彼女を支援してきてくれたデュ・バリュー夫人の失脚です。
ルイ15世の有名な公娼であったポンパドール夫人の死後、ルイ15世の寵愛を集めていたのですが、ルイ15世の崩御でその権力基盤が瓦解します。国王の死後、寵愛を受けた公娼は新国王によって年金を支給されて余生を送った例が多いとはいえ、中には殺された例もあり、少なくとも、権力の中心であるヴェルサイユ宮殿から追放されるのは間違いないですね。デュ・バリュー夫人とシャルトル夫人の権勢を利用して、フランス宮廷への進出を狙うベルタンにとっては大きな痛手です。

しかし、ここで凹んでいるベルタンではなく、シャルトル夫人の支援をてがかりに、まりー・アントワネットへの謁見の機会を勝ち取り、彼女への食い込みを始めます。
アントワネットの謁見にそなえ、ドレスを新調するベルタンなのですが、国王の交代とともに失脚した前モード商・フィリドールのアドバイスは・・というあたりは原書のほうで。

マリー・アントワネットとのベルタンの謁見は、戦場のような緊迫感がありますので、そこらもぜひ本書で。

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レビュアーの一言

マリー・アントワネットの母親であるオーストリアの女帝・マリー・テレジアはアントワネットがフランスに嫁いでから11年間、テレジアが死ぬ直前まで、娘を心配する手紙を送っています。
手紙はアントワネットにオーストリアから付き従ってきたメルシー伯の報告に基づいて、賭け事を含めた娘の行動を心配する内容が中心で、最初はアントワネットもその忠告にきちんと従っていたようですが、年数を経るにつれ、本音を隠して母親をごまかす内容が増えていったようです。ここらは、アントワネットも親が苦手な不良娘であったようです。
マリア・テレジアが死去してから9年後にフランス革命がおきてアントワネットも処刑されることとなるのですが、本書のこの忠告はそれを暗示したものだったのかもしれません。

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