王欣太「達人伝」30・31=荘丹たち連合軍は秦軍を撃破し、首都・咸陽を目指す

二百年続いた中国戦国時代の晩期。西方の強国・秦が周辺諸国に強大な力を背景に強圧をかけつつあるが、他の五国にまだ、秦の強権的なやり方に反抗する力の残っていた時代に、荘子の孫「荘丹」、伝説の料理人・包丁の甥「丁烹」、周の貴族出身ながらある事情でそれを捨てた「無名」び三人の男が、「法律」と「統制」で民衆を縛る秦の中原統一の野望に抵抗する姿を描く『王欣太「達人伝ー9万里を風に乗りー」(アクションコミックス)』シリーズの第30弾と第31弾。

前巻で、秦の謀臣・李斯によって崩壊させられた魏の信陵君率いる五カ国連合軍を、楚の春申君を中心に組み直した荘丹たちだったのですが、その五カ国連合軍と秦の麃公や蒙驁たちとの決戦が始まります。

あらすじと注目ポイント

第30巻 廉頗指揮の連合軍は秦軍を撃破。蒙驁は撤退を決断

第30巻の構成は

第百七十五話 秦の様態
第百七十六話 流氓混成軍団
第百七十七話 本能の促す先
第百七十八話 総攻撃開始
第百七十九話 天地の絶対者
第百八十話  榮陽の陣

となっていて、冒頭では秦王「政」の母君である太后が身ごもったことがわかるところから始まります。

「キングダム」と違って、このシリーズでは、「政」は頭脳明晰で酷薄な君主として描かれているので、この当時、秦国でまだ絶大な権勢を誇っていたと思われる呂不韋はもはや過去の人になりかけていますし、李斯は政の忠実な臣下となっています。彼を使ってつくりあげられるのが、異民族を中心とする直属軍です。兵馬俑で始皇帝を守っている兵士の原型となった部隊のようですね。

一方、麃公率いる秦軍は、五カ国連合軍と戦闘を開始しています。この連合軍は、今までのように五カ国の正規軍の集まりではなく、半分は私兵である楚の項燕、趙の李牧軍や、盗跖の盗賊軍や後に漢帝国を建国した劉邦の義勇軍で構成されている、いわば寄せ集めの軍隊です。砂のようにバラバラになるのも早いのですが、自由な動きで相手を翻弄するのが得意な混成軍はその力を十分に発揮しています。陳勝呉広の乱や黄巾軍など、民衆が集まった軍勢が突如正規軍を上回る力を出し始めるのは、古代中国の常道ですね。

そして、この勢いに押され、秦軍の総帥・蒙驁はこれ以上の魏国攻略を断念し、退却を決断します。この動きに対し、連合軍を指揮する趙の龐煖将軍は追撃を命じます。狙いは信陵君の連合軍でも突破できなかった函谷関をを抜いて、秦国都・咸陽への攻撃です。今まで、西方の端の国であったため、国都が脅かされることのなかった秦の民衆や廷臣に攻め込まれ、陵辱・虐殺される恐怖を味あわそうという目的です。

撤退を続ける秦軍とそれを追い立てる連合国軍の戦いの様子は原書のほうでどうぞ。

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第31巻 五カ国連合軍は秦軍を撃破し、五関から首都・咸陽を目指す

第31巻の構成は

第百八十一話 手みやげ
第百八十二話 武人の結界
第百八十三話 大なる戦功を求め
第百八十四話 総帥の綻
第百八十五話 五関攻め
第百八十六話 天が養う力

となっていて、総帥・蒙驁の率いる秦軍は、五カ国軍に追いまくられ、壊滅状態に近くなっています。

蒙驁の息子・蒙武は、途中まで進軍してきている秦王・政に蒙驁たちの守る榮陽城への援軍を進言するのですが、政は直属軍の能力をみるための戦闘をしかけるだけで、蒙驁軍を見捨て、さらには蒙驁を軍総帥から罷免します。どうやら自らの命令に忠実に六国への殺戮戦をしかけないのが不満のようですね。

この直属軍は盗跖軍も襲撃し、ここで、十代目の女性盗跖は命を落としてしまうことになるます。殺戮を愉しみと感じる直属軍が秦王の直下で動き始めるであろう、これからの戦争が怖いですね。

五カ国軍の進撃を、復活した麃公将軍が止めようとするのですが叶わず、連合国軍は、函谷関から秦領に攻め込み、軍隊を三分割して、秦の国都を守る五関を攻め落とし、首都咸陽へと軍を進めようとします。

秦王・政の祖父である昭王の頃は、鉄壁の守りを誇り、守備兵も多数配置されていた函谷館なのですが、政の軍略は六カ国へ攻め込んで、秦領内では戦わないことを本義としているので、現在では守備兵も少なく、門も開け放たれたままです。さて、この状況で、函谷関の「主」といわれた麃公将軍がどう戦うか、がこれからの読みどころとなります。

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レビュアーの一言

第30巻の最後のほうで、後に「皇帝」という中国で初めての称号を名乗る秦王・政が五カ国を滅ぼして何を目指しているのか、の一端が明らかになります。

織田信長といい、秦王・政といい、史上「暴君」と言われる君主の目指すところはなぜか似通っていますね。ついでに、織田信長が安土城という統治のシンボルを天下統一の過程の中でつくりはじめたことと、秦王・政が自らの中華統一のモニュメントともいうべき自分の巨大な陵墓を作り始めているのも同一基調といえるのかもしれません。

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