アイヌの金塊と土地権利書に対する「アシリパ」の決断は?=野田サトル「ゴールデンカムイ」第301話〜第314話(最終話)

アイヌの娘「アシリパ」と日露戦争の生き残りで「不死身の杉元」と呼ばれた杉元佐一たちが、極東アジアを舞台に、幕末の新選組の生き残りの土方歳三や日露戦争で頭蓋骨の上半分を失った情報将校・鶴見中尉率いる第七師団を相手にアイヌ民族が明治政府打倒のために集めていた大量の金の争奪戦を繰り広げる明治のゴールドラッシュストーリー『野田サトル「ゴールデンカムイ」(ヤングジャンプコミックス)』の第301話〜第314話(最終話)。

前話までで、第七師団と激戦となった五稜郭から脱出して、函館行きの汽車へ乗り込んだアシリパたちですが、ここで追跡してくる鶴見中尉たちと第七師団の後続部隊との最後の戦闘が始まります。アシリパは、先祖の残した北海道の大半の土地を領有する土地権利書と金塊を守り抜けるのかが問われます。

なお、今回のレビューは、週刊ジャンプ連載情報で書いているので、単行本版とは異なるところがあるかもしれません。

あらすじと注目ポイント

構成は

第301話 第二陣
第302話 車内暴力
第303話 暴走列車
第304話 歴史
第305話 迷い
第306話 特攻
第307話 ちんぽ先生
第308話 似た者同士
第309話 血濡れ事
第310話 祝福
第311話 アシリパの選択
第312話 分け前
第313話 終着
第314話 大団円

となっていて、 アシリパたちが乗り込んだ函館行きの列車には、第七師団の第二陣の応援部隊が乗っていたのですが、柔道の猛者「不敗の牛山」がその車両に押し入り、兵士を薙ぎ払っていきます。

その様子を見ていたアシリパから、列車に乗り込んできた鶴見中尉が土地の権利書を狙って襲いかかってきます。これに伴い、アシリパを守る杉元と鶴見中尉との戦闘が始まり、アシリパは座席に下を伝って、列車の前方へと逃れていき、第七師団の護送車両内では牛山・杉元vs鶴見・月島、土方vs鯉登の戦闘が展開されます。

さらに、機関車を運転する運転士と機関士を尾形が射殺し、列車は暴走を始め、逃げ場のない状況での戦闘が始まっていきます。

列車の上では、機関車側から登ってきた尾形と後方から登ってきた鶴見とが取引を始めています。師団に大損害を出した鶴見はこのままでは更迭間違いなしのため、尾形が第七師団内での出世と引き換えに、鶴見の権力を保持することを約束し、二人は共闘することとなります。ここで、車内にヒグマが侵入。車内の闘いをより混沌としたものにしていきますね。

そして、車内では月島軍曹が手榴弾を投下し、牛山は爆発から救うため彼女をかばって爆風で右上半身に大怪我を追い、ここで斃れることとなります。ただ最後の最後までアシリパを守れたことに満足しているようです。

鯉登少尉に頭をかち割られた土方は最後の力を振り絞って、第七師団の護送車両へ向かいます。彼の目指す敵は「ヒグマ」です。彼は一太刀、ヒグマに浴びせるのですが、第七師団の銃撃とセットでここで力尽き、杉元へ愛刀を預け、ここで斃れることとなります。

ここから、闘いの中心は汽車の二両目の尾形vs杉元vsヒグマに移ります。闘いはヒグマに襲われた杉元に不利で、銃器をもった尾形に有利に進みます。杉元を撃って、車両から蹴落とそうとする尾形に対し、矢を構えたアシリパの選択した途は・・という展開です。瀕死の状態の尾形が最後にみたものは、彼が忙殺した弟・勇作によって自分の人生を振り返らせられるのですが、その詳細は原本で。

尾形を斃した後、最後の戦闘は鶴見中尉との直接対決です。
車両内で月島の投げた手榴弾による爆発の混乱の中、アシリパは月島によって権利書を奪われ、権利書は鶴見中尉に渡ります。この権利書を取り返すため、アシリパが単身で鶴見中尉を追いかけるといいはり、さらに杉元と白石に、金塊の埋まった井戸はそのままにしてほしい、と依頼します。「黄金のカムイ」がある限り、争いが絶えないことを思っての発言ですね。

もちろん、それを聞いた杉元が、アシリパを一人で行かせるはずもなく、彼女を抱えて機関車へ飛び乗り、最後の対決は鶴見中尉vsアシリパ+杉元で進められていくことになります。

ここで、鶴見中尉は、金塊はアシリパたちに譲るものの、土地の権利書は自分に渡すよう交換条件を出してきます。
鶴見中尉の次の目的地は「満州」で、ここで勢力をはる日中戦争を引き起こした関東都督府陸軍部守備隊、後の関東軍に入り込み、軍内で力をつけて捲土重来を狙っています。中央政府を牽制する重要な武器として、この「権利書」を使おうというつもりですね。もし鶴見中尉の邪魔をするなら、この土地権利書を外国にわたすぞ、というところです。

そして、この引き換え条件を出された杉元の選択は、というところですが、少しネタバレしておくと、ご想像のとおり優先するのは「アシリパさん」の安全と想い。彼はアシリパを仲間のほうへ放り投げ、鶴見中尉もろとも機関車で函館湾に突っ込んでいきます。

で、最終話は「ゴールデンカムイ」の物語の後日談ですね。手術によって眼が見えるようになった「梅ちゃん」のところを杉元が訪ねてきます。そこから、鯉登中尉や月島軍曹、アシリパや杉元のその後が描かれるのですが、アナザーストーリーになりそうな「白石」の話もでてきていて・・というところで物語は「大団円」を迎えていきます。

レビュアーの一言

最終盤でアシリパさんのとった行動と結末については、賛否両論あるのですが、作者が単行本の刊行の際には加筆修正も加えることを明言されていますので、最終結論は単行本の最終巻発刊まで待たないといけないのかもしれません。

当方としては基本的にハッピーエンド好きなので、杉元の命を奪おうとする尾形に対して、初めて己に課した「不殺」の戒めを解放するアシリパさんと

というところで満足しています。ゴールデンカムイの物語はここで「完」なのですが、白石の活躍するアナザーストーリーなぞも期待したいところです。

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