新型コロナウィルスの感染がおきる前、職場における効率化のやり玉に一番あがっていたのが「会議」であったことに異論のある方はいないと思います。
その効率化の手法として、会議時間を強制的に絞るであるとか、立って会議をするとか様々な提案があったのですが、新型コロナが蔓延して、突如、ZOOMなどのテレビ会議がビジネス界を席巻し始めると、テレビ会議でのプレゼン方法とか、見栄えなどの方向に議論がいってしまい、会議の効率化の話はどこかにすっ飛んでしまった感じがあります。
さらに、今のコロナの感染状況下で、コロナ以前の対面中心、オフィス中心の仕事に「回帰」しようとする中で、昔ながらの「会議」が再び復活してきている感すらあります。
良識ある改革派ビジネスパーソンは、ここらで「会議の効率化」について再び思い起こした方がいいと当方は思うのですが、その参考資料としておススメするのが本書『佐藤将之「amazonのすごい会議 ジェフ・ベゾスが生んだマネジメントの技法」(東洋経済新報社)』です。
構成と注目ポイント
構成は
はじめに なぜ「アマゾン」の会議に学ぶのか?
CHAPTER0 改善に着手する前に考えたいこと アマゾンが「減らしたい会議」「増やしたい会議」
1 「情報伝達会議」は減らす
2 「ワン・オン・ワン」を増やす
3 コロナ禍は会議を見直す絶好の機会
CHAPTER1 会議の効率化は資料作りから始まる アマゾン流資料作成のルール
1 資料はナレーティブで書く
2 会議資料は「2種類」に統一する
3 「1ページャー」
4 「6ページャー」
5 読みやすい文章を書く2つの技術
6 提案型資料はシンキング・バックワーズで考える
7 新サービスの説明資料は「プレスリリース形式」で書く
8 アマゾンの資料は進化する
CHAPTER2 最速で最高のジャッジを下す アマゾン流意思決定会議
1 プロジェクトリーダーが会議のオーナーになる
2 「3つのW」で会議の目標を共有する
3 会議は「沈黙」から始める
4 オーナーの3つの仕事
5 会議を活性化させる「リフレーズ」「パーキングロット」「バルコニー」
6 べゾスが嫌うソーシャル・コヒージョン
7 Have Backbone; Disagree and Commitの精神を全員が持つ
8 会議の最後にメジャー・オブ・サクセスを設定する
CHAPTER3 新規事業や改善提案が継ぐ次に生まれる アマゾン流アイデア出す会議
1 アマゾンは「ブレスト」が大好き
2 アマゾン流ブレストのルール
3 プレストを効率よく進めるコツ
4 アマゾン流オフサイト・ミーティング
5 オフサイト・ミーティングで行われるリーダー研修
6 オフサイト・ミーティングの落とし穴
CHAPTER4 プロジェクトを確実に前進させる アマゾン流進捗管理会議
1 アマゾンの推進力支える「メトリックス」
2 すべて数字に落とし込む
3 会議での決定事項を推進させるメトリックス・レビュー
4 人の善意に頼って仕事をせず仕組み化する
5 PDCAを回すサイクルは最長でも1週間
6 プロジェクトの最後を締めるポストモーテム
CHAPTER5 会議を機能&活性化させるアマゾンのOLP
1 Ownership(オーナーシップ)
2 Customer Obsession(顧客へのこだわり)
3 Insist on the Highest Standars(常に高い目標を掲げる)
4 Think Big(広い視野で考える)
5 Drive Deep(より深く考える)
6 Bias for Actiom(とにかく行動する)
7 Learn and Be Curious(学び、そして興味を持つ)
8 OLPを社内で徹底する
CHAPTER6 我が社の会議、どこから手を付ける?会議をスリム化するヒント
1 開催回数を減らす
2 出席者を減らす
3 時間を減らす
4 出席頻度を減らす
となっていて、CHAPTER0が「会議総論」、CHAPTER1が「会議の資料作成編」、CHAPTER2~4がアマゾン流の会議の進め方、CHAPTER5がアマゾンの経営手法論という構造になっています。
ビジネス書なので「読み方」はそれぞれのビジネス環境やポジションに沿った方法でいいと思うのですが、アマゾン流の経営手法を勉強するというのではなく、Amazon流の会議手法の要点をつかむ、という目的で読むなら、CHAPTER1で「資料作成」について根幹をつかんでおいて、CHAPTER2~4でエッセンスをすくいとるという読み方がいいように思います。特に「1ページャー」「6ページャー」の考え方や、
「会議の資料は箇条書き禁止」で、全て文章で書くスタイルに統一する
といったあたりや「意思決定会議」における
一般的な組織であれば、会議資料の作成者が他の出席者に議案の概要の説明を求められることと思います。
しかしアマゾンではそうはしません。まず、 目の前にある会議資料を各自で黙読するのです。事前に資料をメール出で送付した場合でも、1ページャーなら5分、6ページャーなら15分間くらい、必ず読むための時間をとります。
このときにに重要なのが、 沈黙を保つこと。一通り目を通してもらう間、質問は一切受け付けません。
といったあたりは、ZOOM会議が主流になってきた今でも参考にしたほうがいい手法だと思います(ZOOMの無料版だと制限時間が短くなった上に、読む時間で食われてしまうので気が気ではないでしょうが)。
テレビ会議で各人へ配布する資料作成の労力が省けるようになったせいか、どかんと大部な資料をメールで送りつけて、さらにどこ説明しているか定かではない説明がえんえんと始まる、というリアル会議とテレビ会議の悪いところをミックスしたような会議を経験したことがあるので、ここらは徹底が望まれるところでありますね。
そして、「べゾスが嫌うソーシャル・コヒージョン」では、アマゾンの総帥・べゾスが、足して2で割るような結論の出し方や、会議出席メンバーの社会的なしがらみに配慮した結論出しを嫌っていた、というあたりは、彼の性格らしいのですが、日本の会議でやろうと思えば、少し勇気をふるわないといけないかもしれません。
さらに、巻の後半にいくに従って、アマゾン流儀が強くなる感じがするので、そこはお好みに応じて取捨選択すればいいかなと思いますが、「KPIと誤解して、KGI(重要目標達成指標)を追うな」といったところや「ビジネスはすべて数字で表現できる」といったキーワードは見逃さないようにしておきましょう。
レビュアーの一言
「効率的な会議」というのは、見果てぬ夢のようなところがあって、様々な解決手法が紹介されるのですが、どれも決定打にならず、毎年、おなじ不満を抱えてしまっているのではないでしょうか。
「アマゾン流」だけが「正解」ではないでしょうが、「正解」の一つであることには間違いないところなので、新型コロナの感染が下火になって、「リモート」から「オフィス」への大号令の声は喧しくなり始めている今、オフィス・ワーク時代の長年の課題解決に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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