セシルは王宮を去り、ケンブリッジへ入学。そこで運命的出会いが・・=こざき亜衣「セシルの女王」2

イギリスが強国スペインを破り、世界を股にかけた超大国として名乗りをあげはじめたのが「エリザベス1世」の時代。実は、カトリックとプロテスタントが血を血で洗う抗争の時代でもありました。この世界史上最も有名なイギリスの「王」といっていいエリザベス女王から信頼の厚い、忠実な臣下として仕えた「ウィリアム・セシル」が、一介の郷紳(ジェントリー)の身分からイギリス政界を動かす重臣へと成り上がっていく物語「こざき亜衣「セシルの女王」(ビッグコミックス)」の第2弾です。

前巻では、ヘンリー8世の衣装担当宮内官である父について宮中へ出仕したウィリアムは、正妃キャサリンを離別させて後釜に座ったアン・ブーリンと出会い、彼女が産んだ王女・エリザベスに仕えることを約束したのですが、今巻では、宮中の政争に巻き込まれ、新しい人物との出会いが生まれていきます・

あらすじと注目ポイント

構成は

第7話 泣かない女王
第8話 ナイト
第9話 世界一の女王様
最10話 新世界
第11話 かっこい?
第12話 カトリックとプロテスタント
第13話 カップ・アンド・ボール
第14話 ロンドン談判

となっていて、冒頭ではお漏らしをしながらも泣きもせず、仏頂面のエリザベスのもとを正妃キャサリンの娘・メアリーが訪ねてくるところから始まります。

メアリーは母キャサリンの薫陶で敬虔なカソリックとなるのですか、弟のエドワード6世の死後、内戦を経て王位に付いた後、プロテスタントを弾圧し「ブラディ・マリー(血まみれマリー)」と呼ばれた女王となります。

ちなみに、ウォッカとトマトジュースをベースにしたカクテル「ブラディマリー」は彼女にちなんだものと言われてます。

本シリーズでは、メアリーは少しエキセントリックで_アン・ブーリンやエリザベスに敵意を持つ女性という描かれ方をされているのですが、母親・キャサリン妃が男子ができないためにローマ。カトリック教会の反対を押し切って離婚されたり、自らも突然庶子扱いとされ、プリンセスの地位を剥奪された上にエリザバスの侍女とされるといった父・ヘンリー8世のひどい仕打ちを考えるとやむをえないかもしれません。

ちなみに、メアリーはスペインのフェリペ2世と結婚するまで、ヘンリー8世によってあちこちの王族と婚約しては解消するということが繰り返されているのですが、彼女自体は非常な美人なことが他国にも伝わっていたようです。

ウィリアムはヘンリー8世から男児を生むよう圧迫をうけるアン・ブーリンや立場の不安定なエリザベスに同情して、彼女たちを熱心に世話します。しかし、ウィリアムがアン・ブーリンに深入りすることによって、セシル家がブーリン派とみなされて政争に巻き込まれてしまうのを嫌がった父親によって、宮廷から引きあげて故郷に帰らされた後、ケンブリッジ大学のセント・ジョン校へ、幼馴染のラルフとともに入学することとなります。

宮廷を引き上がる前に、ロンドンの町中の食堂でのクロムウェルとの会話で、これからの指針と目標を見出すこととなるのですが、詳しいところは原書のほうでどうぞ。

そして、ケンブリッジ大学で、彼はクロムウェルの批判者であるフィッシャー司教と出会ったり、大学内でのカトリックとプロテスタントとの激しい対立に巻き込まれたり、と国教会派が主流の王宮内ではできない経験を積むことになります。

例えば、彼は後に結婚して一児をもうけるメアリー・チークと出会ったり、カンタベリー大司教となるパーカー、大法官となるベーコンなど後に彼が政界で活躍する際の協力者たちに出会うこととなります。

本書では、ウィリアムの歓迎会での場面が印象的ですね。

しかし、こうした大学生活もつかの間、アン・ブーリンとの結婚を認めないローマ・カトリックを支持する国王に不満をもつ者たちを取り締まるため、州長官の衛兵が、フィッシャー司教のいる教会へ査察と称して押し寄せてくるのですが・・と展開していきます。

レビュアーの一言

本巻では、カトリック教会で飢えている孤児のぺぺに食事を提供する場面で、ラルフが

と、プロテスタントへの疑問を呈しているところがあります。教科書的な観点からいうと、腐敗したカトリック教会を糺してルター派などのプロテスタントが生まれた、と良い場面ばかり強調されていることが多いのですが、その時代的な観点からはそう単純なものでもなさそうですね。

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