人見知りの安楽椅子探偵は「猟奇事件」の謎を解く=東川篤哉「居酒屋「一服亭」の四季」

古都・鎌倉の鶴岡八幡宮の参道や大鳥居といった観光スポットを離れ、住宅街の真ん中にひっそりと存在する隠れスポット。そこにいる、とんでもなく人見知りな女性店主は、客が来ると飛び上がって驚くコミュ障なのですが、実は不可解な事件の謎を解く「名探偵」で・・という、安楽椅子探偵の「安楽椅子(あんらくよりこ)」の謎解きシリーズの第2弾が本書『東川篤哉「居酒屋「一服亭」四季」(講談社)』です。

前シリーズの舞台は、昭和の初期にタイムスリップしたようなレトロな喫茶店だったのですが、今回の舞台は、昭和の面影を残す一軒家の中を改修したような「居酒屋」で、推理を展開するのは第一作とおなじ名前の「安楽椅子」という女性なのですが、「二代目」と名乗っているいるで、前作の「ヨリ子」さんの縁戚かなんかだと思われます。

あらすじと注目ポイント

収録は

第一話 綺麗な脚の女
第二話 首を切られた男たち
第三話 鯨岩の片脚死体
第四話 座っていたのは誰?

の四話。

第一話は、この二代目「安楽ヨリ子」のデビューとなる話で、会社が倒産したため、母の知り合いの貿易会社の社長の別荘に就職の斡旋を頼みにきた「君鳥翔太」という青年が、できわす四肢をバラバラにした猟奇殺人の謎解きです。

その事件というのは、君鳥がその別荘に泊まった翌日、その貿易会社の社長の愛人とおぼしき、美しい脚をもった女性画家の住む山小屋を訪ねたところ、そこで、四肢を切断された状態のピンクのTシャツと青い短パンを身に付けた女性の死体を発見します。しかし、近くの駐在所の巡査を連れて再度やってきたときには、飛び散った血の跡は残っていたのですが、その胴体は消えていたという事件です。

解体された死体は、その後、女性画家の住んでいた山小屋の傍の滝で見つかったのですが、再就職した先の二流出版社「放談社」の編集長から、そこで出版している三流週刊誌「週刊未来」の記事にするため、鎌倉の「一服亭」でアドバイスをもらうよう命令され、そこで、このシリーズの探偵役である二代目の「安楽椅子(あんらくよりこ)」に出会う、という設定です。

で、この「ヨリ子」が居酒屋の店主兼料理人であるながら、料理の腕はさほどでもなく、人見知りが激しいため、店には脚はほとんどいない、という、秘密裡に「推理」を聞くには絶好の環境です。ここで「ヨリ子」さんは「水」にみせかけたコップ酒を煽りながら、推理を披露するのですが、そのスイッチとなるのが二品目以降に登場する料理です。

第一話の謎解きのヒントとなる料理は「マグロを昆布でまいてカツオの出汁で煮込んだ昆布巻き」なのですが、実は中が空洞という仕掛けがあって・・という展開です。

ちなみに、第一作では、「甘いですわね」という言葉とともに繰り出される他の登場人物の推理へのディスりが謎解きのスタートだったのですが、今回は「しょっぱすぎる」などといった料理系のディスりが特徴です。さらに、「猟奇事件ではなく、料理事件ですわ」という名言も登場してきます。

第二話の「首を切られた男たち」は、「ナポリ庵」という流行っているイタリアンレストランでの店の経営方針のもつれによる殺人事件の謎解きです。その殺人事件の起きた時、現場には店を首になった腹いせに盗みに入った元社員が隠れていて、隙間から殺人に様子を目撃しています。

それによると、若社長と料理長が事務所内の社長室で言い争っている、一方が相手を拳銃で射殺したところまでを見て、怖くなってその場を逃げ出します。後日、その現場の様子を確認すると、なんと被害者は首を切られて、社長の椅子に座った状態で死んでいて、その首が現場にないという猟奇的なものです。で、被害者は若社長だろうという線で捜査が始まるのですが、当人はひょっこり姿を現して・・というものです。

今回、ヨリ子さんは君鳥の推理を「歯ごたえのない推理」とぶった切った上で、「自家製こんにゃく」の料理を出してくるのですが、その謎解きは・・という展開です。

このほか、キャンプ場の近くの海岸にある巨岩の上で、右足を切断されて男性が死んでいた事件(「鯨岩の片脚死体」)とか、箱根の温泉リゾートの密室状態の「離れ」の床に十個のパーツに切断されて、男性の死体がぶちまけられていた事件(「座っていたのは誰?」)が、一風変わった料理とともに(けして、豪華でも、美味そうでもない料理なのですが)、謎解きされていきます。

居酒屋「一服亭」の四季
鎌倉の路地裏でひっそりと営まれる居酒屋「一服亭」。人見知りな女将は、実はと&...

レビュアーの一言

前作の舞台の「潤喫茶 一服堂」はこの「一服亭」の近くでまだ営業しているようですが、店主は「クラシックなエプロンドレスっを纏った年齢不詳の美女」に代わっていて、人見知りどころか、かなり感情の激しい女性になっています。

前作の最終話では、三十年ぶりに横須賀一の美人刑事といわれた夕月茜刑事が、「純きっさ一服亭」にやってきて始まる推理譚になっていたのですが、今回の探偵役である「二代目 安楽椅子(ヨリ子)」は一代目の縁戚っぽい雰囲気を醸し出しています。

酒癖の悪さは、一代目の「楚々」とした雰囲気とはかけ離れてはいるんですが・・

【スポンサードリンク】

コメント

タイトルとURLをコピーしました