町を守る老人とリベンジ女性請負人がストーカー排除の共同作業=川瀬七緒「桃ノ木坂互助会」

横浜市の横浜埠頭にほど近い、昔からの住民と新しくできた分譲マンションやアパートの住民が混じり合って住んでいる「桃ノ木坂町」を舞台に、古くからの平穏な暮らしを妨げる移住者の追放を続けている老人たちの活動の中に紛れ込んできた、「リベンジ」を請け負う娘とが巻き起こす騒動を描いたのが本書『川瀬七緒「桃ノ木坂互助会」(徳間文庫)』です。

あらすじと注目ポイント

構成は

第一章 曹長と選抜メンバー
第二章 究極の行動療法
第三章 因果の数字
第四章 ノスタルジアンシンドローム
第五章 夕凪の町

となっていて、物語は70歳過ぎで、この町の古くからの住人である元海上自衛隊員の「光太郎」が、彼の同級生の「保科菊美」という女性を、この町に20年以上住む住人で組織する「桃ノ木坂互助会」の「特務隊」にスカウトしようとしているところから始まります。

この特務鯛というのは、この桃ノ木坂町に新しく引っ越してきた住民たちの中で、ゴミ捨てのルールを守らなかったり、古くからこの町に住んでいる住人(ほとんどが老人なのですが)に身体的、精神的を問わず危害や圧迫を加える者に、いやがらせをして追い出すというボランティア活動をしている組織、という設定です。そのいやがらせというのは、対象者のアパートの郵便受けにゴミを戻したり、といった手法なのですが、意外にこれがダメージを与えるらしく、今までも数人の転居者を生み出すという実績を誇っているようです。

そして、この「桃ノ木坂互助会特務鯛」が次のターゲットとして狙いをつけたのが、武藤という男で、彼は女性の老大家を脅したり、家賃を滞納したり、ゴミ捨てルールを無視したり、と特務隊が追い出し活動に入る典型的な人物なのですが、光太郎たちがその活動を始めると彼は光太郎たちに逆襲を加えることをほのめかす言動をしたり、実際に特務隊のメンバーのひとりを歩道橋で転落させて怪我をさせるといいった危害を加えてきます。
誰かが、光太郎たちの活動を武藤に密告したのでしょうか?、光太郎の周辺に良く現れるようになった林和歌子という派手な老人が一番疑われるのですが、といった展開です。

ここで物語のほうは「三矢沙月」というあらたな女性が登場します。彼女は思春期の頃、父母に家を出ていかれてしまい、それ以後、精神が不安定になった引きこもりになってしまった姉・優月と一緒に暮らしているのですが、彼女の商売は、精神科医というキャリアと知識を活かした「リベンジ」です。
彼女は、ストーカー被害を受けた女性たちの依頼を受けて、ストーカーたちに幻聴や幻覚をみさせ、精神的な圧迫を加えて、睡眠障害や精神的な不調を抱えさせて、自殺に追い込むという商売をしています。その「仕事」の様子は彼女の初登場場面で、けっこう詳しく描かれているので、ぜひ原書のほうで確認してくださいね。

そして、今回、彼女がセラピストによるサポートセンターで見つけた城内響子という女性から受けた依頼のターゲットと言うが、桃ノ木坂町に現在住んでいる「武藤」という男性です。沙月のポルターガイスト現象をはじめとした、ターゲットへの仕掛けが始まるのですが、武藤は、この仕掛けを光太郎たちの仕業と勘違いして、光太郎と沙月の動きがオーバーラップしていくこととなります。

そして、攻撃的になってきた武藤は、誰かからの密告によって沙月と響子を罠にはめ、二人を殺害しようとするのですが、ここで光太郎たちも逆襲を始め、ということで、武藤vs沙月+光太郎の大バトルシーンが展開されていきます。

さらに最後半では、沙月の推理で武藤に密告していた人物が明らかになるのですが、少しネタバレしておくと、林和歌子というバーさんではなく、予想外の意外な人物です。そして、その密告者の行動は、今回だけではなくて・・という筋立てです。

Bitly

レビュアーの一言

最初の出だしだけ読むと、老人たちの古くからの「町」を守るための「ノスタルジック」な活動と、それに抵抗する新住民との対決を描いたサスペンスかなと思わせるのですが、「リベンジ」請負の沙月の登場で、緊迫度と凶悪度が増してくる展開になってきて、怒涛のような完結へと一気にもっていかれます。
最後のあたりは、桃ノ木町を守る光太郎と、姉を守る沙月とのコラボがこれからもありそうな雰囲気を漂わせています。

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