農場の争乱はクヌート軍圧勝だが、トルフィンの和平工作が動き出す=幸村誠「ヴィンランド・サガ」12~14

11世紀のイングランドからノルウェー・デンマークにかけたヨーロッパ北部を舞台に、その猛々しさと強さで巨大な北海勢力圏を築き上げたヴァイキングの戦いと、アイスラランド生まれのはぐれ者のヴァイキング「トルフィン」の軌跡を描いたシリーズ『幸村誠「ヴィンランド・サガ」(アフタヌーンコミックス)』の第12弾から第14弾。

前巻まででデンマークの農場に農奴として生活しながらも、ヴァイキング時代の殺戮の悪夢に悩まされ続けてきたトルフィンにも友人と呼べる存在ができ、解放奴隷として自由になる途も見えてきたのですが、ここでイングランド経営の費用捻出のため、ケティル農場の富に目をつけたクヌート王の侵略の手が農場へと伸びてきます。

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第12巻のあらすじと注目ポイント

第12巻の構成は

第79話 暗雲の先触れ
第80話 ガルザル来襲
第81話 嵐
第82話 縛め
第83話 償い
第84話 都合のいい夢
第85話 対決
第86話 帰れないふたり

となっていて、冒頭では、前巻の中ほどで近くの農場から逃亡してきた奴隷がケティル農場に侵入してきます。彼の正体は、農場主・ケティルのお気に入りの女性奴隷・アルエイズの元夫・ガルザルです。

アルエイズとガルザルは以前、スウェーデンに住んでいたのですが、その集落の近くで鉄が発見されたことから、その争奪戦に参陣したまま連絡がとれなくなっていた、というもの。アルエイズのほうは、その後、集落を襲ったヴァイキングに捕まり、子供と離れ離れになって、この農場に売られてきた、という経緯です。

ガルザルの方は戦で捕虜になった後、どういう生活をしてきたかは明らかになっていませんが、同じように奴隷としてデンマークまで売られてきていて、その厳しい生活の中で精神に変調をきたし、アルエイズを取り戻して故郷へ帰るという妄想にとりつかれ、ケティル塗嬢へ侵入してきた、というところですね。

逃亡奴隷で不法侵入者でもあるガルザルが、農場の守備をしている「蛇」たちに捕まり、納屋に監禁されるのですが、昔の恋情が甦ったアエネイズは、ガルザルの怪我の治療をし、彼とともに旅立つことを決意するのですが、ガルザルの傷は重く・・という展開です。

このガルザルとアエネイズの逃避行にあわせて、二人を逃そうとするトルフィンと「蛇」との間でバトルになり、トルフィンが以前の場ヴァイキング時代の戦闘の技を思い出していくのですが、詳細は原書のほうで。

第13巻のあらすじと注目ポイント

第13巻の構成は

第87話 最初の手段
第88話 罰
第89話 開戦前夜
第90話 飯の代金
第91話 ケティル農場の戦い
第92話 百数える間
第93話 戦士の誕生

となっていて、冒頭では第12巻で市場でクヌート王軍の兵士を斬り、さらに尋問に向かったクヌート王の従士隊の兵士を斃した、トールギルとオルマール兄弟を追って、クヌート王軍が動き始めています。クヌート王の狙いは二人の責任を追及して、ケティルから農場を没収しようという魂胆なのですが、ケティルは、息子の軽はずみは行動で、今までハロルド王への貢物と熱心な開墾で築いてきた農場が没収され破産に追い込まれそうになったことで、

呆然自失の状態です。

彼の心を癒すことができるのはお気に入りの女性奴隷・アエネイズだけなのですが、彼女が手引きした元夫の奴隷によって、農場の多くの人が殺され、さらに彼女自身も逃亡を企てたということを聞いて、怒り心頭に達し、彼女に対して手ひどい暴行を加え始めます。今まで温厚だったケティルが豹変する様子は、それだけアエネイズのことを愛していたことの裏返しなのかもしれません。

一方、ケティル農場の接収を目論むクヌート軍は、軍船を連ねて上陸し、海岸べりにヨーム戦士団と従士団で構成した戦陣を構築します。これを用心棒の「蛇」と用心棒の兵士、そして村から集めた男達で組織する農場勢が迎えうつのですが、訓練されたクヌートの軍勢の敵ではありません。大根をきるようになぎ倒され、蹴散らされていきます。

もはや虐殺以外のなにものでもない、という戦況の中、従士隊のメンバーだったケティルの長子・トールギンが前方に注力するクヌート軍の裏をかいて、背後からクヌート王の首を狙って忍び寄るのですが・・といったところが農場勢の最後の抵抗ですね。

第14巻のあらすじと注目ポイント

第14巻の構成は

第94話 降伏勧告
第95話 忘れ物
第96話 無敵
第97話 反逆の帝王
第98話 ふたつの楽土
第99話 船出
第100話 帰郷

となっていて、農場勢を完膚なきまでに叩き伏せたクヌート軍はケティル一族の投降と国外追放、農場の明け渡しをを条件に降伏することを勧告してきます。

自分の行動によって多くの被害者がでたことを反省した当主代理・オルマールは、兄・トールギンや母親の反対を押し切って、クヌート王に降伏することを決意しるのですが、ここでケティル一家とは別行動をしているトルフィンが、独自に、クヌート王とケティル農場のと講和を調停しようと動き始めます。

とはいってもクヌート王の周囲は多くの軍兵や護衛の兵で守られていて、彼と対面するために、護衛の兵士の鉄拳を100発受けても倒れない、という「しごき」のようなテストを受けることとなります。

これを乗り越えてきたトルフィンのある言葉を聞いて、クヌートはケティル農場だけでなく、他の農場の接収も白紙に戻し、さらに、イングランド駐在軍の縮小とイングランド撤収を決意するのですが、彼の考えを変えたトルフィンの言葉が何だったのか、については、マンガのほうで直接お確かめくださいね。

そして、このケティル農場の争乱を収めた御、十数年ぶりに故郷アイスランドへ帰還するのですが、姉ユルヴァから、愛の鉄拳を見舞われることになってしまうのですが、詳細は次巻で。

レビュアーの一言

トルフィンとクヌートの面談の場面では、クヌート王が岸に打ち寄せる波に対して「波よ静まれ」と」命じたという「クヌートと波の説話」を登場させています。

このエピソードは、波などの自然現象を起こしている「神」の力の前では世俗の王の力など小さなものだ、と言うことを訴え、神への敬意を表わしたいう説が有力なのですが、本書では、戦乱と略奪がおさまらない現世が続きながら、一向に「救い」をもたらさない「神」に対し、神の定めに逆らい、人間の力を束ねて、神の楽園に行けないだろうヴァイキングにも楽土を提供する決意を示したもの、と解釈しています。

このクヌート王の説話の現代人的解釈も興味深いです。

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