トルフィンはヴィンランドに入植。先住民たちと交流し、ヒルドの許しを得る=幸村誠「ヴィンランド・サガ」25・26

11世紀のイングランドからノルウェー・デンマークにかけたヨーロッパ北部で、その猛々しさと強さで巨大な北海勢力圏を築き上げたヴァイキングたちの中で勇名を馳せた父を殺され、その復讐のため、クヌート王の軍に参加するが、仇の死をきっかけに「ヴィンランド」に楽園を築こうとするアイスランド生まれのヴァイキング「トルフィン」の軌跡を描いたシリーズ『幸村誠「ヴィンランド・サガ」(アフタヌーンコミックス)』の第25弾から第26弾。

前巻までで、ハーフダンからもらったイッカクの角をギリシアで売った金で船団を組織してアイスランドへ帰還し、ヴィンランド開拓への準備を始めたトルフィンたちは、いよいよヴィンランドの開拓の旅に出発するのですが、そこは先住民とのトラブルの危険を孕んだ土地でもあります。

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第25巻 トルフィンはヴィンランドへ到着し、開拓を始める

第25巻の構成は

第176話 西方航路⑩
第177話 西方航路⑪
第178話 西方航路⑫
第179話 西方航路⑬
第180話 西方航路⑭
第181話 村の名前は
第182話 いちばん恐ろしい男
第183話 先住民
「アサシン・クリード・ヴァルハラ」コラボ番外編

となっていて、冒頭では第1次開拓団を乗せたトルフィンの移民船団がグリーンランドへ立ち寄るところから始まります。トルフィンたちとアイスランドに帰還したときはまだしっかりしていたレイフじいさんだったのですが、船を降りた途端、老け込んでしまっています。おまけにレイフの世話をしていたギョロも持ち帰った資金を元手にギャンブル三昧の日々をノルウェーでおくっていくようです。(もっとも、ギョロはこの後、博打場の娘・フレイヤに有り金全部持ち逃げされ、トルフィンたちの開拓団に加わることになるのですが)。

ただ、レイフは、彼がヴィンランドへたどり着いた20年前(西暦1000年頃)の状況はまだ覚えていて、トルフィンに先住民のパイプを与え、彼らの作法を伝授しています。

そして、グリーンランドを出港したトルフィンたちは数日の航海の後、当時、マルクランドと呼ばれた地に到着します。山岳地帯の森林地帯で、現在のカナダのラブラドール地方あたりではないかと推定されています。この地に、ヴァイキングたちが定住した正式の記録はないのですが、木材調達目的で来ていたのであろうと推測されています。
トルフィンたちは、ここに開拓団の2割に相当する13人の分遣隊を残し、ヴィンランドへ向けて出発します。

「ブドウの地」あるいは「草原の地」と呼ばれたヴィンランドの位置については諸説あって、一番有力なのは現在のカナダのニューファンドランド島なのですが、この物語では、レイフ・エリクソンの到着地よりさらに北アメリカ大陸に近づいたプリンスエドワード島の、入り江があって、真水があって、森があり、放牧や畑に向いた平野のある土地へ入植を始めたことになっています。

ここで、森を伐開し、羊を放牧して、定植地を「アルネイズの村」と名付け、平和に開拓を始めるのですが、物語の後半では、密かに剣を持ち込んでいるイーヴァルたちとトルフィンとの間で水面下での対立が始まっていて、これが今後に陰を落としていくのは間違いないと思われます。

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第26巻 先住民と交流が始まるが、預言者は不穏な予知夢をみる

第26巻の構成は

第184話 ウーヌゥ
第185話 ニスカワジージュの夢
第186話 コーデリアの懊悩
第187話 ヒルドと森の神
第188話 ミスヴェゲブージュの秘術
第189話 ラグナロク問答
第190話 その日

となっていて、前巻の最後で、ヴィンランドの先住民たちとファーストコンタクトしたトルフィンは彼らと交流を始めます。本書では、この部族は「ミクマク族」とされていて、ニューファンドランド島からプリンスエドワード島にかけて住んでいた部族ですね。円形の樹皮小屋に住み、森での狩猟や海での漁や貝採取で食糧を調達していたほかトウモロコシの栽培も行っていました。

ミクマク族とトルフィンたちノルド人たちとの交流は平和裏に進んでいくのですが、部族の宗教指導者「ミスグェゲブージェ」と「ニスカワジージュ」はなにか不吉な感触を得て、未来を予見する儀式を始めます。
彼らがどのような「未来」の夢をみたのか、そしてそれがミクマク族とトルフィンたちの今後にどういう影響をもたらすのかについては原書のほうでどうぞ。特に物語の後半では、ヴァイキング上がりのヴァルガルがアイスランドへ行き、穀物の種と第二次移民団を連れてくるはずですので、これがどういう影響をもたらすか次巻以降を見守りたいですね。

ついでにいうと、ニスカワジージュはトルフィンたちの部落の中に迷い込んでしまったところで、ギョロと出会い、双方が言葉を教え合い、二人がそれぞれ異民族との通訳兼外交官の役割を果たしていくものと推測されます。

そして物語の最後半では、機械技術の知識を活かして、ヒルダが脱穀機を製作したりして村の重要人物となっていっています。そして、開拓地の小麦が収穫され、初めてのパンが焼かれた日、ある決断をします。それは、ヴァイキング時代のトルフィンに家族を殺されてからずっと抱えていた怒りと復讐の呪いを解き放つもので・・ということで感動の場面は原書のほうでどうぞ。

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レビュアーの一言

レイフ・エリクソンのヴィンランド(北アメリカ大陸)到達は、ずっと伝説として扱われていたのですが、1960年にニューファンドランド島北部で、鍛冶場跡や製材所・住居地の遺構や鉄釘が発見され、さらに西暦1000年頃の金属製の刃物で伐採した木片が発見されたことから、ヴァイキングに代表されるノルド人は、コロンブスの北アメリカ大陸到達より500年も早く北アメリカに到達し、そこに入植して生活していたことが定説になってきています。

トルフィンたちもその先駆者の一人といえますね。

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