19世紀ロンドン一の猟奇事件「ジャック・ザ・リパー」事件の真相を暴け=「憂国のモリアーティ」7・8

若干21歳でイギリスの名門・ダラム大学の数学教授に抜擢されたほどの類まれな頭脳と、あらゆる分野にわたる知識をもち、世界一有名な名探偵「シャーロック・ホームズ」の最大の敵役で、ロンドンで迷宮入りする事件の過半数は彼の犯行と噂される犯罪卿「モリアーティ教授」の犯罪と彼らの真の目的を描く、クライム・ストーリー「憂国のモリアーティ」の第7弾~第8弾。

前巻で、イギリス王宮から盗み出したイギリスのヨーロッパにおける政治的な地位を揺るがせる内容の過去の手紙を盗み出したアドリーン・アドラーは、シャーロック・ホームズを利用して、身の安全を確保しようとしていたのですが政府から狙われたことから、犯罪卿・モリアーティ兄弟の助けを借り、命を救われたことから彼らの仲間になります、今回は彼女が新しいメンバーとして、モリアーティ・チームに加わり、この当時の最凶の殺人鬼「ジャック・ザ・リパー(切り裂きジャック)」の謎に迫っていきます。

あらすじと注目ポイント

第7巻 モリアーティは「切り裂きジャック事件」の真相に気付く

第7巻の構成は

#24 モリアーティ家の使用人たち
#25 ホワイトチャペルの亡霊 第一幕
#26 ホワイトチャペルの亡霊 第二幕
#27 ホワイトチャペルの亡霊 第三幕

となっていて、最初の「モリアーティ家の使用人たち」では、新たにメンバーに加わった「ジェームズ・ボンド(アイリーン・アドラー)」がモリアーティ・チームのメンバーとして戦力になるかどうか、知らないうちにシティでおきる銀行でおきた銀行強盗の対応でテストされる話です。

当初は自分勝手に動いているように見えて、実はチームとして最高のパフォーマンスになるよう個人個人が判断して動いていることに気付いたところで、ボンド(アドラー)の力も最大限発揮されていくことになります。

残念なのは、彼女が「女子力」をほんとに封印してしまったところでしょうか。

中ほどからは、19世紀のイギリス・ロンドンを恐怖の下に陥れた、連続娼婦殺しの「ジャック・ザ・リパー」事件の捜査にモリアーティ・チームとシャーロック・ホームズが関わっていきます。

「ジャック・ザ・リパー」事件は、イギリス・ロンドンのイーストエンドのスラム街でおきた、連続娼婦殺人事件で、モリアーティ・チームは、モリアーティ兄弟の武闘の師匠ともいえる、ジャック・レンフィールド(彼は第1次アフガン戦争での白兵戦でのナイフ使いから「ジャック・ザ・リパー」と呼ばれていたそうです)の「二つ名」を騙る殺人鬼を始末するために、犯人捜索を始めた、という経緯です。

この事件はロンドン市民に知れ渡ったため、イーストエンドの治安を自ら維持しようとする武装した自警団と、犯人の早期逮捕を政府上層部から厳命されたロンドン市警(スコットランド・ヤード)との間で主導権をめぐって小競り合いが起き始めていて、事件捜査の展開によっては、両者が激突しかけない様相を呈しています。

一方、スコットランド・ヤードで「ジャック・ザ・リパー」事件の総指揮をとるアータートン主任警部は、犯人逮捕のためには自警団との衝突はやむなしという意見で、この機会を利用して自警団の武装解除もできるという考え方の持ち主です。自警団と市警との衝突で、ロンドンが混乱の極地に陥ることを恐れたレストレイド警部が、ホームズへ事件の解決を依頼してきたというのが、ホームズ側の捜査参加の経緯です。

そして、ウィリアム・モリアーティは、一見、サイコキラーによる犯行に見える一連の事件が、複数犯の犯行であることを見抜き、この事件の本当の目的が自警団と警察との武力衝突を誘発し、イギリス国内でプロレタリア革命を誘発することにあることを見抜きます。

そして、自警団と警察のいがみ合いを解消するため、彼らの共通の敵をつくることを計画し、あえて彼らの面前で変装したモリアーティ・チームのメンバーが、殺人を犯す場面を演出していきます。それによって、事件の本当の実行犯たちと黒幕をあぶりだしていこうという作戦なのですが・・という展開です。

第8巻 犯人を逃した、スコットランド・ヤードは捏造にはしる

第8巻の構成は

#28 ホワイトチャペルの亡霊 第四幕
#29 スコットランドヤード狂騒曲 第一幕
#30 スコットランドヤード狂騒曲 第二幕
#31 一人の学生

となっていて、最初のところは「ジャック・ザ・リパー」事件の解決編ですね。

自警団とロンドン市警の対立が解消され、双方が協力して犯人捜しを始めたことに、当初の革命の火蓋をきる、という目的の実現が危なくなった犯人一味は隠れ家に集まって、打開策を考え始めるのですが、当然これは、モリアーティ・チームの仕掛けどおりで、という展開です。

中盤では、「ジャック・ザ・リパー」事件の本当の首謀者たちが、モリアーティ・チームに壊滅させられ、さらに、執事レンフィールドが仮装した「ジャック・ザ・リパー」も姿を消し、迷宮入りしてしまいそうな、この事件の犯人として突如、一人の医者をロンドン市警が摘発します。

ネタバレ承知でいえば、これは、ロンドン市警のアータートン主任警部が主導して進めた「捏造」ですね。

もともと、強引な事件捜査と捜査費流用の噂のあったアータートン主任警部のでっちあげを暴こうと、レストレイド警部がホームズに助けを求める一方で、モリアーティ・チームからは、アイリーン・アドラーこと「ボンド」が市警内に潜入して、ホームズ・ボンド二人の「協働」での冤罪暴きが動いていくのですが、詳細は原書のほうでどうぞ。

レビュアーの一言

第7巻と第8巻の前半のテーマとなっている「ジャック・ザ・リパー(切り裂きジャック)」事件では、当時はホワイトチャペルとスピタルフィールズで起きた11件の殺人事件が「ジャック・ザ・リパー」の犯行と考えられていたようですが、現在ではメアリー・アン・ニコルソンをはじめとする5件が確実に彼の犯行だったとされているのですが、いずれも、娼婦の喉を切り裂く、内臓を取り出す、という陰惨な犯行です。

この事件は、週末や日曜日に起きているので、犯行現場の近くに住む者の犯行ではないかと言われていて、その手口から、医者であったり、床屋、猟奇趣味の貴族など容疑者として浮上していた人物は多数あったのですが、結局、犯人はわからず迷宮入りしています。このせいか、今まで多くの小説やマンガに、猟奇的殺人者の代表格として登場していますね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました