「本能寺の変」の時が近づく中、ケンは四国へわたり望月を見つける=「信長のシェフ」33・34

現代からタイムスリップをしたフレンチのシェフが、織田信長の専属料理人となった上に、彼の命を受けて信長の前に立ちはだかる様々な難題を「料理」によって解決していく『梶川卓郎「信長のシェフ」(芳文社コミックス)』シリーズの第33弾と第34弾。

前巻で、武田勝頼が味方の裏切りで斃れた後、彼の妹である松姫を甲斐と相模の国境まで送り届けたケンだったのですが、信長が明智光秀に討たれる「本能寺の変」の詳細な情報を求めて、未来からケンと一緒にタイムスリップして戦国時代にやってきているはずの「望月」を探しに、四国の土佐一条家の現当主が隠棲している伊予戸島と向かいます。

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あらすじと注目ポイント

第33巻 「本能寺の変」の情報を求めて、県は四国へ渡る

第33巻の構成は

第270話 謎解きのような一品
第271話 ケン駆ける!
第272話 出立の朝
第273話 津田の難題
第274話 ケンの解答
第275話 戸島上陸
第276話 ケンを呼ぶ声
第277話 望月の今

となっていて、京都の一条家の当主から、一条家の分家の一つである土佐一条家の当主・兼定が、キリシタンの司祭を饗応したときに出された料理をつくってくれ、と近衛前久から頼まれるところから始まります。その料理は「高価なものでありながら「安物」だったということで、ケンは一条兼定が隠棲しているのが伊予の戸島であることから「甘鯛の松笠焼き」ではと推測します。

京都では高級品の甘鯛も、魚の豊富な伊予では簡単に手に入ることから、高価で安物と称されたのだろうとケンは推理するのですが、松笠焼きに必要な大量の「油」を困窮している土佐一条家がふんだんに使えるわけもなく、その料理法はフレンチの「甘鯛のポワレ」ではと気づき、望月は土佐一条家の隠棲地「伊予の戸島」ではと考え、その地へ向かうことを決断します。

しかし、今と違って、船便が簡単に用意できるはずもなく、堺の納屋衆に頼み込むのですが、有力者の一人・津田宗久が出してきた条件は、「ミイラ」を探し出してこい、というものです。

この当時、「ミイラ」は西洋では、薬や顔料として珍重されていて、日本でも江戸時代には薬として南蛮からの輸入品であったのですが、戦国時代の日本で簡単に手に入るものではありません。困り果ててているケンに、千利休は「ミイラの確認は必要ない」とアドバイスして京都へ旅立ちます。そのアドバイスから、ケンが調達した食材は安土からもってきてスパイスと、カモ肉、ニンニク、葱、しょうがといった日本にあるものばかりで・・という筋立てです。

このありきたりの食材を使ったケンの料理が津田の難題をクリアするのですが、その詳細は原書のほうで。

そして堺衆たちに出してもらった船を使って戸島へと渡ったケンは、寒天と砂糖で固めた京菓子「琥珀糖」を使って、子供たちに「望月」のところへ案内させるのですが、この「琥珀糖」が次巻での騒動の原因になってきます。

さらに、本能寺の変の「歴史的知識」を求めて、望月に会いにきたのですが彼はケンに輪をかけた「歴史オンチ」であることがわかり、徒労に終わってしまいます。

信長のシェフ 33巻 (芳文社コミックス)
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第34巻 ケンは本能寺の謀反の主犯に気づき、謀反阻止の活動開始

第34巻の構成は

第278話 傷つけてはならないもの
第279話 霧の向こう
第280話 向うべき先
第281話 安土饗応
第282話 一の矢
第283話 辿り着く先
第284話 交錯する思い
第285話 人の思い、天の思い

となっていて、冒頭ではケンが前巻で浜辺で琥珀糖を渡した子供の一人・長作の父親によって捕縛され、領主・一条兼定のもとへ連れていかれます。ケンが琥珀糖を渡したもう一人の男の子・善作が、長介の菓子を盗み食いしたとして訴え、菓子の大きさの証人としてケンが連行された、というわけです。

昼間、二人が、ケンからもらい葉っぱに包んだ時は長介のほうが大きかったのに、夕方、二人が見せあった時は同じ大きさになっていたというのです。しかし、ケンが渡した菓子は二人とも同じ大きさだったはずで・・という筋立てです。

結局のところ、この大きさの違いは「錯覚」であったことが判明するのですが、この争論の一条兼定の裁定は、「長介の父は長介を斬った後、切腹」という現代人のケンと望月には驚愕の内容です。ところが、長作たちと同時代人である他の村人は、その最低を誉める声がほとんで・・と、戦国時代の価値観と現代の価値観との違いを見せつけられます。
最後の最後の決着は、現代人にも呑み込みやすい形に再加工されるので、そこは安心してほしいのですが、この戦国時代人の価値観は、光秀の信長への謀反にも通じているので要注意です。

そして、望月と一条兼定の会話から、信長の対キリシタン対策の本質が、明智光秀に伝わっていないことに思い当たったケンは、本能寺の逆臣が「明智光秀」であることを確信し、それを止めるため、備中で毛利攻めをしている秀吉のもとへ向かうとともに、堺の津田宗久へ、信長の周囲で謀反の動きがあることを伝えます。しかし、その情報は明智光秀が知るところとなり・・といった展開です。

ここからは、安土饗応の後、迎賓館に案内された家康、再会の日を待ち望む織田信忠と武田の松姫、そして、出陣の用意の整った明智光秀のそれぞれの思いが交錯していきます。

信長のシェフ 34巻 (芳文社コミックス)
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レビュアーの一言

今回、元現代人シェフの望月を保護していたり、菓子の盗み食いをめぐる争論の裁定をしたり、と地域の有力者然としている一条兼定は、京都で五摂家のひとつであった一条家の庶流で、応仁の乱の戦乱を避けて前関白・一条教房が土佐に下向したのをはじめに、土佐で五代にわたって続いた、他にはあまりない「戦国公家大名」の一族の最後の当主です。

兼定は、父の自殺後、家督を継いだ後、一代で長宗我部元親に土佐一条家を滅ぼされているので「暗君」と表わされることが多いのですが、九州の大友義鎮の娘を娶って大友氏と結ぶも、伊予の支配権をめぐって毛利家と争い敗れ、土佐の支配権をめぐっても、長宗我部の圧力と本家の京都一条家の干渉を受けるなど、領土経営にはかなり苦労した人物のようです。

そうした実人生での苦難が、彼をキリスト信仰へと駆り立てたのかもしれませんね。

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