黒い剣士は、妖精の森で「人食いエルフ」と戦う=「ベルセルク」14~17

中世ヨーロッパを思わせる、キリスト教に似た宗教が強大な力を持ち、貴族階級と王権が支配する「ミッドランド」を舞台に、身の丈を超える巨大な剣を武器に、悪魔となった上に恋人を陵辱した、かつての盟友への復讐を志して旅を続ける死人から生まれた男「ガッツ」と、自らの国をこの世界につくりあげようと、暗黒の世界に身を売り、蘇った男「グリフィス」を軸に、剣と悪魔と魔獣が戦う「ダークファンター」シリーズの名作・三浦建太郎「ベルセルク」シリーズの「断罪篇 ロストチルドレンの章」(単行本第14巻から単行本第16巻)と「断罪篇 縛鎖の章」(単行本第16巻から単行本第17巻)

前巻までで、「蝕」の到来により、鷹の団のメンバーを生贄に差し出したグリフィスは五番目の魔王「闇の翼 フェムト」となり、キャスカを凌辱して自らの子を孕まし、ガッツとキャスカに生贄の印を残して去ったのですが、今回はその「蝕」から2年後、霧の谷に巣を構える「人を食う」エルフとガッツとの戦いが展開されます。

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あらすじと注目ポイント

第14巻 ガッツは、村を襲う「人食いエルフ」に遭遇

第14巻の構成は
ー黄金時代篇ー
幼魔
武装
ドラゴンを狩る者

ー断罪篇 ロスト・チルドレンの章ー
黒い剣士、再び
霧の谷の妖精
ジル
飛来
幼虫
BERSERK THE PROTOTYPE

となっていて、前半の「黄金時代篇」で、グリフィスが魔の世界に堕ち、鷹の団が壊滅してから2年後から「断罪篇」は始まります。
「蝕」の到来によって、ミッドランド王国を筆頭とする大陸諸国は混乱の極地にあり、異民族の侵入も相次ぐ中、聖鉄鎖騎士団という修道士の騎士集団が「黙示録」を探して、ミッドランド国内を探索している時代です。

国境近くの森の中で、盗賊団が一人の少女・ジルを捕まえて、大木の下で酒盛りをしているのですが、そこで偶然、同じく大木の下で野宿をしているガッツとパックに出会います。この大木は、邪教徒が人間の腹を切って腸を引っ張り出して木に杭で固定し、その回りを一周させるという「生贄の儀式」をやっていたという噂のある大木なのですが、ガッツから金品を奪おうとする盗賊たちの前に現れたのは・・という筋立てです。大木の亡霊から逃げた盗賊たちが逃げ込んだのが「霧の谷」と呼ばれる妖精の棲家で、盗賊たちはここの妖精の餌食になってしまっています。

「妖精」というよりは「蛾の魔物」のような姿には、鷹の団によるグリフィス救出の際に、居留地に現れた「魔物」たちの一つに似ています。

一方、ジルとともに、彼女の住む村にやってきたガッツとパックなのですが、パックの姿を見た村人は、パックを「霧の谷の妖精だ」として、二人を村から追い出そうと襲撃します。
翌朝、ジルから聞いた話では、村から谷を3つこえたところに、霧の谷と呼ばれるところかあって、そこにはエルフが住んでいるという伝説が残っています。数年前から、村を襲い、畑の作物や穀物庫の収穫物や家畜を食い荒らす不思議な生き物が現れるようになり、それが「エルフ」の姿をしている、とのこと。さらに、その「エルフ」は人間を襲って食ってしまうとも。この「エルフ」の仲間とパックが誤解されたわけですね。

その夜、空を明るく光るものが飛来し、村の中に入り込んできます。そして、家畜小屋や家の中にも入り込んできて、家畜や人を食い荒らしていき・・という展開で、ここからガッツと「霧の谷の妖精」とのバトルが始まります。

第15巻 霧の谷の人食いエルフの女王は、ジルの幼馴染の少女「ロシーヌ」

第15巻の構成は

女王(クイーン)
鬼火
赤い目のピーカフ
追憶の少女
羽あるものの世界
守護者(ガーディアン)①
守護者(ガーディアン)②
追跡者
霧の谷①
霧の谷②

となっていて、冒頭で霧の谷のエルフの女王が登場します。その風貌はパックとは大きく違って、まるで「蛾」そっくりです。その姿をみたパックは、「あれはエルフではなくて、子供だよ」と謎の印象をガッツに告げます。さらに女王から「ピーカフ」という言葉を聞いて、ジルは仲の良かった、年上の少女「ロシーヌ」のことを思い浮かべます。
「ロシーヌ」はジルの近所に住んでいた4つ上の女の子だったのですが、父親から実の娘かどうか疑われて、毎日虐待を受けていて、ある夜、家を出て霧の谷へ行き、行方不明になっています。彼女が消えた数日後、両親の姿も消えたということから、ガッツは「魔界」の介在を確信し、人食いエルフ退治に乗り出すのですが・・という展開です。そして、人食いエルフの女王に連れていかれたジルを追って、「霧の谷」の中へと踏み込み、人間が変化した「昆虫の魔物」とバトルが始まっていきます。

一方、この章の冒頭で登場した「聖鉄鎖騎士団」も、「黒い剣士」を追って村に到着します。彼らは、各地でおきる怪しい現象と黒い騎士が関係しているとみて法王庁の命令で国中を探査しているという設定で、次巻では、彼らもガッツを追って、霧の谷へと侵攻します。

そして、霧の谷へ連れていかれたジルは、人食いエルフの女王となったロシーヌから仲間になるよう勧められ、心が動くのですが、彼女はそこがけして楽園ではなく、「人間社会」と同じように、エルフ同士で互いに殺し合っている姿を見て・・という展開です。

第16巻 ガッツは、人食いエルフの女王「ロシーヌ」と対決する

第16巻の構成は

ー断罪篇 ロスト・チルドレンの章ー
怪物
空魔
鮮血の夜空 
魔と人の狭間

家路
青空の妖精
ー断罪篇 縛鎖(ばくさ)の章ー
闇の獣
聖鉄鎖騎士団①
聖鉄鎖騎士団②
空洞の偶像

となっていて、この巻で「断罪篇 ロスト・チルドレンの章」が終結し、「断罪篇 縛鎖(ばくさ)の章」が始まります。

冒頭では、騎士団に雇われたジルの父親の道案内で、聖鉄鎖騎士団が「霧の森」の中に侵攻するのですが、ガッツの斃した昆虫の魔物がもとの人間の姿に還っていて、騎士団のメンバーは「黒い剣士」の残虐さを確信してしまいます。

そして、ガッツは森の奥深くへと進み、女王の指揮する人食いエルフとの戦が開始されるのですが、ガッツに向けた人食いエルフたちは集団で襲いかかり、圧殺しようとするのですが、ガッツはエルフの繭の油を使って発火し、逆にエルフたちを焼き殺してしまいます。

多くの仲間が焼き殺された人食いエルフの女王は、ガッツに捨て身の攻撃をしかけてき、その空中殺法の前にガッツもやられそうになるのですが、彼はジルを利用したある反撃法を考えていて・・という展開です。

ガッツに斃され、もとの女の子の姿を取り戻したロシーヌの姿が悲しい結末なのですが、ジルが未来に立ち向かっていこうとする姿に救われます。

後半部分は、「霧の谷」に棲んでいた「人食いエルフ」とその女王との死闘によって傷ついて倒れているガッツを、聖鉄鎖騎士団のファルネーゼ団長ほかのメンバーが取り囲みます。村を襲った「人食いエルフ」たちが、死後、子どもたちに変じたのを見て、ガッツの子供殺しと誤解したんですね。

そして、抵抗するガッツと、聖鉄鎖騎士団の副団長・アザンとの一騎打ちが始まります。ボロボロになっているところで、かつて勇名をはせた騎士との戦いに勝てるはずもなく、ガッツは捕縛され、団長・ファルネーゼに厳しく責められるのですが・・という展開です。

第17巻 聖鉄鎖騎士団長・ファルネーゼは荒野で自らの冥い欲望に支配される

第17巻の構成は

見ざる者
奇跡の夜
去来
真実の朝
ー断罪篇 生誕祭の章ー
啓示①
啓示②絵
啓示③
刃の(やいば)の亀裂
かよわき炎
聖地へ①
聖地へ②

となっていて、聖鉄鎖騎士団の捕縛されたガッツは首枷をつけられ監禁されるのですが、パックに鍵を盗ませ脱出します、
逃げる途中で見たのは、自らに鞭をあて、苦行を課すファルネーゼ団長の姿なのですが、ガッツはすかさず彼女を捕獲し、逃亡用の人質として利用します。
そして、逃亡中の荒野で現れた「妖魔」によって、ファルネーゼの心の奥底にあるある冥い欲望が引きずり出されることとなり・・という展開です。

このタームで、ファルネーゼは自らの心の汚点を知ったガッツに復讐を企んでいくことになります。

レビュアーの一言

今回の「ロストチルドレンの章」では、森の中にある「霧の谷」と呼ばれるところが舞台となるのですが、この森のモチーフとなったのは、ドイツの「シュヴァルツヴァルト」(黒い森)ではないか、と推測します。
「シュヴァルツヴァルト」はドイツの南西部にある森で、トウヒやモミが80%を占めているため黒く見えるのが
名前の由来なのですが、大昔はケルト人の入植地であったり、スエビ族が独立国を形成したり、フランス国境に近いといったことから、他のドイツの地域とは異なる慣習が形成されてきた地域です。
「ヘンデルとグレーテル」の物語で、兄妹が両親に捨てられる深い森はこんなところだったのかもしれません。

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