世界を侵食する「魔」を倒し、幽界と現世が融合した新世界が訪れる=「ベルセルク」31〜34

中世ヨーロッパを思わせる、キリスト教に似た宗教が強大な力を持ち、貴族階級と王権が支配する「ミッドランド」を舞台に、身の丈を超える巨大な剣を武器に、悪魔となった上に恋人を陵辱した、かつての盟友への復讐を志して旅を続ける死人から生まれた男「ガッツ」と、自らの国をこの世界につくりあげようと、暗黒の世界に落ちながら「蝕」の模倣によって再生した男「グリフィス」を軸に、剣と悪魔と魔獣が戦う「ダークファンター」シリーズの名作・三浦建太郎「ベルセルク」シリーズの「千年帝国の鷹篇 鷹都(ファルコニア)の章」の後半部分をレビュー(単行本第31巻から第34巻)。

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あらすじと注目ポイント

第31巻 ガッツ+シールケは妖獣兵団の強敵と真っ向から戦う

第31巻の構成は

灼熱湾
火炎輪(ブレイズ・ロッド)
剣獣
仙将(パラマリシヤ・センアーンイー)
東方魔術
塒巻く者
爆炎
雷帝
魔軍襲来
叢雲

となっていて、市政庁の舞踏会会場で始まった、クシャーン軍の侵攻の中心は港へと移ります。
妖獣兵はあとからあとから湧くように出てくるのですが、シールケが火の精霊を呼び出しての「炎の大車輪」が彼らを焼き尽くします。妖獣兵軍が壊滅した後、残っている船を探すガッツたちなのですが、そこに出現したのが大量の海獣(マカラ)です。すでにシールケは「炎の大車輪」を呼び出す術で疲労困憊しているため、ガッツが狂戦士の甲冑と一体化して海獣(マカラ)を撃滅していきます。

そして、妖獣兵の軍勢が劣勢になったため、妖獣兵団の団長である、仙将・ダイバが姿を現し、東方の魔術を使い、竜巻を呼び出して攻撃をしかけてくるのですが、シールケの力を借りて甲冑の呪いの力を制御できるようになったガッツは、ダイバの攻撃に反撃をしかけます。ダイバはとうとう妖獣兵団最強の塒神(クンダリーニ)を繰り出してきます。ガッツは、シールケと力を合一させてこれに立ち向かっていくのですが戦の行方は・・・という展開です。

この巻は、ガッツとシールケ、セルピコとクシャーン屈指の妖獣兵団との戦闘がメインテーマなので、迫力あるバトル・シーンをお楽しみください。

第32巻 クシャーン帝国の大軍を撤兵させ、グリフィスはミッドランドの実質国王になる

第32巻の構成は

肉弾
船出
大侵攻(1)
大侵攻(2)
飛来
裂ける戦場
風巻
ミッドランド正規軍
英雄
船上にて

となっていて、冒頭では仙将・ダイバの軍がガッツによってズタズタにされたため現れたガシュニカ大帝に一矢報いるガッツ+シールケが描かれるのですが、これがガシュニカ大帝の最終的な怒りをかい、法王庁教圏連合国の戦略拠点であるヴリタニスを取り囲み、総攻撃をしかけてきます。強大な軍勢の前に、落城寸前かと思われたのですが、ここに救世主というべきグリフィスの「白い鷹団」の軍勢が到着します。寡兵ではあるものの強兵揃いのグリフィス軍は、クシャーン軍を切り裂き、総大将のガシュニカ大帝の前にグリフィスが立ちはだかります。

現時点では兵力差が大きすぎるため、ガシュニカ大帝を撤兵させるまでが限界だったのですが、「鷹の団」がミッドランドの正規軍として名乗りをあげた瞬間ですね。さらに、王国の継承者であるシャルロット王女や宗教上の最高位者の法王もグリフィスを支持する旨を宣言し、彼がミッドランドの実質的な「国王」となったことが明らかになります。

第33巻 グリフィスを斃すため、ガニシュカ大帝は巨大な「魔」に成長する

第33巻の構成は

水泡
海戦(1)
海戦(2)
闇からの咆哮
予知夢
死の霧
静寂なる闇
エクソダス
末神
轟天

となっていて、冒頭では、イースのロデリックの軍船に便乗して、妖精島を目指すガッツたちの姿があります。
ガッツとキャスカ、ファルネーゼとシールケの間の恋の鞘当てがあるのですが、まあこのあたりはちょっとしたエピソードとして読んでおきましょう。
本編のほうでは、第29巻の奴隷商人の親玉だった人物が海賊に復帰して、ガッツたちの乗るイースのシーホース号を襲撃してくるのですが、普通の商船のフリをして、実は最大級の武器を装備している軍船なので、海賊船が敵うはずもなくあっという間に撃破されてしまいます。
ただ少しネタバレしておくと、この海賊船は後巻で。妖獣船として蘇ってきますし、妖精島を整復しようなんて企みもする乗組員もいたり、と波乱万丈の種は仕込まれています。

中盤部分からは、いよいよグリフィス率いる白い鷹団を中心とするミッドランド連合軍とクシャーン帝国軍との決戦が開始します。魔界から甦ったグリフィスの本性を見抜いたガシュニカ大帝は、グリフィスを斃すために最後の手段である、ウィンダム城下にいる全てのクシャーン兵、妖獣兵たちを吸収し、巨大な「魔物」となっていき、という展開です。

第34巻 ガニシュカ大帝斃れ、幽界と現世が融合する

第34巻の構成は

盲目の巨神
放魔
人外の戦場
鷹の巫女
混沌
逆光
亀裂
開闢
幻道世界(ファンタジア)

となっていて、冒頭では、クシャーン兵や妖獣兵を吸収し、巨大な「怪物」に変化ガニシュカ大帝は自らの自我もなくしてしまい、周囲を破壊することに専心しています。クシャーン軍の妖獣軍団指揮官の仙将・ダイバは「世界を焼き亡ぼすという末神(シヴァ神)そのものじゃ」と評しています。

これに対して抵抗軍を指揮するグリフィスは、戦魔兵を繰り出すのですが、魔物と魔物が互いに食い合う戦いの凄惨さに周囲の人々は、グリフィスも魔物の化身ではないか、という疑念を抱き始めます。

このあたりは人々の直感も馬鹿にしたものではなく、真実をついているのですが、これを吹き払うのが鷹の団の巫女・ソーニャの言葉です。
彼女は、今、命を擲って戦っているのはグリフィスと戦獣兵であることを訴え、魔物であろうと人であろうと大事なのは、「グリフィスと共に戦うか戦わないかだ」と人々を鼓舞し、魔物へ向かって突進していきます。そして、グリフィスの「鷹の団全軍戦闘体制。撃て」の号令とともに、民族を超えた人間の兵士と戦獣兵、使徒たちが一体となってガニシュカ帝に向かって突進していって・・・という展開です。

ソーニャの言葉はなにか本筋を外した感じはあるのですが、アジテーターとしての彼女の才能は侮りがたいものがありますね。

この後、ガニシュカ大帝の幼年期のエピソードとかが語られるのですが、幻想の世界と現実の世界が混じり合う「幻造世界篇」へ突入していきます。

レビュアーの一言

今回で甦ったグリフィス率いる「新生・白い鷹団」がクシャーン帝国のガニシュカ大帝へ打ち勝って、新たな世界が到来します。ただ、彼に陵辱されたキャスカは心を喪失したままですし、こうした伏線回収がどうなるか気になるところですね。
個人的には、このベルセルク・シリーズが、ギリシアのユリシーズの物語で範を取っている感じがしていて、黒い騎士篇、贖罪篇が、三人の女神が美しさを競う前篇、そして、トロイア軍とギリシア連合軍が戦う「イーリアス」、そしてトロイア敗北後、ギリシアの武将・オデッセイアが祖国へ帰還する物語が語られる「オデュセイア」が、次巻以降の「幻造世界篇」といった感じかなと思っています。となると、セイレーンやギガンティアなど怪物の登場も今まで以上に期待できるかもしれません。

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