憑依作家は自らを餌にして、犯人をおびき出す=「憑依作家・雨宮縁「トラップハンター・ハンター」

自らの作品の主人公に成りきって年齢・風貌も変化する、正体不明の人気推理作家・雨宮縁が、大手出版社「黄金社」の担当編集者・真壁、フリーの装丁作家兼カメラマンの蒲田を使って、凶悪殺人の犯人に周到な罠を張ってあぶり出していくクライム・ミステリー「憑依作家・雨宮縁」シリーズの第四弾が『内藤了「憑依作家・雨宮縁「トラップハンター・ハンター」(祥伝社文庫)』です。

前巻の「ハニー・ハンター」では、ダークサイトで運営されている写真投稿サイトに投稿された写真の主人公の女性が次々と殺されていく事件に関わる中で、「ハニー・ハンター」「ネスト・ハンター」の事件の黒幕と目された帝王アカデミーグループの総帥の陰にもう一人の黒幕がいることをつきとめた「雨宮縁」たちだったのですが、今回はその黒幕たちが縁のサポーターたちに牙をむいてきます。

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あらすじと注目ポイント

構成は

プロローグ
第一章 編集者の憂鬱
第二章 笑う死に顔
第三章 縁の憂鬱
第四章 出版記念インタビュー
第五章 トラップ・ハンター
エピローグ

となっていて、プロローグのところでは、帝王アカデミーグループの関連病院の隔離病棟に入所している「吉井加代子」のもとへ、アカデミーの総帥・月岡玲奈が、ある男性を面会に案内しているところから始まります。吉井は実子殺しのほか8名の殺害と17件の暴行罪、23名の集団自死事件に関わったいるという噂のある人物で、心神耗弱が認められたため、死刑にならずこの病棟に収監されている、という経緯です。

どうやら、この男は吉井加代子に憧れ、崇拝しているようなのですが、彼女に適当にあしらわれ、激高したところを「私が知りたいなら。これを読め」と雨宮縁の書いた「スマイル・ハンター」を渡され、というのが事件の発端です。

事件のほうは、雨宮縁の担当編集者・真壁の勤務する「黄金社」の本社ビルで起きます。その日、真壁は「縁」の新作出版の可否を議論する社内の企画会議に出ていたのですが、会議中に「トキワ」と名乗る男が訪ねてきていた、と受付から教えられます。

名前に覚えがないためそのままスルーしたまま深夜まで、残業し、退社時に同期でビジネス雑誌の編集長となっている森山と出会い、立ち話の後別れるのですが、その2日後、森山が喉を切られて、出版社近くの神田川に浮かんでいるのが発見され、という展開です。

さらに、被害者の顔には医療用のメスのようなもので、鼻の真下を横一文字に斬り、さらに右端から顎を通って左端まで半円形の、切り傷でスマイルマークをつくるような切り裂き傷がつけられています。そして、その犯行時刻は、真壁が森山と本社ビルの裏出入り口で別れたすぐ後のようです。

前巻で、真壁が吉井加代子と面会していることや、雨宮縁の「ハニーハンター」の出版など、帝王アカデミーの犯罪を暴こうとする雨宮達の動きに気づいた月岡玲奈たちが動き始めたと推理した「縁」なのですが、雨宮縁のファンの書店員の女性が同じように殺されたことから確信に変わります。

「縁」は月岡か吉井の「傀儡」として動いているに違いない連続殺人鬼をおびき寄せるため、書店で「サイン会」を開催することを計画します。覆面作家であった「縁」が素顔を出すということで、多くのファンが集まることが予測され、犯人をおびき寄せるには絶好の餌なのですが、反面、返り討ちにあう危険性も高く・・という展開です。

「縁」たちがこのサイン会でしかけた罠がどんなものだったか、そして、犯人の正体については原書のほうで。

レビュアーの一言

前巻までで、縁の「姉」とも推察される月岡玲奈が帝王アカデミーを使ってやってきた悪事や犯罪、そして彼女と匹敵するほどのサイコパスで玲奈の実母・吉井加代子の不気味さが明らかになっていたのですが、今巻は、縁の秘密や、彼の秘書である「庵堂」の秘密も「真壁」が相当明らかにしていくので、そこのところも読み逃せませんね。

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