幼いころから霊視ができるため、周囲から疎まれて成長し、フリーの「祓い師」をしていた青年・安田怜が、警視庁の警視正・折原を襲った不運奈死亡事故を予知したことから、警視庁の地下にある「異能処理班・ミカヅチ」の職員として雇われ、世の中にはみ出してくる怪異の「処理」を行う、ホラー系ミステリー・シリーズ「警視庁異能処理班ミカヅチ」の第二弾が『内藤了「禍事 警視庁異能処理班ミカヅチ」(講談社タイガ文庫)』です。
前巻では、麹町のビルに囲まれているように立っている、昭和のはじめか大正の頃に建てられたボロボロのアパートに吹き寄せられるかのように集まってくる地霊が巻き起こす怪異と、新人女優やアイドルを食い物にしているベテラン俳優やTVディレクターをとり殺した怪異を祓ったのですが、今回は吹き溜まりアパートの続編と、悪魔と契約した政治家を襲う地獄の怪物が描かれます。
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あらすじと注目ポイント
構成は
エピソード1 地霊のことわざ
エピソード2 地獄の犬
の二話。
「エピソード1 地霊のことわざ」
第一話の「地霊のことわざ」は、前巻ででてきた、麹町のビル街にある悪霊が集まる「吹き溜まりアパート」で起きる事件です。
そのアパートの玄関と裏側で向き合っているビルの4階のトイレの換気扇窓から飛び出て男が墜落死した、というものなのですが、換気扇はかなり高い位置にあって脚立がないと手が届かないし、大きさも人の頭がようやく通るぐらいの大きさしかありません。まるで、何かに吸い出されるように落ちたようなのですが、この男が前巻で発見されたアパート内の縊死死体の発見者と通報者であったことから、アパートに集まってくる悪霊たちとの関連性が疑われて、ということですね。
このため、墜落死体の掃除とお浄めに、警視庁で異能処理班の別動隊でもある「三婆ズ」の依頼がやってきて、本作の主人公「怜」もその手伝いに駆り出され、という筋立てです。
三婆ズとのあいかわらずの掛け合いを演じながらの、忌み地のお浄めをしていく怜の仕事の様子は原書のほうで。
「エピソード2 地獄の犬」
二話目の「地獄の犬」では、主人公の「怜」が勤務を終わって帰宅途中の薨去周辺で、高級車に乗った、大物っぽい老紳士が、黒犬と鷲と狒々の頭をもち、体毛が蟲の塊となっている、犬のような獅子のような怪物の襲われ、食いちぎられて死んでいくのを目撃します。
もちろん、この怪物は怜のような霊能力者だけに見えているもので、通常の人には、高級車から老人が突然転がり出てきて、心臓発作のような感じで意味を引き取る、といったように見えています。
その惨劇に怯えて、警視庁の異能処理班室に引き返した怜に対して、警視正や広目はそれが「地獄の犬」と呼ばれるものであろうと教えてくれます。
怪死した老人は、前総理大臣の「牛鬼太郎」という国会議員で、政敵や対抗勢力の有力者が彼に絡むと不審死することで有名な人物だったのですが、どうやら、悪魔と契約をしていて、悪魔が契約料を回収にきたところを、怜は目撃したようですね。
これがきっかけで、怜は異能処理班のメンバーから、契約と言う名の甘い罠を仕掛ける悪魔の狡猾さを教えてもらうのですが、そのあくどさを承知で悪魔と契約を結んだ人物が近くにいることを知ることとなります。
レビュアーの一言
第三弾ともなって、「ミカヅチ」の組織が、すでに死亡している警察官が係官となって日本全国の警察組織にはりめぐらされいることが明らかになったり、怜が死亡するところを目撃し、その後上司となった「折原警視正」の家庭事情や、警視庁捜査一課の刑事である「極意京介」が悪魔憑きとなった理由などが今回は明らかになってきます。
川中島の古戦場で人が切り殺されたり、夫婦喧嘩で家を飛び出した主婦が旧十文字に腹をかっさばいて切腹死しているのが発見されたり、「首洗いの滝」に山岳遭難者の頭部が大量に流れ着いたり、と日本各地で怪異の目撃現象が続く中で、次巻あたりでは、ミカヅチ班の部屋の奥にある「扉」の秘密も明らかになるのでしょうか・・。
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