アン・ブーリン処刑の数年後、クロムウェル失脚。エリザバスを巡る情勢は未だ暗し=こざき亜衣「セシルの女王」4

イギリスが強国スペインを破り、世界を股にかけた超大国として名乗りをあげはじめたのが「エリザベス1世」の時代。実は、カトリックとプロテスタントが血を血で洗う抗争の時代でもありました。この世界史上最も有名なイギリスの「王」といっていいエリザベス女王から信頼の厚い、忠実な臣下として仕えた「ウィリアム・セシル」が、一介の郷紳(ジェントリー)の身分からイギリス政界を動かす重臣へと成り上がっていく物語「こざき亜衣「セシルの女王」(ビッグコミックス)」の第4弾です。

前巻までで、キャサリン元妃の死去によって晴れて正式な「后」となったのも束の間、子供を流産し、ヘンリー8世の寵愛がだんだんと薄れていく中、姦通疑惑をかけられて、アン王妃が失脚したのですが、今巻では、政治変動の嵐は、権力基盤が盤石かと思われていたクロムウェルまで及んできます。

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あらすじと注目ポイント

構成は

第24話 天上の王妃
第25話 ホワイトホールの三姉弟
第26話 運命の王女
第27話 愛と結婚
第28話 4度目の初夜
第29話 ミッション・インポッシブル
第30話 コモンウェルスの樹
第31話 嵐の夜の幽霊

となっていて、ロンドン塔に収監され、処刑の時を待つアン・ブーリンのもとへ急ぐセシルの姿から始まります。第24話の口絵はミレーが描いた、シェイクスピアの「オフィーリア」を思わせる口絵となっているのですが、この趣意は読み取り切れません。悲劇の王妃といった感じなのでしょうか。

残念ながらセシルはアン王妃の処刑には間に合わなかったのですが、エリザベス王女へ王妃の野こそ田「ウィリアム・セシルを待つのよ」という遺志に従い、彼女に王位継承権を取り戻すため、奮闘することとなります。

中盤では、アン王妃の処刑から3年後に時間が飛びます。アン王妃のあと3番目の王妃となったジェーン・シーモアは翌年に、王子エドワードを産んで亡くなっていて、この頃、王位に近いところにいるのは、このエドワード王子、ヘンリーとキャサリン元妃の娘・メアリ、エリザベスの3人なのですが、メアリとエリザベスは母親が廃位されたため、庶子扱いで王位継承権ははく奪されています。彼女たちが復活を遂げるのは、ヘンリー8世が晩年に6番目の妃となったキャサリン・パーの好意によるのですが、彼女は今巻では侍女頭として登場しています。

エリザベスはこの時点で王位継承権はない上に、父・ヘンリー8世に「魔女の娘」と忌み嫌われているので、本来ならイングランド王位に就ける見込みはほとんどなかったのですが、運命というのはわからないものですね。

そしてヘンリー8世の後宮のほうでは、カトリック諸国と教皇への対抗のため、プロテスタントであるクレーフェ公国から新しい王妃を迎えるのですが、彼女は極度の潔癖症のため、ヘンリー8世を拒絶。このためヘンリー8世は王妃付き侍女の「キャサリン・ハワード」に手を付けるのですが、この女性がまた「くわせ者」で・・という展開で、あいかわらずの後宮を中心とした権力闘争が始まっています。

そして、この闘争のターゲットとなったのが、当時、第一の権力者であったクロムウェルで、キャサリン・ハワードの伯父の「ノーフォーク公」の讒言で、反逆罪の濡れ衣をきせられて失脚、ロンドン塔へ収監されてしまいます。ロンドン塔へ幽閉された政治犯の運命がどうなるかは、アン・ブーリンなど先例をみれば明らかです。

レビュアーの一言

エドワード王子とエリザバスの姉で、後にエドワードが亡くなった後、即位してメアリー一世となった「メアリ」はこちこちのカソリックで、即位後、プロテスタントを弾圧、処刑して「ブラディーマリー」(血まみれのマリー)と呼ばれたり、スペインのフェリペ一世と周囲の反対を押し切って結婚するなどその治世はあまり評判のいいものではありません。ただ、従姉妹のジェーン・グレイを押しのけて即位した時は民衆の圧倒的な支持を得ての即位ですし。フェリペ一世との結婚も、国内の有力貴族の王位への干渉を避けたため、と彼女を擁護する声もあります。

たしかに、ヘンリー8世当時の王妃の実家がのさばって権力闘争を繰り返して国力が減退していったことを考えると、メアリの決断もあながち間違いではなかったのかもしれません。

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