辺境駐在員

コミック

大正期のささやかな「幸福感」を味わおう — 長田佳奈「こうふく画報」(ぶんか社)

なんとも不思議な味わいである。時代は大正時代。おそらくは東京の下町あたりを舞台にした短編マンガ集である。   収録は   第1話 おかしなふたり 第2話 悩みの箱 第3話 お赤飯の日 第4話 戀の予感 第5話 小さな訪問者 第6話 思えば思...
和田はつ子

季蔵が旅をすると目先が変わって新鮮ですな — 和田はつ子「料理人季蔵捕物控 春恋魚」(時代小説文庫)

「春恋魚」とは「はるこいうお」と読ませて秋刀魚の糠漬けのことらしく、本書で季蔵が旅する磐城平で、飢饉に備えるために、秋口に大量となる秋刀魚を長く食すための工夫の料理であるらしい。今回は「武家もの」の色合いが強く、捕物帳らしいのは良いのだが、...
コミック

今日のKindleの期間限定無料コミックのおすすめ 3つ

本日、Kindle無料コミックでオススメしたいのは、まずは 「薬師寺涼子の事件簿 1」 第一巻の「摩天楼」が提供されているのだが、第一巻の出だしは、パリのインターポールから”ドラよけのお涼」こと「薬師寺涼子」が参事官として警視庁に帰還すると...
ミステリー

時代は移りゆく。作者も、登場人物も、そして読者も — 北村 薫「太宰 治の辞書」(創元推理文庫)

久しぶりにお会い出来ましたね、という感慨のもとに再会しながら、ああ、なんかあの時代に共有していたような感覚はもう戻らないよな、というのが、昔親しかったのだが、離れて久しい友人に対して感じてしまうことがある。 残念ながら、このシリーズも数年経...
ビジネス

今までの苦い「地域活性化」の経験をきちんと認識しよう — 飯田泰之ほか「地域再生の失敗学」(光文社新書)

「地方創生」「地域活性化」「地域の活力を取り戻す」・・・、こういうテーマが行政の予算や開発計画、総合計画の中で踊らないことはまずないと思うのだが、いかんせん、成功例となると、これもまた希少な部類の言葉であるような気がする。 本書は、そうした...
佐々木裕一

美人の女盗賊は処刑後もいろいろ騒ぎをおこすのであった — 佐々木裕一「公家武者 松平信平 8 黄泉の女」(二見時代小説文庫)

公家武者シリーズの第8巻目は、前巻の女盗賊の話の後日談。 収録は   第一話 黄泉の女 第二話 雷鳴 第三話 駆け落ち 第四話 追い出された大名   となっていて、後日談は第一話、第二話。 大筋は、処刑されたはずの女盗賊「蛇の権六」が蘇った...
ビジネス

「今」は、威勢のよい進軍ラッパより、クレバーな撤退戦のプランが必要な時なのかも — 平田オリザ「下り坂をそろそろ下る 」(講談社現代新書)

登山では、上りよりは下りのほうが難物で、下手をすると足腰を痛めたり、高山であれば下山の方が命を落とす確立が高いという。 国の勢いも、人生も同じらしく、高みに登った後で、それからどうするかが一番の難所であるらしい。 本書は、劇作家・演出家の平...
ワークスタイル

100歳まで生きる社会での、働く年齢と、働く分野はどう考えるべきか。

NewsPicksで「2018年、我々はどう働くか」というシリーズが始まっていて、「Life Shift」の著者のリンダ・グラットン氏がインタビュー記事を寄せている。   AIによって奪われる仕事や、その地理的範囲といったことにも言及してあ...
佐々木裕一

いずれの時代も、大災害の後は事件が多数発生 — 佐々木裕一「公家武者 松平信平 7 十万石の誘い」(二見時代小説文庫)

さて、公家武者シリーズの第7巻は、「振り袖火事」の後、まだ災害の余波が治まっていない江戸での様々な騒ぎや悪行を鷹司松平信平が平らかにしていく、といった構成。   第一話 信平、大名屋敷に乗り込む 第二話 十万石の誘い 第三話 土地争い 第四...
佐々木裕一

江戸は大火事に見舞われるが、信平が男気を示して声望を高めるのであった — 佐々木裕一「公家武者 松平信平 6 妖し火」(二見時代小説文庫)

明暦三年のいわゆる振り袖火事が舞台。折角、松姫との新婚生活に備えて建てた新居も焼失。もっとも江戸城の天守も焼け、御三家の屋敷も焼け、江戸市中が大焼けに焼けた大火であるから致し方ないか。   構成は   第一話 妖し火 第二話 狙われた四千両...